あれから……
あれから半年ほど経って、僕と要、颯太の三人はそろって留年した。別に成績が悪かったのではない。単に出席日数不足だった。
――あの日、僕らは勘違いをしていた。
廃墟部屋と異世界では流れる時間に差があった。それは間違っていない。だけど、本来の時間の流れは異世界が正しくて、僕らがいた部屋が、極端に時間の流れが遅い異空間だったんだ。
つまり世間的には、僕らは廃墟散策にでかけ、約半年間行方不明になっていた。という事だ。
「そりゃあ、単位も落とすよね~」
ちなみに颯太は、卒業したら時空警察に入る契約を交わしたと言っていた。颯太なりに色々と考えての事だから、僕も要も応援するしかない。『鈴姫さんを救いたい』その意志は限りなく強固だ。
要は、弟の喘息がかなり改善し、快癒したあかつきには一緒に廃墟散策に行くそうだ。僕も誘われたけど断った。やはり最初は兄弟だけで行くべきだと思ったから。
……一応、『スゴロクを見つけても触るな』とだけ念を押しておいた。
その僕はと言えば、今、小説を書いている。文才が全くないのは自覚済み。内容は、廃墟部屋に閉じ込められた男女がスゴロクを通して異世界転移するという、僕らの体験談を元にしたファンタジーだ。
「なんで発表しないっスか?」
「そうだよ。Web小説サイトなんていっぱいあるのに」
要も颯太も、僕が注意喚起の意味を込めて書いていると思っているけど……実はそんなつもりはまったくない。
「え、じゃあ、なんで書いているっスか?」
「自分もそれ、不思議に思っていたんだけど」
と、唯二人の読者が問う。
「そんなの決まっているよ」
僕は笑顔で答える。
「書いていると、またみんなに合える気がするからさ」
完




