第82話・華麗に登場
「でもね、水音クン。私、本当は……異世界から誘拐される子どもたちを救いたくて、この黒石を探していたのよ」
――衝撃の告白だった。リュールは子供たちを守りたい一心で、犯罪を犯したのか。
「え……そんな……そんな事も知らずに僕は……」
「こらこら、耳を貸すなって。ええか、こいつが人身売買組織の親玉やで? コイツにとって劫冥石は、異世界で子どもを誘拐する為のもんや」
「もお~、だから糸目は無粋なんだってば!」
……また騙された。
「ホント、ムカつくよねぇ~」
リュールが劫冥石に手をかざすと、彼女のうしろに黒い転移ゲートが七つ出現し、そこから一匹、また一匹と、角の生えた黒いモンスターがでてきた。
「あんな事もできるのか……」
「悪魔族やな」
禍々しいその姿には、魔王に近いものを感じる。だけどこいつらには感情が見えなかった。生物としての本能だけで動いている感じだ。
「でもこれって……少なくとも、鈴姫ちんは引く気が全然ないって事っスね」
要の言う通りだと思う。これは、逃げるつもりがない、逃げる必要のない、そして、降参もしない。そういった意思表示だ。
「よう、そこで止まりやがれ」
ティラノは右側のデーモンをにらみながら、木刀でトントンと肩を叩いた。僕らを背にして位置取りを微妙にずらしながら、三匹を同時に押さえ込むつもりだ。
「ミノっちに比べたら、おめーらはカエルのフンドシ以下だぜ!」
……なんか意味わからないけど、とにかく心強い。
「クラッド・ストライク!」
要は、先手を取って左側のデーモンに魔法を叩き込んだ。一撃で倒せる相手ではないが、ひるませる効果は十分にある。
しかし、問題は僕が対峙したデーモンだった。
僕は要と同じように魔法を撃とうとしたが、デーモンは数歩下がると弓を構え、矢を向けてきた。
完全にタイミングを外され、その上防御手段が全くない。僕はとっさに頭を守るように手を前にだした。
その時——
僕の指が光り、炸裂する強烈な閃光。その白い中心に浮かび上がった人影が、デーモンが放った矢を事もなく蹴り落とした。
「え……」
鮮やかなハイキック、そして頭の上にぴょこりと生えている猫耳。それも一人じゃない、三人だ。
……見覚えがある。
「ブラン……シェット!?」
「おう、来てやったぜ!」
「赤猫ずきん三姉妹、華麗に登場っしょ!」
「登場しやがりましたでっす!」
目元にチョキをあててポーズを決めるメイジー。それをマネをする可愛いペロー。
「これはいったい……」
「絆の指輪や」
洋館に入る前、ナローから『捨ててへんやろな』と言われてなんとなく指にはめておいたんだけど……まさかこんな効果があるなんて。
「姉貴、クロ子とベルノを!」
ブランシェットは階段をものすごい勢いで駆け上がり、リュールに飛びかかった。同時に煙が発生し、数秒の間、リュールの視界をふさいだ。メイジーが投げた煙玉だ。
「甘いっしょ、その煙」
メイジーはいたずらっぽく笑いながら、デーモンにも煙玉を投げ込んだ。中身はトウモロコシの粉だそうだ。
ペローは煙の中に走り込むと、わずか数秒でベルノを抱えて階段を駆け下りてきた。小さい体で一生懸命に走る男の娘。足がもつれて転びそうになるが、すぐさまティラノが受け止める。
「お、やるじゃねえか、ちっこいの!」
「ちっこいのじゃないでっす! ペロー様と呼びやがれでっす!!」
「お、おう。ありがとうよ、ペロー様!」
……素直なティラノであった。
「クロ子、重すぎるっしょ!」
メイジーも颯太を救出しようとするが、ガタイの良さが仇となってしまった。ズリズリと引っ張るが持ち上げられず、メイジーは……
「あー、もお!」
――強硬手段にでた。
「しかたないから落とすね!」
「……え?」
メイジーに蹴飛ばされ、十段ほどの階段をガタガタと転がりおちる颯太。これは痛そうだ。
「蒲田行進曲やな……」
「ナイス、姉貴!」
これって、ナイスなのか?




