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【異世界スゴロク】止まったマスで転移する呪いの冒険譚 ~ゴールしなければ生き残れない~  作者: 幸運な黒猫
【ジュラシック・テイル? 】

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第77話・【ジュラシック・テイル? その4】

八白亜紀(やしろあき)、その者たちは?」


 魔王の視線が、ギロリと僕らに向けられた。


「ああ、彼らがベルノを取り返してくれたんや」


 そして亜紀さんは、犯人が組織で動いている事、時間や時空を超えて誘拐を繰り返している事を話した。僕らが魔王を犯人だと疑っている事もだ。


「なるほどのう。確かにワシを疑うのもわかるが……それで、お主ら三人が乗り込んで来たのじゃな」

「……三人?」


 気がつかなかった。颯太(そうた)鈴姫(べる)さんがいない。いつの間にはぐれてしまったのだろうか?


「あと二人おるで。迷ってんちゃうかな?」

「ふむ、ならば兵たちに探させよう。危険な部屋に入っていなければよいが……」


 この時、僕は目の前の魔王が大きく見えた。誘拐犯だと疑っている事を聞いても怒らず、さらにはここにいない仲間の心配までしてくれている。 


 先入観で『魔族は残虐』と決めつけていたけど……彼らは、思うより温厚なのかもしれない。


「ところで……なのだが……」


 魔王は僕らから視線をそらし、なにか言いづらそうに口に手をあてた。


「ん~、その……我が愛しのぉ……マイハニーは……おらんのか?」


 ……マイハニー?


(あ~、あれな……女神さんの事やで)

(……?)

(魔王のおっちゃんな、ウチとの戦闘中に、視界に入った女神さんに一目惚れしたんや)

(なによそれ。初デートのカラオケでラブソング歌うくらい空気読めてないわね)

(あ、(あおい)さん、ちょっと抑えた方が……)


 魔王が彼女に惚れているのなら、ベルノを誘拐して心証を悪くするような事はしない。亜紀さんは、最初から”魔王は白”だとわかっていたようだ。


(あ、女神妖精さんが入ってこなかったのは、もしかして……)

(正解やで!)


 敵方である女神に一目惚れする魔王。妙に人間くさいエピソードだな、と、少しだけ気が緩んだその時だった。


 奥の方から『ドンッ――』と爆発音が響いた。直後、激しい振動が床を伝わり、悲鳴のような声が聞こえ、そして、バタバタと慌ただしい足音が近づいてきた。


「魔王様!」

「どうした、騒がしい」

「何者かが宝物殿に侵入したようです」

「なんだと!?」


 宝物殿が近づくにつれ、焦げ臭いにおいが漂って来た。埃と瓦礫、所々に残る微火とくすぶる黒い煙。傷だらけの魔族が何人も倒れ、瓦礫の下からはうめき声が聞こえてくる。


 そんな中にポツンとひとり、見慣れた大男が立っていた。けが人を助けるのでもなく、ただただそこにいるだけ。

 

颯太(そうた)、どうしたんだよ!」

「怪我ないっスか?」

 

 僕らの声が耳に届いていないのか、颯太はピクリとも動かない。


 そんな中、真っ先に動いたのは、恐竜人(ライズ)の二人だった。瓦礫を持ち上げ、投げ飛ばすティラノとルカ、そして倒れている魔族を担ぎ上げて運ぶ亜紀さん。もちろん僕たちも、迷わず手伝いに加わった。


 ――そこには、確実に助けられる命があるのだから。


 しかし、颯太は部屋の中を凝視したまま動かなかった。こういう事には率先して動くタイプだったのに、声をかけても反応がない。足元で苦しんでいる魔族を一瞥すらしないなんて……


(そう)ちん、しっかりするニャ!」

「いったい、どうしたのよ」


 ベルノは颯太の服にしがみつくと、そのまま肩までよじ登った。そして両手で、ぽふんっと颯太の頬を叩く。同時に(あおい)さんは、颯太の足元に倒れている魔族に水を飲ませながら、彼の足を蹴飛ばした。


「あ……」


 驚いた顔で辺りを見回す颯太。初めてこの惨状に気がついたといった感じだ。なにかを言いかけ、それでも声がでず、彼は黙ったまま宝物殿の中を指差した。


 誘導され、みんなの視線が向くと、そこには白いドレスをまとった、魔族らしき女性が立っていた。差し込む光の中で金色の髪が透け、まるで神聖な輝きを放っているかのように見える。


 ――そして、その彼女の周りをふわふわと舞う()()()()()()()


 幻想的で不思議な光景。色々な異世界を体験してきたけど、ここまで神秘にあふれた光景は初めてだった。


「あ、あれは、あの白い人は……雪平(ゆきひら)さん……なんだ」

「……は?」

「颯ちん、頭打ってないっスか?」


 鈴姫べるさんは黒髪の女性。小柄で朗らかな人だ。目の前の魔族とは似ても似つかない。


「なんであんな変なのが鈴姫なのよ……」


 その時、背後から低く響く声が切り裂いた。空気が一瞬で重くなり、僕らの背筋が凍りつく。振り向くまでもなく、わかっていた――魔王が、そこにいる。


「その額の紋章……聞いた事があるぞ。よもや盗賊の代名詞だったとはな。え? 時の魔女リュールよ」



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