第74話・【ジュラシック・テイル? その1】
〔とある異世界の話です。復活するたびに、転生勇者にボコボコのボコにされ続けた魔王がいました〕
「転生物によくあるやつですね」
〔ですがある日、魔王は『人類が生まれなければ勝つる!』と、白亜紀の地球を占領するセコイ作戦にでたのです〕
そうは言うけど、相手の立場から見たらものすごく理にかなっていると思う。戦力を消費せず、その上で完全勝利できるのだから。
〔そんなわけで、人類を守るためにこの人を転生させたのですが……なんか、こんなのでもう、すみません〕
「こんなん言うな、詐欺女神」
〔ちなみに、猫耳族になったのは私の趣味です〕
……やはりこの二人、似たもの同士だ。
「じゃあ、ティラノさんとルカさんは?」
「恐竜人ちゃんや!」
「ライズ……ちゃん? ってなに?」
彼女はニヤリと口角を上げると、だまったまま空を指さした。その表情はどこか楽しげで、なにか自慢しているようにも見える。
上空を旋回していた翼竜が、ゆっくりと降下してきた。やはり迫力が凄い。
地表近くになって”くるり“と宙返りをすると、ポンッと白い煙を発して、その中から人間が現れた。
「え……なにが起きたの!?」
「この娘がプテラノドンの恐竜人、プチちゃんや」
ボブヘアに革ジャンを着た可愛らしい少女が、僕らの目の前にふわりと降り立った。背中には翼、お尻にはしっぽが生えている。
「可愛えやろ」
「え、えっと、みなさんヨロシクです」
照れくさそうにはにかむ、プテラノドンの恐竜人。
「は、はあ。……あ、よろしくお願いします」
……なんか、こちらも無駄に緊張してしまった。
「木刀を持っているのが、ティラノサウルスのティラちゃん。そして後輩の、カルカロドントサウルスのルカちゃんや」
「えっと、この娘たちが戦うのです?」
「ああ。十メートルを超える恐竜のパワーが、人間サイズに凝縮されてんのや。ジュライチ強いで!!」
……?
「どないした?」
「えっと、ジュライチとは?」
また新しい言葉だ。今度はどんな内容なのかと、ほんの少しだけ期待したのだけれど……
「ああ、ジュラ紀で一番言う意味や!」
「……」
〔ホント、すみませんねぇ、こんなので〕
「こんなん言うな〜」
白亜紀に転移した事、魔王軍が攻めてきている事、恐竜を恐竜人化する事。……これらすべてが、ベルノの世界。
「なにこのとんでもない世界は……」
目の前にいる恐竜人たち。翼やしっぽが無ければ、人間そのものだ。考え方や行動にしても、僕らとなにも変わらない。
「えっちぃなぁ、ミナミナ」
「……え?」
「そんなに女の子をジロジロ見んなや。セクハラやで~」
ケラケラと笑いながらから亜紀さんがからかってくる。確かに興味は持ったけど、それは女の子だからではない。僕の気を引いたのは、恐竜人という存在そのものだ。
「違いますって」
「ふ~ん。なにがどう違うのかな~。そういえばミナミナって本棚見ている時もえっちぃ目だったよね」
「葵さん、参戦しないで下さいよ」
「どう違うのかニャ~」
「もう、ベルノまで。そういうのマネしちゃダメだって」
みんなの視線が突き刺さる……泣きそうです。
「恐竜人さんたちが魔王軍と戦う訳でしょ? じゃあ、その敵がベルノを誘拐したのかなって」
ちょっと苦しい言い訳に聞こえるだろうけど、嘘は言っていない。敵対勢力なら、ベルノを誘拐する理由があると思うから。
「なるほど。あ~、ちょいと女神さんや!」
〔ちりめん問屋のご隠居みたいな呼び方はやめてくださいよ、八っつぁんや!〕
「なんか知らね?」
〔そうですね。この際、直接聞いてみたらどうです?〕
直接聞くって……魔王に!?
「え、戦っているんじゃないの?」
「ん~、まあ、戦ってる相手には違いないのやけど」
〔八白亜紀はこの性格ですからね。魔王と対話で決着をつけるって、何度も乗り込んでいるのですよ〕
武力で来る相手の本拠地に話し合いで入っていくなんて、もしかして、ものすごい胆力の持ち主なのか?
〔私としては、ちゃっちゃと魔王をぶっ殺して終わりにして欲しいのですが〕
「だからそう言うなって~」
……なんかこの女神妖精さん、相当物騒だな。
「しっかしなぁ、ベルノが誘拐されていたなんて知らんかったわ。昨日いなくなったと思ったら、大冒険してたんやな」
と、ベルノの髪の毛をわしゃわしゃと撫でる亜紀さん。ベルノも嫌がるそぶりを見せながらも、すごく嬉しそうだ。やはり家族とのコミュニケーションは別格なのだろう。
「――って、ベルノがいなくなったのは昨日なんですか?」
〔タイムリープが絡むと、自然な話ですよ。昨日いなくなったベルノさんが、何十年冒険したとしても、今日に戻ってくればこの世界では一日しか経っていませんから〕
と、女神妖精さんが解説に入ってくれた。『成長はしちゃいますけどね』と笑っていたけど……笑い事じゃないだろ。
それにしても、これだけの異常事態が起こっていたのに、まったく動じていない彼女たちが不思議だった。
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ちょっとだけ補足。
キャラクターがいっぺんに増えたので、補足説明を入れておきます。
・廃墟組
水瀬 水音(水操作魔法)
徳川 颯太(氷操作魔法)
薬師寺 要(土攻撃魔法)
神楽代 葵(炎操作魔法)
雪平 鈴姫(所持魔法不明)
・ジュラシック組
八白亜紀(猫耳族)
ベルノ(猫耳族)
女神さん/詐欺女神/女神妖精(神?)
ティラノ(ティラノサウルス)
ルカ(カルカロドントサウルス)
プチ(プテラノドン)
※恐竜人にはレックス・スキルと呼ばれる技がある。出合いの場面でティラノが放とうとしていたのがそれ。技名は[レックス・〇〇]。
亜紀曰く『強力だけど技名がダサい』




