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【異世界スゴロク】止まったマスで転移する呪いの冒険譚 ~ゴールしなければ生き残れない~  作者: 幸運な黒猫
転移の秘密

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第68話・朗報

「よっし、それじゃあ、ビスケットとチョコレート買ってくるよ!」


 (あおい)さんは、意気揚々と立ち上がりマジックバッグを肩にかけると、ルーレットを人差し指でカツンッと弾いた。


「どうかチョコレートが存在する世界に行けますように」


 パンパンッと、両手を合わせてお祈りをする。神様なのか仏様なのかわからないけど、気合の乗り方が半端ない。それほど”スモア“とやらを食べたいのか。


 ……いやホント、それってなんなのよ?


「あ、あと(あお)ちん……」

「大丈夫。覚えてるよ」


 そう言い残し、葵さんとベルノはすーっと消える。彼女のコマ6マス進むと、そこには〔フィジカル補正+100% ※今回のみ〕と浮かび上がってきた。


「葵ちゃん、ますますゴリラになっちゃうのね」

「言い方ぁ……」


 ツッコミを入れつつも、僕の頭の中では巨大なゴリラが炎を撒き散らしながらビルを破壊している。セルケトをボコボコのボコにした戦いぶりを見てしまったあとでは、仕方がないだろう。


 今現在の進行状況は、僕が先頭で12マス、そして二番手は、意外にも葵さんの10マスだった。最初の転移で3マス戻ってスタート地点から動いていなかったけど、僕と転移した事で4マス進み、たった今、自身で6をだしたからだ。


 続いて鈴姫(べる)さんの9マス。颯太(そうた)と要でビリ争い。ゴールまで30マスくらいだから、まだ2/3ほど残っているけど……このまますんなり進むのだろうか?


 ……まだまだ分からない事が多すぎる。


「みんな、ちょっといい? 話があるんだけど」


 と、鈴姫さん。話とはなんだろう?


「実は、転移先を指定する方法がなんとなくわかったかもしれないの」

「マジ?」

「ずっと考えていたんだけどね。葵ちゃんと水音(みなと)くんが転移した時、本を六冊持って行ったでしょ?」


 ベルノの世界を探そうとして、葵さんがマジックバッグに入れて異世界に持ち込んだ六冊の本。そのうちの一冊が、偶然にも転移先の【没落令嬢のダンジョン生配信 ~死亡フラグをぶち壊してさしあげますわ!~】だった。


「それで、たまたまその中に、転移先の世界があったんだよね?」

「うん」

「逆に考えてみたの」

「と言うと?」

()()()()()()()()()()()()()()()()としたらどうかな」


 ――そうか、そういう事なのか。


「つまり、行きたい世界の本を持って転移すれば……」

「うん、それなら水音くんの言う『ゲームとして成立する条件』を満たすと思うんだけど?」


 本を持って転移する事で行き先を指定できる可能性。……これは盲点だった。


「でも、確証がないよね?」

「だからね、葵ちゃんのマジックバッグの中に、一冊入れておいたのよ」 


 と、楽しそうにニコリと笑う鈴姫さん。まさか、葵さんで実験するとは思わなかった。


「大丈夫、危険はないよ。入れておいた本は【ママー・ウォーズ】だから」

「え、あの有名なラブコメ!?」


 映画で大ヒットを記録し、小説化・漫画化された誰でも知っている名作。本棚の中にあるのは見たけど、まさかあの世界に葵さんを放り込むなんて無謀が過ぎる。


「葵ちんには無理すぎじゃないっスか?」

「フィジカル補正+100%でラブコメってなんで……」


 きっと、要や颯太も同じ事を考えたのだろう。『物語がメチャクチャになりそうだ』と。救いは、チョトレートとビスケットがある世界って事くらいか。


「でも、鈴姫さんの予想が当たっていたらこの先かなり安全に進められるね」


 できるだけそこにある”本の山“を崩して内容を把握し、戦わないで済む世界を選べば安全にゴールまで行ける。これ以上ない朗報だ。


「スローライフ系や現代劇をピックアップしようか」

「あと、ラブコメや学園ものも安全だよね」


 みんなの表情が明るい。いい感じだ。『早くここからでたい』って気持ちが伝わってくる。この中に黒幕がいるとか、糸目の勘違いだろう。


 僕らは二人ずつにわかれて中身を精査することにした。組み合わせは推して知るべし。今回ばかりは、葵さんにゆっくり冒険してきてほしいと願う。


「えっと、水音(みな)っちは、本を持って行けば同じ世界に行けたりする可能性ってあると思うっスか?」

「要は、また行きたい世界があるの?」


 僕としては【バイキング・オブ・カリビアン】の世界も【没落令嬢】の世界も二度は行きたくない。楽しくなかったわけではないけど、危険もかなりあった。


 冒険において楽しさとリスクは表裏一体。だけどこの先、リスクは徹底的に排除すべきだと思う。この部屋からでる事が最優先なのだから。


「あ~、うん。まあ、ちょっと……あるっス」


 だからこの煮え切らない言い方には違和感を覚えた。要らしくないと言うか、とにかく変だ。


「……どうしたの?」

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