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モンスターテイマーたち、犬耳の女狩人と出会う

 

 補給地点の町から出てはや一日。

 ハリス一行は一面が雪景色の氷雪地帯へ入っていた。


 四人の服装も一層厚着になり、雪を踏み固めて歩く。


「あと半日もすれば到着するはずなんだけどなぁ」


 白い息を吐きながら、地図を持ったポーラが呟く。

 彼女の言うとおり、たどり着くはずの村は痕跡すら見えない。


 ハリスも懐から同じ地図を取り出し、立ち止まる。

 地形と現在地を確かめた彼は、彼女を安心させるために語る。


「目印は間違っていない。雪上を歩くことに慣れていないから、進行速度の計測を誤ったのだろう」


「えー、でもあたし、氷雪地帯は慣れてるし」


「おしゃべりをしながら歩いていたのはポーラだろう? 自然と俺たちに歩速を合わせていたんだ」


「あー……そういうことね」


 納得したポーラだが、表情は少し暗い。

 理由があれど、進行の遅延には変わらず、氷雪地帯の過酷な環境で夜を過ごす可能性が増えたからだ。


 懸念の残る状況に、四人は顔をより合わせる。


「飛行魔術で周囲の探索でもしましょうか?」


「少し危ないな。上空のほうが気温は低い」


「では、私が翼を用いて空を飛ぶというのは?」


「もっと危険だ、毎回服を破いているのは誰だ?」


「え、レナちゃんはなんの話をしてるの?」


 レナの正体を知らないポーラが、彼女を見て尋ねる。

 しかし問題解決する方法は見つからず、みな頭を悩ませる。


 そんな中、ふいにリンゴが視線を外すと、雪原に小さな影があった。

 角の生えた兎……一匹のアルミラージュである。


「ハリスさん、あれは」


「アルミラージュか。群生のモンスターが、何故単体で?」


 気付いたハリスが、警戒しながら歩み寄る。

 モンスターの専門家とも言えるハリスとなれば、このモンスターの危険性は理解し、油断は一つもない。


 やがて読みは当たり、アルミラージュはキィキィと鳴きだす。

 警戒を示す声に、ハリスは指を構える。


「『キャプチャーリング』」


 魔術を用いて冷静に対象を捕獲する。

 アルミラージュは暴れるが、リングの壊れる気配はない。


 安全を確認したハリスは、興奮する兎を抱き上げてなだめる。


「大丈夫だ、俺たちは敵じゃない」


 心が通じたのか、落ち着くアルミラージュ。

 群れていない群生モンスターという奇妙な存在に、ハリスは『シンクロ』を使用して情報を得る。


 するとアルミラージュは怪我をしていることがわかり、同時に言葉も伝えられる。


『逃げて。おかしな者たちが現れた』


 アルミラージュから受け取った言葉に、ハリスの第六感が危険を伝える。

 それと同時に、レナも周囲の異変に気付く。


「……足元です!」


 彼女が叫ぶと、四人はその場から飛び退く。

 直後、ハリス達のいた足元から、無数の青白い手が突き出てくる。


 四人を捕らえられなかった手は、雪面に掴まって自身の体を引き摺り出す。

 雪中から現れた彼等は、真っ青な顔をしたアンデッドだった。


「フリーズアンデッド!? めっちゃレアじゃん!」


「ああ。何故それが、こんなにも多くいるのかは、わからないがな」


 出発日と同様、人工モンスターであるアンデッドの登場に、ハリスは訝しむ。

 すると腕の中のアルミラージュが、彼等を見て威嚇する。


『あいつらが、群れを全滅させた』


「……そういうことか」


 合点がいったハリスは、三人に指示を出す。


「レナと俺で前衛を。ポーラは炎魔術が使えるなら、それで奴らを掃討してくれ」


「かしこまりました」


「了解!」


 レナとポーラに行動を命じ、リンゴの元へ寄るハリス。

 下手な指示を出せない彼女に、アルミラージュを受け渡す。


「リンゴはコイツと一緒に、戦いが終わるまで安全を重視してくれ」


「……はい」


 瞬間、隷従の首輪が紫色に光る。

 それからすぐ、彼女は無意識に飛行魔術を使い、中空の安全地帯へ浮上した。


 懸念していたことが当たり、安全な命令を出せたことに、ハリスは胸を撫で下ろす。

 そして地上の三人は、改めてフリーズアンデッドと対峙する。


 勇猛果敢に突撃し、怪力でアンデッドを端からねじ伏せていくレナ。

 ハリスはリベイルケインを伸ばし、広範囲の敵を切り裂いていく。 


 しかしいくら倒せど、次々に雪の中から現れる敵に、炎魔術で挑むポーラは舌打ちする。


「倒すのは楽だけど、厄介な相手……!」


 彼女の言うとおり、いつまでかかるかわからない戦闘に、ハリスは思考を巡らせる。


「いっそのこと、足元の雪を一気に焼いてしまうのはどうだ?」


「……いいね、やっちゃおっか」


 笑顔で同意するポーラ。

 策が決まると、すぐにハリスはレナに念話で語りかける。


(ポーラが炎で敵を一掃する。跳びあがって回避を)


(承りました!)


 肉弾戦を繰り広げるレナは、ハリスの指示に従って跳びあがる。


 ヘイトを集中させていた彼女の離脱に、フリーズアンデッドたちが彼女を見上げる中、同じく跳躍したハリスがポーラに告げる。



「今だ!」


 その言葉を受け、ポーラは剣を地面へ突き立てて叫ぶ。


「『インフェルノ』!」


 詠唱と共に、彼女を中心とする雪面は業火を噴き上げる。

 雪上のフリーズアンデッドが炎に焼かれると共に、足元の雪もみるみる蒸発していく。


 分厚い雪が解けきり、地面が露わになると、雪中に潜んでいた敵も倒れていく。


 しかし炎を耐えた一部のアンデッドが、中心にいるポーラへ襲いかかる。

 彼女を救うため、跳躍中のハリスがリベイルケインで残る敵を倒そうとしたとき、遠くから少女の声が響く。


「その子を引き上げて!」


 咄嗟の指示に、標的をポーラへ変えるハリス。

 伸ばした鞭で彼女を捕まえると、思いきり引き上げて救出に成功する。


 次の瞬間、声の聞こえた方向から、一本の矢が飛来する。

 先に爆薬のくくられた矢は、雪の中にポーラが炎で開けた穴へ飛び込む。


 直後に矢は爆散し、穴の中にいた敵の残りをまとめて吹き飛ばした。


 跳躍していたハリス達も爆風にあおられるが、何とか雪面に着地する。

 リンゴへの命令も解け、アルミラージュと共に地上へ戻る。


 するとやがて、雪原の向こうから声の主である少女が駆けてくる。


「ご無事でしたか。災難でしたな、最近この奇妙な敵が増えていて」


 犬耳を生やし、完全装備の防寒着に包んだ少女が語る。

 背中には大きな弓と矢が担がれ、確かに彼女が援助してくれたのだとハリス達は確信する。


「ありがとう、おかげで助かった。名前は?」


「私に名前はありませぬ、近くの村の狩人です。あなた方は……」


 言いかけた狩人は、ハリスの顔を見て停止する。

 何かを観察するような表情を浮かべた彼女だったが、頭を左右に振って我に返る。


 不思議な彼女の様子に、疑問符を浮かべるハリス達。

 狩人はそんな彼等の装いを見て、得意げな笑みを浮かべて告げる。


「よろしければ、近くの村に案内しましょう。温泉もあっていい村です」


 四人を受け入れるような、暖かな提案をする狩人。

 その提案にハッと気付いたポーラは、地図を彼女に見せて尋ねる。


「ひょっとして、その村ってここだったりする?」


「……? まあ、そうですが」


 肯定した狩人に、四人は顔を上げて頷く。

 彼女の語る村こそが、ハリス達の目的地そのものであった――。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


この作品を「面白い!」「もっと続きを読みたい!」と少しでも感じましたら、

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執筆の励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします。

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