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アルビー  作者: アオハル
4/7

教会のマルク

アルビーが孤児院へ来てから一か月が過ぎていた。


朝食を終えて庭へ出ると、同じ大部屋の子供たちが声をかけて来た。


「今日も配達?」


「市場か?」


「毎日だな」


アルビーは足を止めた。


「行ってくる」


「「「気をつけろよー!」」」


アルビーは振り返らずに片手を上げ、歩き出した。



市場へ荷物を届けて、共同倉庫へ戻る。


そんなやり取りを何度も繰り返した。


「そこに立て」


ベイルはアルビーの足下に目を落とした。


次に上着へ目を向ける。


ベイルはしばらく眺めていた。


自身の靴と上着の袖を見てみると、つま先の縫い目はほつれ、革部分もかなり擦り減っている。


袖も布部分が薄くなっていた。



夕方。


孤児院では夕食の準備が進んでいた。


「ベイルから聞いています。明日の配達はお休みですね」


エレノアは少し考えた。


「マルク」


近くにいたマルクが顔を上げる。


「はい」


「明日、アルビーと市場へ行って靴と仕事着を買ってきてください」


「わかりました」


マルクは頷いて、アルビーの方を見た。



翌朝、朝食の片付けが終わる頃。


マルクは立ち上がった。


「行くぞ」


アルビーも後に続く。


その横でミアが顔を上げた。


「もう行くの?」


「ああ、今日は読み書きの日だろ」


「わかってるよ」


ミアは少し頬を膨らませた。


食堂を出ると、昨日声を掛けてきた子供達がいた。


桶や掃除道具を持っている。


「今日は二人なんだな」


「また市場?」


アルビーは小さく手を上げた。


二人はそのまま孤児院の門へ向かった。



市場を歩く途中、店先から声が飛んだ。


「おう、マルク」


「おはようございます」


マルクは足を止める。


「ああ、配達の坊主も一緒か」


アルビーも足を止め、軽く会釈をした。


「今日は休みか?」


「ええ、靴を買いに行くんです」


男はアルビーの足元を見て頷いた。


「なるほどな。ちゃんとやってるってこった」


男は再びマルクの方へ顔を向ける。


「今度の休息日はうちの婆さんと教会に行く予定なんだ。よろしくな」


「はい。気をつけてお越しください」


マルクは頭を下げた。


「お前は相変わらず真面目だな」


「よく言われます」


「違いねえ」


男は声を上げて笑った。



マルクは一軒の店の前で足を止め、扉を開いた。


革の匂いが流れてくる。


床や棚には大小様々な靴が並んでいた。


飾りの多い靴はほとんどなく、仕事で使うための靴が中心のようだった。


「おや、教会のマルクか」


「こんにちは」


店主の視線がマルクの足下へ落ち、アルビーの足下へ移る。


「今日はこっちか」


「はい。仕事用の靴をお願いできますか」


「ふむ。この様子じゃ結構歩いてるな」


「共同倉庫で配達をしています」


「そうか。なら頑丈なやつがいい」


次に入った店は衣類を扱う店だった。


「服は大抵ここで買う」


マルクは足を止めた。


「どれがいい?」


「丈夫なやつがいい」


アルビーは店内を見回した。


マルクは少し困った顔をした。


やがて棚から一着の上着を取り出す。


濃い色の、飾り気のない上着だった。


「これ、いいんじゃないか」


「丈夫そうだ」


マルクはため息をついた。



買い物を終え、帰路に着く。


二人は並んで歩いた。


毎日歩く見慣れた景色だったが、今日は少し違って見えた。


やがて孤児院が見えてくる。


「おかえり!」


小走りで駆け寄ってきたミアの視線が包みへ向いた。


「買えた?」


「ああ」


マルクは包みを軽く持ち上げた。



午後からは孤児院の仕事を手伝った。


ミアは上機嫌に言う。


「久しぶりに三人だね」


「そうだな」


「……ああ、俺は教会の仕事に行ってくるよ。ミアのこと頼んだ」


マルクは罰が悪そうに言った。


「ああ」


ミアは口を尖らせてそっぽを向いた。



夜。


マルクは孤児院の子供たちや市場の人たちを思い出す。


アルビーは少しずつ受け入れられていた。


マルクは小さく息を吐く。


(……よかったな。)


窓の外からは荷車の音が途切れずに聞こえる。


(……あいつは、この先どうなるのだろうか。)


マルクはしばらく耳を傾け、目を伏せた。

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