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アルビー  作者: アオハル
3/7

配達人

朝食の後。


エレノアがアルビーを呼んだ。


「今日は配達のお手伝いをしてください」


「はい」


アルビーが立ち上がる。


ミアが顔を上げた。


「そうだった」


マルクが少し笑う。


「夕方には戻るだろ」


「うん」


ミアはアルビーを見る。


「気をつけてね」


「行ってくる」



市場の裏手には、大きな倉庫が並んでいた。


列をなす荷馬車。


積み上げられた木箱。


行き交う人影。


響く怒声。


表の通りとは違う匂いがした。


エレノアは一つの倉庫の前で足を止める。


「ベイル」


木箱を仕分けていた青年が顔を上げた。


黒髪に引き締まった体。


青年は手にしていた木札を木箱へ括り付ける。


「その子か」


「はい。アルビーです」


ベイルはアルビーを見る。


「ベイルだ」


それだけ言うと、ベイルは足元を指差した。


「持てるか」


アルビーは両手で持ち上げる。


「持てます」


ベイルは頷き、荷札へ目を落とした。


「雑貨屋だ」


「店に着いたら荷札を見せろ」


「控えをもらえ」


「受け取ったら戻れ」


アルビーは頷く。


「行け」


アルビーは木箱を抱えて歩き出した。



市場の通りへ出る。


抱えた木箱は思ったよりも大きい。


人の流れを避けながら進む。


東通り二番。


やがて目的の店を見つけた。


店先には縄や布、木桶が並んでいる。


アルビーは店へ入った。


「荷物です」


「ご苦労さん」


アルビーは小さな木札を受け取った。


「ありがとうございました」


男は軽く手を振った。


アルビーは店を出て、来た道を引き返した。


「戻りました」


ベイルはアルビーから受け取った木札を確かめた。


「次だ」



午前の間に何度も市場を往復した。


東通り。


西通り。


広場の近く。


歩き回るうち、市場の道も少し覚えていた。



「昼だ」


倉庫のあちこちで手が止まり始める。


しばらくして、パンの入った大きな籠が運ばれてきた。


運んでいたのはエレノアと同じくらいの年齢に見える女性だった。


慣れた様子で籠を下ろす。


エレノアとは対照的に、活発そうな雰囲気だった。


女性は倉庫の男たちへ声をかけ、軽く手を振った。


何人かが嬉しそうに応じた。


ベイルは籠からパンを二つ取って、片方をアルビーへ渡した。


「受け取ってこい」


近くで配られている木椀には、薄い野菜のスープが入っていた。


倉庫のあちこちで昼食が始まり、午前中の慌ただしさが少しだけ和らいだ。


アルビーはパンをちぎり、スープと一緒に口へ運びながら周囲を眺めていた。



昼休憩が終わる。


倉庫のあちこちで人が立ち上がり、ベイルも腰を上げた。


木箱を運ぶ音が戻ってくる。


「工房区だ」


「西通り三番」


アルビーが言った。


「読めるのか」


「はい」


ベイルは荷札を見直した。


「ノルド鍛冶工房だ」



市場を抜けて南へ向かう。


喧騒は遠ざかっていった。


鍛冶屋。


木工所。


革細工の店。


職人たちの店が並び、市場とは違う活気を感じた。


アルビーは足を止めずに歩く。


西通り三番。


やがて目的の建物を見つけた。


ノルド鍛冶工房。


炉の熱気が外まで流れていた。


アルビーは扉を押した。


熱気が流れ出る。


奥では男たちが忙しく動いていた。


赤く熱した鉄。


打ち下ろされる槌。


響く金属音。


アルビーは木箱を抱えたまま工房の中を見回した。


誰も手を止める様子はない。


しばらく様子を窺う。


やがて近くにいた男へ歩み寄った。


「配達です」


男は顔を上げ、視線を木箱へ向けた。


「おう、こっちだ」



「早かったな」


ベイルはアルビーから受け取った木札を確かめ、

懐へしまった。


その後も配達は続いた。


気付けば日は傾き始めていた。


「終わりだ」


ベイルは一枚の木札を差し出した。


「エレノアに渡せ」


「わかりました」


アルビーは無くさないよう握りしめ、共同倉庫を後にした。



木札を受け取ったエレノアは微笑んだ。


「お疲れ様です、アルビー。無事に終わったようですね」


アルビーは少しだけ眠そうに頷く。


「さぁ夕食の時間ですよ。たくさん歩いたので、お腹が空いているでしょう?」


食堂には既に子供たちが集まっていた。


マルクがアルビーに気付いた。


「おかえり」


「ただいま」


「配達どうだった?」


「忙しかった」


マルクの横でミアが笑う。


「だよね、すっごく眠そうだよ」


子供たちが席に着く。


エレノアが食前の祈りを始めた。


食堂に静かな声が響く。


やがて祈りが終わって、夕食が始まる。


孤児院には穏やかな時間が流れていた。



市場では片付けが始まっていた。


ガレスは店先の大きな台を持ち上げ、店の奥へ運び入れる。


「そういえばさ」


「なんだ」


「今日見たよ、教会の新入り」


「どこでだ」


「広場の近くだったかな」


「お前、仕事はどうした」


「してたって」


「サボってたんじゃねぇだろうな」


「違うって。配達してたよ」


ガレスは手を止めた。


「そうか」


「ああ、ちゃんとやってた」


ガレスは小さく鼻を鳴らす。


「ならいい」

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