第91話:作者を救うキスに波乱の嵐
いつも本作をお読みいただき、本当にありがとうございます!皆様の応援のおかげで、第91話をお届けすることができました。前回の第90話では、リリィーナの野生の心の声(本音)によって「意気地なし、ヘタレ王子たちめ……!」と一刀両断されてしまった王子たち。今回は、プライドをズタズタにされた彼らが、名誉挽回とリリィーナからの「あるもの」を求めて大暴走を始めます。カルトナージュの秘められた下心や、狭い6畳間で繰り広げられるイケメンたちの醜い(?)スクラムをぜひお楽しみください!
(……意、意気地なし……? 僕たちが……ヘタレ王子……!?)
リリィーナのお上品な仮面の下から漏れ出た、あまりにも容赦のない野生の本音。
実はそれがダイレクトに脳内に響き渡っていた(心の声が丸聞こえだった)だけなのだが、悲しいかな、恋愛脳が極限に達している王子たちはその仕組みをいまいち理解していなかった。
彼らはただ、目の前で腕を組み、不機嫌そうに「むすっ」と頬を膨らませているリリィーナの態度を見て
『当の本人から、直接、意気地なしとヘタレ呼ばわりされた』と完全に思い込んでしまったのである。
いくら愛するリリィーナの言葉とはいえ、国を背負う最強の王子としてのプライドがある。
なにより、他の男たちの前で「意気地なし」の烙印を押されたまま黙っていられる彼らではなかった。
6畳間の薄い畳の上で、ガタガタと崩れ落ちていた絶望の淵から、すっ……と
最初に立ち上がったのは、やっぱりカルトナージュだった。
きらびやかな漆黒の軍服の襟を優雅に
正し、その美貌に怪しくも絶対的な自信を湛えた笑みを浮かべる。
狭いワンルームアパートのせいで、立ち上がると頭が天井にぶつかりそうになり、「おっと」と少し首を傾げながらも、王族としての尊大な覇気は微塵も崩さない。
カルトナージュはリリィーナを情熱的に見つめながら、隣人に聞こえないよう、低い、しかし甘く響くヒソヒソ声で囁いた。
「リリィーナが僕たちに助けてほしいと願うなら、僕は喜んで動くよ。……
まあ、この不愉快な儀式を終わらせた後で、僕に特別な『ご褒美』をくれるというのなら、僕はなんだって動けるさ」
(ハッ、そうだ! そもそも、僕がリリィーナに注いできたあの『骨まで溶かすようなディープな口づけ』の破壊力を
ここにいる全員が知っているはずだ。
かつて教室の中で、彼女の可愛い唇を奪った時のあの甘美な記憶……。
ここで僕がヘタレの汚名を返上し、この作者(女)の幼児化を解けば、リリィーナは僕に惚れ直すに違いない。そして、僕がおねだりした次のご褒美――さらに深い愛の証を、今度は自ら求めてくれるはず……!)
(いやいやいや! 心の声でめちゃくちゃよからぬご褒美を期待してるのが丸見えなんだけど!? というか、教室の中でのあれこれをリアルに回想しないで! あと私の唇(治療)をそのための踏み台にする気満々じゃないの!!)
ちゃぶ台の真ん中で、赤ん坊の姿の私
(作者)が短い手足をジタバタさせて心の中で猛抗議する。顔がどれだけ絶世の美形だろうと、下心がすれすれで透けて見える男のキスなど、治療とはいえ恐怖でしかない。
しかし、カルトナージュの独走を、他の男たちが指をくわえて見ているはずもなかった。
「おいコラ、カルトナージュ! てめぇだけ良い格好してんじゃねえぞ!」
オフィカールがギラギラとした眼光で立ち上がり、カルトナージュの前に立ちはだかった。狭いアパートの床が、彼の巨体によってみしりと音を立てる。
「リリィーナにご褒美をねだるなんて
100年早ぇんだよ! ヘタレじゃねえところを見せるのは俺だ! 俺だって、リリィーナが危機に陥った時はいつだって
真っ先に剣を抜いて守ってきたんだ。
キスごときで日和ってると思われたら
末代までの恥だ。俺がこの作者に一発かまして、とっとと終わらせてやる!」
(オフィカール様、男気は認めるけど
『一発かます』のニュアンスがキスじゃなくて完全に殴る方の勢いなのよ! 拳を握りしめないで!)
「下がってください、脳筋の皆さん」
ミキラカーデが冷徹に銀縁メガネを
クイッと上げた。彼はまだ、部屋の隅にある「電子レンジ」の構造が気になるようでチラチラと視線を送りつつも
プライドの炎を静かに燃やしている。
「リリィーナに幻滅されたまま終わるなど、我が天才の歴史が許しません。そもそも因果律の修正や魔力の拒絶反応の解決は、魔術師である僕の専門領域です。カルトナージュのように野蛮で、ただ威力だけが取り柄の口づけとは違い、僕は最も知的に、かつスマートに魔力を流し込むことができる。当然、ご褒美をいただく権利があるのは、この問題を解決した僕です」
「ちょっとみんな待ってよぉ! 僕が一番リリィーナちゃんに甘えたいし、ご褒美だって僕のものなんだからね!」
ミディティが愛らしい天使の顔を怒りで歪め、手元から暗黒魔法の火花を激しく散らせる。
「僕を子供扱いして意気地なしなんて言ったこと、後悔させてあげるんだから。作者さん、僕の冷たいキスで今すぐ大人の姿に戻っちゃえ!」
(冷たいキスって何!? 暗黒魔法混ぜるのやめて! 唇が壊死しちゃうから本当にやめて!!!)
「(ばぶぶぶぶぅぅぅーーー!!!
(だから誰のご褒美のために私の唇が犠牲になろうとしてるの!? 誰も得をしない治療権の押し付け合いから、今度は私を奪い合う大混戦になってるよぉぉぉ!!!))」
狭い6畳間のアパートの畳の上で
4人の最強王子たちが「リリィーナへのアピール(とご褒美)」のために、殺気立ったガチの顔で私(赤ん坊)に群がり、もみくちゃのスクラムを組み始めた。
まさに、作者を救うキスを巡る、波乱の嵐。当のリリィーナは、4人の王子たちのあまりの必死さと、脳内に直接大音量で響き渡る下心全開の心の声に、完全に引き攣った顔でドン引きしていた。
(いや……みんな、私の心の声(本音)に気づいてないみたいだけど、なんで私のむすっとした顔を見ただけで、こんなにガチの殺気立った顔で赤ちゃん
(作者)にキスしようと競い合ってるわけ……!? 執着が斜め上の方向に凄まじすぎて、もう誰も止められないんだけどぉぉぉ!!)
リリィーナの野生の呆れツッコミが脳内を炸裂するなか、王子たちのプライドを賭けた大混戦はさらに加速していく。
「どけ、ミキラ! 最初は俺だ!」
「乱暴なオフィカールに神聖な術式を邪魔されたくありません!」
「僕の破壊的な魔力注入こそが最短ルートだ!」
「ずるい! 僕が一番最初に行くんだからぁ!」
顔が良すぎるイケメンたちが、全力の
「ヒソヒソ声」で言い合いながら、ちゃぶ台の上の私に向かって一斉に顔を近づけてくる。
迫り来る美麗な顔面の群れは、ご褒美どころか純粋な恐怖映像だった。
混沌が極限に達し、4人が私の上でもみくちゃになった、その瞬間。
――みしっ、みしみしっ。アパートの薄い壁が、さっきの隣人の壁ドンとは違う、不穏な音を立てて歪み始めた。
王子たちの魔力と執着のエネルギーが狭い部屋に充満しすぎたせいか、現実世界の物理法則が悲鳴を上げている。次の瞬間、さらなる波乱を予感させる衝撃が、この部屋を襲うのだった。
(第91話 おわり)
第91話をお読みいただき、ありがとうございました!リリィーナのむすっとした顔を見ただけで勝手に勘違いし、全力のヒソヒソ声で赤ん坊(作者)へのキス権を奪い合い始めた王子たち……。カルトナージュの「ご褒美」発言をはじめ、全員の下心が丸聞こえな状態での大混戦は、リリィーナじゃなくてもドン引きしてしまいますね(笑)。ラストではアパートの壁が不穏な音を立てて歪み始めましたが、はたしてこの6畳間と作者の運命はどうなってしまうのでしょうか!?次回、さらなる波乱が巻き起こる第92話をお楽しみに!✨【作者からのお願い】✨「王子たちの勘違い暴走が面白かった!」「リリィーナのドン引き顔が目に浮かぶ」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページの下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に染めて応援していただけると、執筆の凄まじいエネルギーになります!あわせてブックマーク登録もポチッとよろしくお願いいたします!




