第90話:6畳間の緊迫(?)会議
いつも『(※ここに作品タイトル)』をお読みいただき、本当にありがとうございます!おかげさまで、ついに大台の第90話を迎えることができました!前回の第89話では、まさかの日本の6畳間に4人の王子が全員現れるという超カオスな展開に……。今回は、狭すぎる部屋のなかで、リリィーナを巡る王子たちの怒涛の(?)ヒソヒソ会議がスタートします。日本のリアルなワンルームならではの「あのトラブル」や、王子たちの心の声の掛け合いを楽しんでいただけたら嬉しいです!それでは、第90話をお楽しみください!
「……おい。なんで俺がこんな、ペラペラの四角い木の板(ちゃぶ台)を囲んで床に直座りしなきゃいけねえんだよ」
最初に不満を漏らしたのはオフィカールだ。長い足を窮屈そうに折り曲げ、6畳間の壁に背中をこすりつけている。
現在の立ち位置はこうだ。部屋の端に
リリィーナ。その両脇をカルトナージュとミディティがガッチリ挟んで座り
正面にオフィカール、少し離れた冷蔵庫の横にミキラカーデ。そしてちゃぶ台の真ん中に、赤ん坊の姿の私(作者)。
密度が完全にキャパオーバーである。
「我慢なさい、オフィカール。僕だってリリィーナの隣という至高の特等席でなければ、今すぐこの家ごとすべてを消し去りたいくらい不快なのだから」
カルトナージュはリリィーナの肩を抱き寄せながら、優雅に微笑む。
しかし、そのお上品な顔の裏側は真っ黒だった。
(絶対に離さないぞ……。僕の隣で怯えるリリィーナ、なんて愛らしいんだ。
このままこの狭い空間ごと、僕の結界で閉じ込めてしまおうか? そうすれば他の有象無象に邪魔されず、一生僕のものに――)
「ちょっとカルトナージュ、ずるい!
リリィーナちゃんにそんなにベタベタ触らないでよ! こんな変な部屋に閉じ込められることになったのも、ぜーんぶ
ぜーんぶ、この無能な作者のせいなんだから……っ!」
ミディティが反対側からリリィーナの腕をぎゅっと抱きしめ、手元から暗黒魔法の禍々しい火花をパチパチと散らせる。
「(ば、ばぶぶぶぅーーー!?!? 6畳間で魔法なんか使われたらアパートごと吹き飛んじゃうよぉぉぉ!!!)」
私が短い手足をジタバタさせながら
心の中で全力でツッコミの悲鳴を上げていると、隣でその様子を見ていたリリィーナの顔が、さらに青ざめていく。
(み、みんなこの狭い部屋の中で鬱憤が限界まで溜まってるのか、めちゃくちゃイライラしてるじゃん……! カルトナージュはお仕置きとか言い出すし
ミディティの魔法は今にも爆発しそうだし……! 作者、いやバブ! お願いだから早く元の姿に戻ってよぉぉ!)
四方八方から容赦なく飛び交う王子たちの「嫉妬とイライラと独占欲に満ちた心の声」をダイレクトに脳内で受信してしまったリリィーナ。
ギスギスとした濃厚なイケメンの圧迫感が、狭い6畳間の畳の上に充満し
空気はいよいよ混沌を極めていく。
ついに、リリィーナの堪忍袋の緒が切れた。
―――バンッ!!!!
リリィーナは、なけなしの家財道具で
あるちゃぶ台を、野生の力強さで思いきり叩いた。
「もうっ! 王子たちいい加減にしてよ! いつまで経っても進まないから! 時間がどんどん過ぎて、元の世界に戻る方法を探すんでしょ!?」
お上品な仮面をかなぐり捨て、声を張り上げたリリィーナ。その瞬間。薄い壁のすぐ向こう側から、凄まじい地響きのような衝撃音が響いた。
―――ドゴォン!!!(壁ドン)
「うるせぇぇぇ!! 何時だと思ってんだ!! 静かにしろ!!!」
隣の住人からの、リアルなガチギレの怒声であった。
「「「「「っ!?」」」」」
一瞬にして、6畳間に凍りつくような
沈滅が訪れる。さっきまで世界を滅ぼさんばかりのオーラを放っていた最強の
王子たちが、日本の木造アパートの騒音トラブルという未知の恐怖に、完全に
言葉を失って硬直している。
(な、なんだ今の地響きと咆哮は……!? 暗殺者か!? 壁の向こうに、俺の気配を完全に殺していた謎の強者が潜んでいるというのか……!?)
オフィカールが冷や汗を流しながら
戦闘態勢を取るように身構える。
(僕の結界を貫通して響くほどの指向性音響兵器……。この世界の『ご近所トラブル』とやらは、我が国の魔導兵器をも凌駕する威力ですね。侮れません……)
ミキラカーデが銀縁メガネをクイッと
上げながら、驚愕で瞳を揺らしている。
(ひ、ひえぇぇぇ!! 隣の部屋の人、声の覇気が強すぎるよぉ! 暗黒魔法より怖いよぉ……!)
ミディティは魔法の火花を一瞬で消し去り、リリィーナの背中に隠れてガタガタと震えだした。全員が完全に静まり
返り、借りてきた猫のようになったところで、ようやく「元の世界に戻るための真面目な会議」が、隣人を刺激しないよう全力のヒソヒソ声で静かにスタートした。
「バブばう、なななう……
(元と言えば私のせいだけどさ。
でも、展開を変える気は一切ないからね。それより、私をこのバブバブした姿から戻さないと、続きの小説が書けなくて進まないよ)」
私がちゃぶ台の上で寝転がりながら
ため息混じりにそう鳴くと、リリィーナがフムフムと深く頷いた。
私のバブ語を、野生の勘で正確に察してくれたみたいだ。
「ん? うんうん……なるほど。王子たち、作者がこのバブ化を解いてほしいって。こういう呪術とか次元の法則系に詳しいのって、やっぱりミキラだよね?」
指名されたミキラカーデは、小さな声で「フッ……」と不敵に笑い、銀縁メガネをクイッと上げた。
「……さすがは僕のリリィーナ。目の
付け所が素晴らしいですね。ふむ……
この世界の理と、僕たちの世界の魔力が拒絶反応を起こした因果律のバグです。治す方法は簡単です。僕の魔力を、あなたの体内に直接流し込めばいい。……ですが、魔力を流し込むには『濃厚な接触』が必要です。具体的には……僕がこの作者(女)の額に、口づけ(キス)をする必要があります」
「早くしろよ。キスで戻るなら、そしたらリリィーナを連れて早く元の世界に戻ろうぜ」
オフィカールは「早くしろ」と言わんばかりにミキラカーデの背中を小突き
これ以上は見ていられないとばかりにぷいっと顔を背けた。
(ちっ、キスの一つや二つ、作者も女として生きてりゃ経験くらいあんだろ。何をそんなにためらってやがるんだ。
……いや、深く考えるのはやめよう。
仮にも別の女に口づけするなんて
リリィーナに申し訳ねえし、俺のプライドが許さねえ……)
(オフィカール様、優しいけど心の声で私のプライベートを勝手に憶測するの
やめて!? あと別の女って言うな!)
私が心の中で涙を流していると、今度はミディティがクスクスと意地の悪い笑みを浮かべて、小さな声で煽りを入れた。
「ふーん、キスひとつだけで治るんだぁ。ふふふっ、でも弱そうな作者さんは、ミキラのキスに耐えられるのかな? カルトじゃあないから大丈夫か」
(ミキラのキスって見たことないけど、カルトお兄様よりは絶対に威力が弱いんだろうなぁ。カルトお兄様がリリィーナちゃんを骨まで溶かしそうにしてるあの凄まじいディープなやつ、僕ら全員知ってるしねー。いくら神様相手の治療とはいえ、別の女の人にあんなの見せつけられたら、僕がリリィーナちゃんを連れて帰っちゃうもんね)
(ミディティ様、サラッと全員がカルトナージュのキスの威力を知ってる前提で話すのやめて!? &やっぱり嫉妬の炎が凄まじい!)
思わぬ身内の暴露に私が脳内で大混乱していると、当のカルトナージュが
冷徹な美貌に傲慢な笑みを浮かべて身を乗り出してきた。
「ふーん、キスね? 僕はキスが得意だから、僕がやった方が早いんじゃないのかな? まあ、リリィーナの人形
(ぬいぐるみ)だとでも思えば、容易いことさ」
(ハッ、ミキラごときの微弱な魔力注入など時間の無駄だ。僕のキスの威力がどれほど破壊的か、ここにいる全員が一番よく知っているだろう。作者の手が進まない限り、僕たちの『リリィーナとの
幸せな結末』は
やって来ないんだし、ここは僕が犠牲になるのも仕方ないよね。……
リリィーナ、これはあくまで因果律の修正だ。僕の心が君だけのものなのは
君が一番よく分かっているだろう?)
まさかのカルトナージュは、ミキラカーデが嫌がるのを聞いて「なら実績のある僕がやった方が早い」と、リリィーナへの強烈な言い訳(心の声)を抱えながら、謎のキスの自信を発揮し始めたのだ。
「カルトナージュ、あなた正気ですか!? 僕の専門領域に手を出さないでいただきたい。それにリリィーナ、聞いてください、彼は今『人形だと思えば容易い』などと不敬なことをのたまいましたよ! 治療とはいえ、僕だって別の女性に口づけする描写など、我が愛の歴史に
残したくはありません。あなたの
あの……破壊的なキスと同列に語られたくもない!」
ミキラカーデが青筋を立てて激しいヒソヒソ声で反論する。ちゃぶ台の上で
最強のイケメン王子二人が、ラグビーのスクラムを組むような至近距離で
「(誰も得をしない)女性作者へのキス権」を醜く押し付け合い始めた。
「(ばぶぅーーー!!!
(誰のでもいいから早くして!! あと
みんなして『別の女』扱いで押し付け合うの、地味に傷つくからやめてもらえる!? 顔が良くてもデリカシーがなさすぎるよぉぉぉ!!))」
私が短い手足をバタバタさせて拒絶と
怒りの悲鳴を上げていると、隣で聞いていたリリィーナの顔が、いよいよ限界を迎えたように引き攣っていった。
(ちょっと待ってみんな……! 狭い部屋でヒソヒソ声で『誰が作者にキスするか』のガチバトルしないでよ! しかも
心の声で言い訳ばっかりして、私のこと好き好き言ってるくせに、いざとなったら私の前で別の女の人にキスする度胸もないわけ? カルトのキスの威力がどうとか、知るかーーー!! 意気地なし、ヘタレ王子たちめ……!)
お上品な仮面の下から、リリィーナの
野生のトゲのある心の声(本音)が容赦なく漏れ出す。
それをダイレクトに受信した四人の王子たちは、グサッ、グサッ、と胸に矢が刺さ気がしたような衝撃を受け、その場にガタガタと崩れ落ちたのだった。
(第90話 おわり)
第90話をお読みいただき、ありがとうございました!最強の王子たち、日本の木造アパートの「壁ドン(隣人)」の破壊力には勝てなかったようです……(笑)。そして、赤ん坊になった作者を前に、リリィーナへの愛と貞操観念の狭間でヒソヒソと醜い押し付け合いを繰り広げるイケメンたち。最終的にリリィーナの野生の本音で全員メンタルを粉砕されてしまいましたが、はたして作者は人間の姿に戻れるのでしょうか!?いよいよ次回から第91話に突入します!【読者のみなさまへのお願い】「王子たちのヘタレっぷりが笑えた!」「リリィーナのツッコミ最高!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページの下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、執筆の凄まじいモチベーションになります!ブックマーク登録もぜひよろしくお願いいたします!




