第87話ラトラの記憶のバグについて
いつもお読みいただきありがとうございます!おかげさまで、ついに(?)第87話までやってまいりました。前回、我が家に逆トリップしてきた二重人格ヒロインのラトラ(お上品品)に、スマホ全削除の危機で脅された作者(赤ん坊)。生き残るために出されたのは、まさかの「手作り卵とじうどん」……!?神様(作者)の胃に限界が訪れる恐怖の修正会議、開幕です!
「ひえええええええ!!! 打ち切りどころか作品消滅の危機(物理)ーーーーーー!!!」
私が短い手足をバタバタさせて涙目で
絶叫する。
しかし、お上品品なラトラは満足そうに「ふふっ」と微笑むだけ。
そのまま私のスマホをちゃぶ台の上に
戻した。人質のスマホは解放された。
だが、私のライフはすでにゼロに近い。
「さあ神様。おいたが過ぎると作品が
『全削除』されてしまいますわよ?
脅すような真似をして申し訳ありませんけれど、私たちも命がけなんですの。
冷めないうちにうどんを召し上がって、早くお話し合いを始めましょう?」
「ば、ばぶぅ……(う、うう……いただきます……)」
私は恐怖で震える赤ん坊の手で、必死に箸を握りしめた。目の前の卵とじうどんからは、出汁のいい香りがふんわりと漂っている。ずずっ、と一口啜ってみる。……悔しいことに、めちゃくちゃ美味い。出汁が五臓六腑に染み渡る。
「お口に合いましたようで何よりですわ。……さて、うどんの手際でお気づきのように、本題はここからですわ」
ラトラは私の向かい側に優雅に正座した。そして、先ほどのプロット(設定資料)を美しく長い指先でパサリと開く。その瞬間、彼女の瞳がスッと冷徹な
『最強魔法使い』のそれに変わった。
「私がこの世界(日本)の記憶を持っていることについて、神様、貴方は『設定していない』と仰いましたわね?」
「ばう、な、ななう!(私そんな設定してないよ!誰かがそんな設定入れたのよ!……もしかしてほんつの神様?がバクらせたの?)」
作者のバブ言葉でどこまで伝わっているかは分からない。だが、私は必死に短い手を振った。
そうなのだ。作者である私の力では
もうこの小説の世界を変えることなんてできない。私は今まで、よく言えば
『斜め上の想像力』、悪く言えば行き当たりばったりの展開でなんとか執筆を続け、アクセス数を稼いできた。
だけど、作者である私すら知らない設定を勝手に追加し、世界を改変するなんて。
ーー私を超えるのは、本物の『神』の
ような高次元の存在しかいないと思ったのだ。
私の必死の訴えを聞いた瞬間だった。
彼女の顔つきがガラリと変わり、口調が荒々しくなった。主人格の、野生リリィーナが表に出てきたのだ。
「ねぇ作者さん!! ! 嘘つかないでよ!じゃあなんで私のの頭の中に
この『めんつゆ』が美味いとか、コンビニのチキンが食いたいとか、そんな日本の知識が最初から詰まってるのよ!」
「ば、ばぶぅ!?(リ、リリィーナ!? 本当に設定してないんだってば!)」
リリィーナはちゃぶ台に身を乗り出し、私のプロットをガシガシと揺らした。
「それだけじゃないわ! わたしらの頭に、これからあの4人のストーカー王子どもが仕掛けてくる予定の『原作イベント』の記憶まで全部入ってるの! 次の
展開で、第一王子のカルトが裏庭で
私をを壁ドンする予定になってるの!」
ゲホッ!!! 私は激しくうどんを
むせた。まさに、私がこれから書こうと脳内でプロットを練っていた通りの展開だ。
なぜそれを彼女が知っている!?
スッとリリィーナの目がまた、お上品なラトラへと戻る。
「……やはり、図星のようですわね。
ですが神様。私の記憶にある
『プロット』には、貴方が書いていないはずの“
奇妙な一文”が、赤字で書き加えられているのですわ」
「ばぶ?(赤字……?)」
ラトラはプロットの余白を指でなぞる。どこまでも優雅に、しかし冷徹な声で
その『見えない赤字』を読み上げた。
「ーー『※なお、卒業式当日、4人の王子はリリィーナを巡って国家規模の戦争を起こし、世界は滅亡する』……と。
神様、貴方、このような悪趣味な結末を設定いたしましたの?」
「ば、ばぶ、ばぶぶぶぅーーー!!
(設定してない! 私が目指してるのは
普通の逆ハーレムハッピーエンドだよぉぉぉ!!)」
私がちゃぶ台を叩いて全力で否定した、その瞬間だった。
ジリリリリリリリリッ!!!!
静まり返ったワンルームに、突如として私の
スマホが爆音で鳴り響いた。画面を見ると、ディスプレイがバチバチと緑色の
怪しい光を放ち、文字が激しく明滅している。
【警告:未設定の神格アカウントが同期しています】
「……あら? お上品な会議の邪魔をする、不届き者はどなたかしら?」
ラトラの張った氷の結晶のスマホにひびが入り王子たちが暴走が再開されようとしていた。
ラトラが不機嫌そうにスマホを覗き込んだ瞬間。スピーカーからノイズ混じりの、しかしハッキリとした『男の声』が、直接私たちの脳内に響き渡った。
『ーーやっと見つけた。そこにいるんだね、僕のラトラ。……いや、リリィーナ』
(……え!? この低くて冷徹な声、王子のカルト!?)
『そんな狭くて汚い異世界に隠れても無駄だよ。……僕たちを弄んだ“偽物の神
(作者)”ごと、今から4人で迎えに行くからね……?』スマホの画面から
どろりとした黒い魔力の霧が溢れ出し、ポタポタと畳の上に滴り落ちる。
さらに、第2、第3、第4王子の声までが、重なり合うようにスマホから響き始めた。
「「「リリィーナちゃん逃げないてよぉ。逃げて捕まえるからぁ…!!」」」
「王子達現実世界に
まで追いかけないでよ!
ストーカーの次元突破とか、いくらなんでも設定が歪みすぎだよ!!」
野生リリィーナが顔を出し、引きつった声でスマホに向かって絶叫する。
異世界にいるはずの王子たちの執着が、ついに『現実世界のワンルーム』にまで届こうとしているのだ。
しかも、王子たちは自分たちを操っていた「作者」の存在にすら気づいている
気配がある。
(いや、これ本当に私の設定じゃない! 完全にバグが暴走してるーー!!)
「神様!! 贅沢は言いませんわ! 今すぐこの殿方たちの『次元突破ストーカー
設定』だけでも消去してくださいましーー!!」
再びお上品品なラトラに戻った彼女が、悲鳴を上げながら私の短い手を握りしめる。
「ば、ばぶぶぶぅーーー!!
(消したくても、パソコンのキーボードが恐怖で叩けないよぉぉぉ!!)」
迫り来る王子たちの重すぎる愛
(物理)。本物の神の悪戯に巻き込まれた神様(赤ん坊)と、二重人格の最強ヒロイン。2人はただ、ちゃぶ台の陰で互いに抱き合って絶叫するしかなかった。(第87話 おわり)
第87話をお読みいただきありがとうございました!おてんば人格のリリィーナにも責め立てられ、さらに作者も知らない「世界滅亡ルート」の赤字プロット、そしてまさかの執筆補助AIの暴走……。あげくの果てには、スマホから王子たちのストーカーボイス(物理)がリアルに響き渡るという、作者のワンルーム史上最大の絶体絶命ピンチとなってしまいました。キーボードすら恐怖で叩けないばぶ神様と、二重人格の最強ヒロインは、果たしてこの次元突破ストーカー王子たちを躱すことができるのか!?「ばぶ神様がんばれ!」「卵とじうどん美味しそう」と思ってくださった方は、ぜひ画面下部からブックマーク登録や、評価の【☆☆☆☆☆】をポチッと(★★★★★に)していただけると、恐怖で震える作者のキーボードが光速で動くようになります!次回、
第88話もお楽しみに!




