第83話『スマホがストーカーでリチウム爆発寸前です!』
いつもお読みいただきありがとうございます!前回、まさかの「呪いの魔道具」と化したスマホ(爆熱)がポケットから出現し、大ピンチに陥ったリリィーナ。今回はいよいよ、幼児化した神様(作者)のナビゲーションのもと、現代日本の夜の住宅街を大爆走します!異世界の電波(?)をジャックして叫ぶ王子たちの狂気と、ショート寸前のリチウムイオンバッテリーの限界バトルをどうぞお楽しみください!
「ひゃあああーーーっ!! スマホが爆熱ストーカーになってるゥゥゥ!!」
夜の静まり返った住宅街に、リリィーナの悲鳴が木霊した。彼女の手の中で
画面がバキバキに割れたスマートフォンが、およそ電子機器とは思えないほどの異常な熱を放ち始めていた。
リチウムイオンバッテリーが物理的な限界を迎え、文字通りショート寸前の熱さだ。あまりの熱さに耐えかねて、リリィーナはついにスマホを地面へと投げ捨てようとした。
だが、その瞬間。バキバキの画面が禍々しい紫色の光を放ち、スマホを中心に、現代日本の物理法則を無視した不穏な魔力がブワッと渦巻き始めたのだ。
「な、ななうっ!?」(ちょっと待って!? スマホの電波と王子のカルト魔力が混線して、時空の歪みが発生しそうになってるんだけどーーー!?)
幼児化している作者(神)の脳内に
最悪のシステムエラーの警告が鳴り響いた。
しかし、パニックに陥ったリリィーナの行動は、作者の予想の斜め上をいっていた。
「こうなったら……これよ!」リリィーナは、先ほど引っ張り出したばかりの、作者の使い古された革財布をガバッと開いた。中から出てきたのは、プラスチック製の硬いカード。
作者の冴えない顔写真と、謎の文字列が細かく書かれた『運転免許証』である。「この世界の身分証ね! 異世界だろうと、こういう重要書類には本拠地の場所が魔法で刻印されているものよ!
ええと、トウキョウト……ネリマク……?」
(読めるんかい! いや、異世界翻訳魔法がこんなところで無駄に仕事すんなし!! あとそれ魔法の刻印じゃなくてただの機械印刷だから!!)
「よし、この場所を目指せば神様の神殿(家)があるのね! 待ってて神様、今すぐ連れて行ってあげるわ!」
リリィーナは完全に気合十分で走り出そうとしたが、現代日本の複雑に入り組んだ住宅街の住所など、スライムの脳みそ並みに方向感覚のない彼女に理解できるはずもなかった。
何を思ったか、完全に目的地とは逆方向の、街灯もない暗い行き止まりへ向かって全力疾走しようとするリリィーナ。
「なな、うーーー!! あうあうあう!!」(そっちじゃない!! そっちは行き止まりのドブ川よ! 右! 右の街灯がある細い路地を曲がってぇぇぇ!!)
さすがにリリィーナだけでは、今夜中に家に辿り着くことすら不可能だ。小脇に抱えられた作者バブは、短い人差し指を必死に右へと突き出し、ちぎれんばかりに手を振って進路を指示した。
「えっ? なになに神様? あっちに行けってこと?」
「ななう!」(そう! そっち!!)
「わかったわ! 神様の神託の通りに進むわね!」
こうして、夜の住宅街を舞台にした、前代未聞の爆走劇が始まった。
作者バブが「ななあう!」(左!)と叫べば、リリィーナが異世界の騎士顔負けの脚力で超スピードの直角左折を決め、「ななうーー!」(ストップ!)と言えばアスファルトに靴底を擦り付け
キィィィッと白煙を上げながら急停止
する。
リリィーナの手さばきに合わせ、小脇の作者はG(重力)に振り回されて目を回しそうになっていた。
しかし、まさに作者の家へと向かってデッドヒートを繰り広げている、その時だった。
ポケットの中のスマホの熱が、さらにドンッと一段階跳ね上がった。あまりの熱さに、ついにバキバキの画面の隙間から「シューーー」と不穏な白い煙が吹き出し始める。
現代日本の物理法則(リチウム爆発)と、異世界の呪いの魔力が、最悪の形でコラボレーションしようとしていた。
それと同時に、雑音だらけのスピーカーから、ついに王子たちの声が、大音量で街中に響き渡った。
『リリィーナ、今すぐそこに行くから……大人しく待っててね……』
一番に聞こえたのは、あのカルト王子のゾッとするほど甘く、そして歪んだ重い声。
だが、聞こえるのは彼の声だけではなかった。凄まじい画ノイズと音声ノイズの向こうから、他の王子たちの叫び声も次々と重なっていく。
『野生リリィーナー! 待ってろよ! ここの術とかいうやつを解いたら、すぐ向かうからな!』
『リリィーナちゃん! 僕が行くまで
変な虫がつかないように大人しくいい子にしててねぇ!!』
『ふむ……このシステムは意外と難しいですねぇ。我々の国にはない文字コードで、少々苦戦してますぅね……』
オフィカール、ミディティ、ミキラ。
四人の王子たちが総出で声を張り上げ、電波をジャックして叫んでいる。
しかし、異世界と現代日本の接続が不安定なせいか、激しいノイズで言葉が上手く伝わらず、ぶつぶつと音声が途切れ始める。文字化けした画面は激しく明滅し、まるで怪奇現象のようだ。
(ひええええ! あいつら向こうの世界の魔術でスマホのシステムを逆ハッキングして、こっちの世界に実体降臨しようとしてるの!? 文字化けに苦戦して足止めされてる隙に早く逃げなきゃ、日本が
カルト王子たちに滅ぼされるーーー!!)
「もう、うるさーーーーいっ!! みんなして一気に脳内に語りかけてこないでよ!! 心の声だけでもうるさいのに
機械ごときでストーキングしてんじゃないわよ!!」
リリィーナは怒声を上げながら、作者バブの指差す先へと、地面を蹴り割るほどの勢いで最後の猛スパートをかけた。
「あそこね、神様!?」
見えてきたのは、築四十年の年季が入った、今にも崩れそうな木造アパート。
リリィーナは階段を一段飛ばしどころか一気に飛び越えて二階へと駆け上がり、作者のナビに従ってポケットから掴み出した鍵を鍵穴に突っ込んだ。
ガチャリとドアを開けると、滑り込むようにして室内に飛び込む。
バタンッ!!!ドアを閉め、チェーンをかけ、ようやく我が家(家賃四万五千円のセーフハウス)へと逃げ延びた二人。
しかし、一息つく間もなく、手の中の
スマホが「ピーーーーーー!」と聞いたこともない高音の警告音を上げ、禍々しい紫色の魔力光を限界まで膨らませ始めた。
白い煙は黒い火花へと変わり、部屋の空気が一気に歪んでいく。
王子たちの「執念」が、ついにこの狭いワンルームで大爆発を起こそうとしているのだ。
(待って! 私の部屋でリチウム魔力爆弾が炸裂したら、今月の原稿とプロットもろとも部屋が消し飛ぶーーー!!)
この絶体絶命のピンチに、リリィーナの中に眠る「あの人格」が、ついに現代
日本で目覚めようとしていた――。
(第83話 おわり)
第83話をお読みいただき、ありがとうございました!なんとか神様(作者)のボロアパートへ滑り込んだリリィーナでしたが、カルト王子たちの執念の魔力とスマホのリチウムバッテリーが合体し、部屋ごと消し飛びそうな大ピンチに……!ついに現代日本で、あの人格が目覚める予感です。面白いと思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク登録】や下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると、執筆のめちゃくちゃ励みになります!次回、第84話はついに現代日本での「最初の人格覚醒編」に突入します!どうぞお楽しみに!




