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第82話「赤ちゃん(神)の取扱説明書」

いつもお読みいただきありがとうございます!前回、無銭飲食(着逃げ)、作者のバブみ幼児化、そしてスマホから鳴り響く王子のストーカー音声という、文字通りの「地獄のトリプルコンボ」で終わった第81話。大変お待たせいたしました、第82話です。ヒロインのリリィーナちゃん、ついに現代日本で本格的にやらかします。神様(作者)の必死のバブバブ訴えは、果たして届くのか――!?それでは、どうぞ!

「な、ななうーー! ななあうあう!」


(待ってリリィーナちゃん! お金払ってぇ! 私のズボンのポケットにお財布入ってるから! そこから勝手に取っていいからぁぁ! このままじゃ私の愛したヒロインが警察に捕まっちゃう、前科一犯になっちゃうのぉぉぉ!!)


ぶかぶかの服に埋もれた赤ちゃん(神)は、短い両手を激しくバタつかせながら、ちぎれんばかりに首を振って必死の抗議の声を上げていた。


しかし、その必死の訴えも、現代の肉体(生後数ヶ月レベル)を通したフィルターによって、すべて可愛い幼児語へと

強制変換されてしまう。


「ああっ、もう、わかったから! 静かにして神様! 今ちょっと、絶賛逃走中だから!」


リリィーナは小脇に作者をがっしりと抱え直すと、異世界の騎士もびっくりの脚力でアスファルトの道路を爆走していた。


振り返れば、先ほどまでいたお洋服屋さんが、みるみるうちに遠ざかっていく。


「なな、うー! あうあうあ!」


(違う、そっちじゃない! 逃げちゃダメなの! 泥棒よ、それじゃただの着逃げ泥棒になっちゃうのよーー!)


「えっ、なになに? お腹空いたの? それともおむつ?……って、今はそんなこと言ってる場合じゃないのよ!」


当然、リリィーナに作者のメタ的な絶叫が届くはずもない。リリィーナの脳内は、今や完全にパニック状態だった。


異世界から見知らぬ天井(現代日本)に飛ばされ、服はボロボロ、お金の価値もわからない。


おまけに頼みの綱だった創造神は、なぜか言葉の通じないバブみの塊へと幼児化してしまっている。


「とにかく、警察っていうこの世界の治安維持組織(騎士団)に捕まるわけにはいかないの! 異世界人だってバレたら、きっと国営の研究所とかに送られて

毎日怪しいお薬を飲まされて解剖されるに決まってるわ……っ!」


(されないから! 日本の警察はそんなディストピアなことしないから!! むしろ無銭飲食で今すぐ捕まった方が、身元の安全が保証されるからーー!)


作者は心の中で血の涙を流しながらツッコミを入れたが、リリィーナの脚力は

容赦なくギネス記録級のスピードを叩き出し、どんどん店から遠ざかっていく。


街並みが住宅街へと変わり、細い路地へと滑り込んだところで、リリィーナは

「はぁ、はぁ……」と荒い息を吐きながら足を止めた。


「……ん? なにか硬いものが当たってる……?」


リリィーナは、小脇に抱えた作者の

大人のサイズのままのズボンに目が留まった。ポケットのあたりが、不自然に

四角く膨らんでいる。


「ななうっ!」


(そう! それ! お財布! そこに諭吉が入ってるから! 今からでも遅くないから、お店に投げ込んできて!!)


作者は「気付いた!」とばかりに目を輝かせ、短い手をそのポケットへと伸ばした。


だが、リリィーナがそのポケットから

引っ張り出したのは――。


『リリィーナ……リリィーナ……。どこだ……。私の声が聞こえないのか……?』「ひゃあああーーーっ!! スマホが爆熱ストーカーになってるぅぅぅ!!」


出てきたのは、画面がバキバキに割れ、もはやスマホの形をした

「呪いの魔道具」と化した機械だった。


ポケットの中でカルト王子たちの執念の音声ストーキングが続き、リチウムイオンバッテリーが物理的に限界を迎えて熱

を発している。ショート寸前の熱さだ。


「ななうううー!」


(それじゃない! それは今すぐドブに捨てて!! その奥! その奥にある革のやつ!!)


「わ、わかったわ神様! これね! これがこの世界の、警察を撃退する魔道具なのね!?」


リリィーナは、スマホのさらに奥に入っていた、作者の使い古された革の二つ折り財布を引っ張り出した。


「な、なう!」


(そう! お財布! それを持ってお店に――)


「よし、これで警察(騎士団)が来ても、この中にギル(お金)か身分証が入っていれば、異世界人だとバレずに穏便に示談にできるはず……! 神様、グッジョブよ!」


(違う、解釈が微妙に惜しいけど全然違う!! それで示談にするんじゃなくて、今すぐ店にお金を払いに行ってぇぇー!!)


リリィーナは、財布をしっかりと握り締めると、再び前を向いた。


「スマホのストーカー魔力が爆発する前に、なんとか神様のお家を見つけなきゃ……! 行くわよ、神様!」


「な、ななうううあうあうーーー!!

(絶望)」


作者の必死の悲鳴を「神様からの応援」と受け止めたリリィーナは、再び夜の

住宅街へと力強く駆け出していくのだった。こうして、犯罪(着逃げ)の既成事実だけが、どんどん積み重なっていく

――。

(第82話 おわり)

第82話をお読みいただきありがとうございました!無銭飲食に続き、着逃げ泥棒(確信犯)の容疑までかかってしまったリリィーナちゃん。完全に異世界の野生の勘(騎士団から逃げるムーブ)で動いています。作者さんの「私の愛したヒロインに前科をつけないで!」という涙ぐましい訴えも、ただの可愛い幼児語(ななうー)に変換される絶望感……。そして、ポケットの中のスマホがいよいよ物理的に熱くなってきました。爆熱ストーカー、怖すぎます。次回、第83話。はたしてリリィーナは財布の中身から作者の家にたどり着けるのか?それとも、限界を迎えたスマホからついに「あのストーカー王子」の手がニュッと出てきてしまうのか!?面白いと思ってくださったら、ぜひブックマークや評価の星(★★★★★)で応援していただけると、作者の幼児化がちょっとだけ解けるかもしれません!笑次回もどうぞお楽しみに!

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