第80話「作者(神様)への直訴」
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!おかげさまで、ついに本作も第80話を迎えることができました!ここまで連載を続けられたのも、いつも温かい応援やブクマ、評価をくださる読者の皆様のおかげです。そんな記念すべき80話ですが……前回のラスト、大変なことになってしまいました。リリィーナの叫び(直訴)が、まさかの形で届いてしまいます。物語がとんでもない方向に転がり始める第80話、ぜひお楽しみください!
人々が行き交う、平日の昼下がりの
街中。その賑やかな雑踏の中で、たった
1つの場所だけ、まるで時が止まったかのような奇妙な空間が出来上がっていた。
「えっ、ええっ……!? ほ、ほんとにリリィーナちゃんなの!? 髪の色もちゃんと小説通りの綺麗な黄色になってるし、スタイルも抜群……! もしかして、今
書いてる内容に文句があって、画面から出てきちゃったの!?」
目の前に座り込んでいる私を見て、驚きを隠せない様子でジロジロと観察してくるメガネをかけた人物。
その手元にある四角く光る板――スマホには、さっきまで私がいた世界の描写がテキストで映し出されている。間違いない。
この人が、私の運命をあちこち振り回してくれている【作者(神様)】だ。
「……あなたが、この物語を作っている作者さんなの!? あの4人の王子が全員夫になるって、一体どういうことよ! ……って、その前にここ、うるさいっ! いろんな音が鳴り響きすぎて、耳が死んじゃうわ!」
目の前の作者に「全員が夫になる設定」への文句を今すぐぶちまけたい私だったけれど、それ以上に、街中に溢れる現代社会の騒音がうるさすぎて、それどころではなかった。
野生の人格を持つ私の鋭すぎる耳には、この世界の車が立てる轟音や雑音は
あまりにも刺激が強すぎたのだ。
そんな私たちの様子を、通り過ぎる人々が不審そうにチラチラと見ていく。
「何あの子、制服のデザインが全然違うわよ。どこかのアニメのコスプレかしら……。それにしても、お人形さんみたいに可愛いわね」
「あの子、しゃがみ込んで耳を押さえてるけど、体調でも悪いのかしら。早く
誰か救急車さんでも呼べばいいのに……」
(ち、ちがうの! 私はただの不審者じゃなくて異世界人であって、急にここに
神隠しみたいに飛んで来ちゃっただけなの! だからそんな哀れな目で見ないでぇぇぇ!)
リリィーナは心の中で必死に呟いたけれど、どうしようもないこの状況に
ただただイライラが募っていく。
上品な私が暴れ出しそうなのを必死に
耐えていると、目の前でオロオロしていた作者が、周囲の視線に気づいて慌てて提案してきた。
「た、確かにここじゃ目立ちすぎちゃうよね……! ひとまず私の家に来る?
リリィーナちゃん、そこでじっくり話し合おう! ここから歩いてすぐだから!」
作者は今置かれている気まずい状況を
脱出するため、自分の家に私を招き入れようとしてくれたのだ。
「いいんですか……!? 作者さんの家に行けるなんて、なんだか夢みたいです。……あ、でもその前に、この異世界全開のひらひらしたドレスをどうにかした方がいいですよね?」
あまりの急展開にパニックになったせいか、いつの間にかリリィーナの口調は、野生のタメ口ではなくお上品な敬語に戻っていた。
「そ、そうだね……! すぐ近くにファストファッションのいい服屋さんがあるから、そっちに寄って着替えよう。お金は私が払うから大丈夫、経費で落とせるか分からないけど!」
そんな会話をしながら、二人が歩き始めた、まさにその時。リリィーナが突然消えてしまった異世界では、残された4人の王子たちが大慌てで行方を探していた。
だが、今まさに作者の手が止まり
スマホの執筆が完全に中断されているせいで――世界の形そのものが、不穏に歪み始めていたのだった。
◇◇◇その頃、現実世界の服屋さんに
連れてこられたリリィーナは、初めて見る「現代の衣服」に目を丸くしていた。
「な、何ですかこの『ぱんつ』という動きやすそうなズボンは! 異世界の聖騎士様でもこんな機能的な衣服は穿いていませんわ! しかもこの『ぱーかー』という服、頭に袋がついていて
野生の私が隠れるのに最高です!」
「気に入ってもらえてよかったよ……。じゃあ、ひとまずそれ試着室で着替えてみて!」
作者に言われるがまま、カーテンで仕切られた試着室に入り、慣れない手つきで現代のカジュアル服に着替えていく。
姿見の鏡に映った自分は、まるで別人のようで少し新鮮だった。
(リリィーナの心の声:ふふっ、野生的な私にも意外とこういう服、似合うじゃない。でも……なんだろう。さっきから、なんだか背筋がゾクゾクするのよね。まるでもの凄く不吉な予感がするというか……)
気のせいかしら、と首を傾げた瞬間
だった。試着室の壁が、ピキッとガラスのようにひび割れるような幻覚が見えた。
「――えっ?」
驚いて目をこすったが、壁は何ともない。しかし、私の「野生の勘」が
今までにない最大級の警報を脳内で鳴らし始めていた。
◇◇◇同じ瞬間、主を失った異世界――。カルト、ミディ
ミキラ、オフィカールの4人は、リリィーナが消え去った深夜の廊下に立ち尽くしていた。
いや、すでにそこは「廊下」ではなかった。作者の執筆が止まったことにより、世界を構築するプログラムがバグを
起こし、壁や床の境界線がドロドロと溶け始めていたのだ。
天井からは、本来なら読者にしか見えないはずの【文字の羅列】が、鎖のように何条も垂れ下がっている。
「おい、この文字は何だ……!? 触ると、リリィーナの魔力の残滓が感じられるぞ!」
オフィカールが虚空に向かって吠え
空間に浮かぶ「リリィーナちゃん
僕が手を引いて」という文字を掴み取ろうとした。
「……やはりそうですか。カルトナージこれはこの世界の上位存在――いわば
『記述者』が残したデータの痕跡です」
ミキラが歪む眼鏡のブリッジを押し上げながら、冷徹な目で文字の配列を解析し始める。
その瞳には、狂気的な執着の光が宿っていた。
「彼女はこの世界のバグを利用し、記述者のいる『外側の世界』へ逃げ込んだ。ならば、この文字のリンクを逆ハッキングすれば……」
「そんなの簡単だよ。僕たちの愛の力
(魔力)をこの文字に叩き込めば、次元の壁なんて簡単に壊せるでしょ?」
ミディがいつものあざとい笑みを完全に消し去り、底なしの独占欲を剥き出しにして、手元の文字に暗黒の魔力を流し込む。
「待っていろ、リリィーナ……」
カルトナージュが、世界の崩壊をものともせず、文字の鎖を力任せに掴み取った。
彼の心の声が、現実世界にまで届きそうなほどの音量で響き渡る。
(カルトの心の声:僕を置いてどこへ行く。誰の元へ行った。神だろうが何だろうが関係ない。僕のすべてを狂わせた君を、地の果てまで追いかけて、今度こそ僕だけのものにしてやる――!)
4人の王子たちの凄まじい執着心が1つになった瞬間、バグった文字の鎖が激しく発光し、現実世界の「ある端末」へと繋がる回路を無理やりこじ開けた。
◇◇◇「お待たせしました、作者さん! 意外とこの服、着心地が良いですわ!」
試着室のカーテンを開けて、パーカーとデニム姿になったリリィーナが笑顔で
飛び出してきた。
「おお! 現代っ子っぽくてめちゃくちゃ可愛い!」作者がパチパチと拍手をして、手元のスマホをポケットにしまおうとした、その時だった。ピシッ、ピキキキキッ!!」
「うわあああ!? な、何これ、スマホが急に熱くなって、画面にヒビが……!?」
作者の悲鳴とともに、ポケットの中の
スマホの画面がバリバリに割れ、そこから異世界の禍々しい魔力の光が溢れ出した。
スピーカーからは、ノイズに混じって
「リリィーナァァァ!!」というオフィカールの怒号や、カルトたちの執着に満ちた心の声がリアルな音量で漏れ聞こえてくる。
「ひ、ひえええええ!? なんか元の世界から、ものすっごく重くて暗いストーカー並みの執念が迫ってきてるんだけどぉぉぉ!!」
現代服に身を包んだリリィーナは、自分の引き起こしたメタ展開のヤバさに顔を真っ赤にしながら、頭を抱えて叫んだ。
「助けて神様! あなたが変な逆ハーレム設定にするから、王子たちが次元を越えて私を捕まえにきちゃうよぉぉぉ!!」
「そんなこと言われても、私だってこんなホラー展開プロットに書いてないよぉぉぉ!!」
文字通り「次元の壁」が壊れかけるお洋服屋さんの真ん中で、主人公と作者は、迫りくるイケメンたちの執念にガタガタと震え上がるのだった。
(第80話 終わり)
第80話をお読みいただき、ありがとうございました!……はい、大変お待たせいたしました(?)ついに作者(神様)、リアルに登場です!!リリィーナちゃんのあまりの怒りとメタ発言のパワー(笑)により、まさかの現実世界へトリップしてしまいました。現代の服を着こなすリリィーナちゃん、挿絵でお見せしたいくらい可愛いです。しかし、お洋服を選んでほのぼのしている場合ではありませんでした……。置いてけぼりにされた王子たちの執念が、まさかの次元の壁(スマホ画面)を物理的に破壊しにかかっています。カルト王子の心の声、現実世界にまで漏れ聞こえてきて完全にホラーですね。果たしてリリィーナと作者の運命は!?スマホが爆発する前に、二人は無事に逃げ切れるのでしょうか?「作者出てくるの面白すぎる!」「王子たちの執着が次元超えてて草」など、皆様の感想をぜひお聞かせいただけると嬉しいです!面白いと思っていただけたら、ぜひブックマークや下の方にある【☆☆☆☆☆】での評価で応援よろしくお願いします!励みになります!次回、第81話もお楽しみに!




