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第70話 その唇で僕を止めて

こんにちは!お待たせいたしました、第70話をお届けします。サブタイトルからお察しの方もいるかもしれませんが、今回はリリィーナがめちゃくちゃ頑張る回です。いつもは攻め気味なカルトナージュの、最高に可愛い(?)心の声にご注目ください!

一番奥から地響きと共に現れたのは、

禍々しいオーラを纏ったS級魔物

だった。


「グァァァッツ!!!!グァァァクァ」 鼓膜を震わせる咆哮。 その化け物は、周囲にいた味方であるはずの弱い魔物たちを容赦なく掴み、貪り喰らい始めた。 他者の魔力を取り込み、その身をさらに巨大に、凶悪に底上げしていく。


 完全にエネルギーが満ちた瞬間、S級魔物は弾かれたようにカルトナージュへと突進し、太い腕をぶんっと力任せに振り回した。


 ごう、と凄まじい風圧が巻き起こり、周囲の瓦礫や巻き込まれた弱い魔物たちが木の葉のように吹き飛んでいく。


 凄まじい威力だ。まともに喰らえば、いくらカルトナージュでも──。


「やっと僕を楽しませる魔物が出てきたね〜、簡単には倒れないでね?」 


それなのに、カルトナージュは狂気に満ちた笑みを崩さない。 

にっこりと微笑むと、さらにスピードを上げて魔物の背後へと回り込んだ。 

だが、S級魔物の野生の勘も鋭かった。


 カルトナージュの接近を察知し、その巨躯が獰猛に反転する。


「カルト、危ねぇ!!」


「カルトナージュっ!?」 


オフィとミディの悲鳴が重なる。 

S級魔物の容赦ない一撃が、避ける間もなくカルトナージュの身体を捉え

──鈍い音が響いた。


(リリィーナの心の声:嘘、カルトが喰らった……!? 

あんなボロボロの身体で今のをモロに

受けたら本当に死んじゃうって!!) 


血の気が引く私。しかし、それは杞憂だった。 カルトナージュの身体が衝撃でブレたかと思った瞬間、その姿は陽炎のように掻き消える。 ──残像だ。 


カルトナージュはわざと直撃したように見せかけて相手の目を欺き、さっきよりも完全に気配を消して、すでに魔物の真後ろへと音もなく回り込んでいたのだ。


 その手には、高密度に圧縮された禍々しい黒い魔法が収束している。


(カルトナージュの心の声:ふふ、引っかかった。バカな魔物。これで終わりだよ、僕の邪魔をするゴミは全部消えてしまえ──あはははは!!)


(ミキラの心の声:駄目だ、わざと攻撃を喰らうなんて……もう痛覚の麻痺どころか、脳の安全弁が完全に壊れています! あの魔法を放てば、魔物と一緒にカルト自身の肉体も反動で木っ端微塵になりますよ……っ!多分怒った時は

キスで満足するので解決策はキス…?)


(リリィーナの心の声:ミキラの心の声がガチで焦ってるじゃん!! ってことは本当に今止めないとカルトが

死ぬ!!しかも、解決する方法キスななの!?)


私は顔を赤らめてしまったが、そんな暇なくカルトの状態を考えると無理だから

私は助走をつけてカルトの胸に飛び込んだー!


(リリィーナの心の声:私、カルトナージュに飛びついたはいいけど、あんまりこういう事やった事ないからぶっちゃけやり方分かんない! だって私からキスなんかしたこと無いもんさ! いつもカルトナージュからばっかりだったし……っ。だから──これは助けるためなんだからー!) 


そう私は心の中で自分に強く思い込ませ、恥ずかしさを必死に振り切って、

カルトナージュの唇にキスをしようとした。 ──けれど。


「……ッ!!」 


強い力で、私の身体は激しく後ろへと突き飛ばされた。 グラウンドの硬い地面に倒れ込みそうになる私を、オフィが間一髪で背後から抱きとめる。


「リリィーナ!!あっぶねぇもうちょいあとのこと考えろ!」

(野生リリィーナでも無理なのか?

俺は絶対できると信じるぞ!おれが惚れたんだから)


「……あ、危なぁぁい!リリィーナちゃん……!」 

(ミディティ心の声 カルト兄様リリィーナちゃんまで分からなくなっちゃったの?でもこれでライバル減るのもいいけど助けてリリィーナちゃん……)



オフィの胸の中で息を荒くしながら、

私はカルトナージュを見上げた。 

カルトナージュは、私を突き飛ばした

自分の両手を信じられないものを見るように見つめ、小さく震えている。


 けれど、その瞳の奥の闇はまだ消えていない。私のことすら、もう半分認識できていないような、そんな虚ろな目。


「カルトナージュ!! 私の声が聞こえないの!?」 


私はオフィの腕をすり抜け、立ち上がって全力で叫んだ。


「そのまま戦ったら貴方自身が、あなたでいなくなってしまうの!! だから戻ってきてよ……っ! いつもの独占欲丸出しの、優しいカルトナージュに……ッ!!」 


私の悲痛な叫びが、グラウンドに響き渡る。 その瞬間、カルトナージュの身体がビクリと大きく跳ね上がった。


(カルトナージュの心の声:……え? リリィ、ナ……? 僕、今、何を……? リリィーナを、拒絶した……? 

僕の、世界でたった一人の、愛しいリリィーナを……!?) 


カルトナージュの脳裏に、凄まじい衝撃が走る音が聞こえた。 大好きな彼女を傷つけてしまったかもしれないという絶望と、「愛しいリリィーナを誰にも渡したくない」という強烈な執着心が、暴走する魔力と激しく衝突し、彼は頭を押さえてその場に膝をついた。


「が、あ……ッ!!! リリィ、ーナ……っ!!」


(ミキラの心の声:チャンスです! リリィーナさんの言葉で、カルトの精神に一瞬だけ強引な『くさび』が入りました! でも長くは持ちません、今度こそカルトではなくなってしまう……!)


(リリィーナの心の声:今しかない……!! 突き飛ばされたって知るか! 野生の私、もう一発だけ超スピードを貸しなさいよーーーっ!!)


 私は再び地面を強く蹴った。 苦しそうに顔を歪め、今にも完全に闇に呑まれそうなカルトナージュの元へ一直線に飛び込む。 


驚いて顔を上げた彼の頬を、私は両手でしっかりと包み込んで固定した。

もう絶対に逃がさない。


「──んむっ」 


そのまま、勢いよく彼の唇に自分の唇を押し当てた。 カルトナージュは目をぱちぱちさせながら、今起きていることが理解できないようだった。 


でも、ぴったりと重なる唇の温もりが、これが現実なのだと彼に教えてくれる。


「んーっ、ありがとうリリィーナ。僕を助けてくれて。でもそろそろあの魔物を倒さないといけないから、続きは後でね?」


(カルトナージュの心の声:まさかリリィーナからキスされるなんてびっくりしたけど、ぎこちないところも好きだよ。そして──ありがとう)


 私の耳元でそう甘く囁いたカルトナージュの気配が、一瞬で変わる。 


ゆっくりと、彼の瞳に澄んだ綺麗な光が戻ってきた。 暴走していたどす黒い魔力は消え失せ、代わりに圧倒的で、

それでいて洗練された、いつもの彼の最強の魔法陣が背後に幾重にも展開して

いく。 


愛しいリリィーナのキスによって、理性の制御を取り戻したカルトナージュ。 その瞳の光を取り戻した最強の男による、S級魔物への真の反撃が、今始まろうとしていた──。


(オフィカールの心の声:お前ら何自然に『続きは後で』とか約束してんだよ!!絶対邪魔してやるからな!!)


(ミディティの心の声:いいなーいいなー!僕も次ピンチのフリしたら、リリィーナちゃんキスして助けてくれる!?)


(ミキラの心の声:……ひとまずは安心ですね。さあカルト、僕たちのリリィーナちゃんを恐怖させたあの化け物を、

完膚なきまでに片付けてください)


(次回、カルトナージュの最強魔法が炸裂!? お楽しみに!)

うございます!リリィーナの決死の「カルトナージュ!!」という叫びとキス、無事に届いて本当に良かったです……!突き飛ばされた時はどうなることかと思いましたが、カルトナージュの脳内が「愛しいリリィーナ」で埋め尽くされていく瞬間は書いていて最高に楽しかったです。そしてちゃっかりキスを催促しようとしているミディティや、静かに順番を狙っているミキラなど、王子たちのレースもますます激化していきそうです。面白いと思って頂けたら、ページ下部から【評価】や【ブックマーク】をぽちっと押して応援してもらえると本当に嬉しいです!それでは、第71話の無双シーンでお会いしましょう!

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