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第61話:アプローチからの緊急事態

いつも応援ありがとうございます!今回は「アプローチからの緊急事態」をお届けします。前話のラスト、ツルツル床での王子ドミノがリリィーナに直撃する……!と思いきや、まさかのタイミングで学園に鳴り響く「緊急放送」。国を背負う最強の王子4人が、一瞬で戦う男の顔に変わります!……が、その頭の中は相変わらずリリィーナへのアピールのことでいっぱいで……!?今回もどうぞお楽しみください!

正面から迫り来る、王子4人分の超高速人間ドミノ。 このままでは、王子たちに押し潰されて全員で床に激突し、また全員揃ってびしょ濡れになってしまう――。 


私がぎゅっと目を瞑り、衝撃に備えたその瞬間だった。


『――緊急! 緊急! 学園敷地内にA級魔物が出現いたしました! 生徒はただちに防衛魔法が施された安全な場所まで避難してください! 繰り返します、

緊急――』 


魔法スピーカーから、これまで聞いたこともないような緊迫した警告の声が廊下に鳴り響いた。


「「「「えっ……!?」」」」 


その声に驚いた王子たちが一瞬で硬直

する。 ツルツルの床の上でブレーキがかかったのか、ドミノ倒しの勢いは私の目の前数センチというところで奇跡的にピタリと止まり、激突は間一髪で回避された。


 普通なら、この放送を聞いたら真っ先に避難場所へダッシュするところだろう。 だが、さすがは国を背負う最強の王子たち。4人はすぐにガタッと力強く立ち上がると、避難するどころか、完全に「戦いに行く」ような好戦的な顔つきに変わっていた。


「へっ、久しぶりだな、こんな時に魔物が現れるなんて。しかも最高ランクのA級かよ! 骨がありそうで、やる甲斐があるじゃねぇか!」 


オフィカール王子はバキバキと拳を鳴らし、全身からみなぎるような闘気を放っている。 一見すると純粋にバトルを楽しんでいるようだが、彼の頭の中は全く違っていた。


(オフィカール:『よしきた! 野生のリリィーナに、今度こそ俺の男らしいイイ所を見せる大チャンスじゃん! いつも格好悪いところばっかり見せてたからな……! ここでバシッと魔物をブチのめして、俺に惚れさせてやるぜ!』)


 オフィカールがやる気満々で鼻息を荒くする一方で、その隣ではミディティ王子が思いっきり頬を膨らませていた。


「えぇ〜っ、こんな時に魔物ぉ!? せっかくいいところだったのにぃ! 普通はここ、みんなでドミノ倒しになって、

リリィーナちゃんが『もう、あんたたち何やってんのよー!』って怒るところでしょ? これが今回のオチだったのに……!」 


ミディティはせっかくのラブコメイベントを邪魔されたのが、ものすごーーーく気に入らないらしい。彼の言葉を聞いているだけで、「邪魔しやがって!」という怒りがひしひしと伝わってくる。


「もうっ! 魔物なんかささっと片付けちゃお! 許さないんだから!」 ぷんぷんと怒りながら、しかしその目はガチの殺意を孕ませて戦おうとしているミディティ。 


そんな男たちの様子を前に、私の野生の勘が告げていた。

(これ……魔物よりも、お気に入りのオチを邪魔されてキレてるミディティの方がよっぽど凶暴で怖い気がするんだけど……!?) 


そんな中、カルトナージュ王子は服こそ水のせいでびしょ濡れだったけれど、

放送を聞いた瞬間にその場の空気を一変させていた。 


周囲で生徒たちがパニックになりかけたのを見て、彼はちょいちょいと指先で魔法を操り、空間の「焦り」を

「落ち着き」へと塗り替えていく。


「……そっか、今回は強い相手なんだね。でも魔物が多そうだから、被害が出ないうちにささっとやってしまおう。

ミキラ、今の君なら全力でやらないとやられてしまうよ」 


いつもは甘々で独占欲丸出しの彼なのに、今日に限っては冗談抜きのピリピリとした強者のオーラが周囲に伝わって

くる。


(カルトナージュ:『本当はリリィーナにいい所を見せたい場面だけど、今はそんなこと言ってる暇はなさそうだね。放送ではA級魔物って言ってたけど、これ、S級の間違いじゃない? 伝わってくる殺気がピリピリしてて、

おかしいよ』)


 カルトナージュの鋭い指摘に、ミキラカーデ王子がふっと口元を歪めた。


「そうですね。今の私なら全力でやれば簡単に倒せるでしょうが……今回は手こずりそうな気配がぷんぷんしますね。ふむ、ここが『いい所、見せ場』ですね」


 ミキラは不敵に笑いながら前髪をかきあげると、静かに魔力解放の呪文を唱え始める。


(ミキラ:『周囲の気配を感知していますが、思った以上に敵の数が多い。それに何より……一つだけ、異常なまでに魔力が膨れ上がっている個体を感じます。とりあえず、私の『魔力鎖』で動きを止めにいきますか』)


 いつもとは違う、戦う男の顔になった4人の王子たち。彼らは一斉に私を振り返ると、息をぴったり合わせて叫んだ。


「「「「リリィーナは防衛のところで待ってろ! その方が安全だから!!」」」」 


ハモった瞬間、王子たちはそれぞれの武器や魔法を構え、パタパタと凄まじい速度で魔物の出現ポイントへと駆けていってしまった。


「――って、ちょっと待ったぁぁぁーーーっ!!」 


私はその場に立ち止まったまま、小さくなっていく男たちの背中に向かって虚しく絶叫した。 


え、ちょっと待って。あいつら、私を置いていくなんていい度胸じゃん! 

A級だかS級だか知らないけど、私が

暴れる前に全部片付けられちゃったら、日頃のストレス発散ができないじゃないの! 


置いていかれた野生の私がイライラと

足を踏み鳴らす裏で、心の中


(お上品な表の人格)は完全に別の意味で大パニックを起こしていた。


(心の声:『……いやあああーーーーーっ!!! 王子様方、置いていかないでくださいましーーーっ! 4人の王子様たちが揃って戦闘に向かうなんて、そんなの、そんなの絶対に格好いいに決まっていますわ!!! わたくしも間近でその

勇姿を拝見して、キュンキュンときめきたかったですわーーーーーっ!!!』)


 ツルツルの廊下にポツンと取り残された私は、野生の怒りとお上品な欲望を抱えたまま、ただただ呆然と立ち尽くすのだった。 

次回、魔物強襲編開幕! お楽しみに!

第61話をお読みいただきありがとうございました!急激なシリアス展開かと思いきや、オフィカールの下心全開な気合いや、ミディティの「これが今回のオチだったのに!」という怒りなど、王子たちのブレない溺愛っぷりが書いていてとても楽しかったです(笑)そして後半のカルトナージュ王子の強者オーラと、ミキラ王子の冷静な分析、やっぱり戦う王子様たちは格好いいですね!……なのに、最後はリリィーナを置いていってしまうという痛恨のミス。ツルツルの廊下にポツンと取り残されてしまったリリィーナの叫びが切ないです(笑)「ミディティのオチへのこだわりが可愛すぎる!」「カルトナージュ王子のピリピリしたギャップが最高!」「リリィーナ、置いていかれて可哀想だけど笑っちゃう!」と思ってくださった方は、ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】の評価やブックマークで応援していただけると励みになります!次回、置いていかれたリリィーナはどうするのか!? 王子たちの戦いは!?第62話もお楽しみに!

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