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第58話王子たちとリリィーナの掃除

いつもお読みいただきありがとうございます!前話ではリリィーナがまさかの『覚醒』!?……からの、今回はまさかの急展開です。最強の王子たちの、いつもと違うちょっぴり情けない(?)姿をお楽しみください!

 この世の終わりのような絶望から、

数分。 がっくりと床に膝をついていた校長先生が、ようやく正気を取り戻してゆっくりと立ち上がった。


 しかし、その顔はあまりのショックのせいか、まるで漫画のように

【へのへのもへじ】になってしまっている。完全に表情が崩壊していた。


「はぁぁぁ……。ミキラ、オフィ、ミディ、カルト、 そしてリリィーナさん。5人に命令じゃ……!」


 へのへのもへじの顔のまま、校長先生の口から信じられないほど低く、

ドスの利いた迫力ある声が響き渡った。


「この廊下のびしょ濡れと、壁を壊したところを全員で修理しなさい! それが終わるまで、絶対に下校は許しませんからね……!!」 


いつもは温厚な校長先生の、見た目

(へのへのもへじ)に反したあまりの覇気と凄み。 これには、国を揺るがすほどの最強魔法を持つ王子たちも、野生の勘を持つリリィーナも、完全に気圧されてしまった。


「「「「「はい……」」」」」


 5人は一斉にビクッと肩を跳ね上がらせ、蚊の鳴くような声でそう返事をするしかなかった。 こうして、校長先生はフラフラとした足取りで去っていき、現場にはバケツと雑巾、そして建築魔法のスクロール(呪文書)がドサリと残されたのだった。


 静まり返った水びたしの廊下で、5人は顔を見合わせる。

(オフィカール)

『マジかよ……。正座で足がジンジンしてんのに、ここから居残りでお掃除と修理かよ……。おいカルト、てめぇがキスなんかするからこんなことになったんだろ!』)


(ミディティ:『うぅ、僕の手が雑巾がけで荒れちゃうよぉ。でも、リリィーナちゃんと一緒に放課後居残りなんて、

ちょっとドキドキしちゃうシチュエーションかもぉ……!』)


(カルトナージュ:『校長め、余計な

ことを……。でも待って? 居残りってことは、これから誰にも邪魔されずにリリィーナとずっと一緒にいられるってことだよね? リリィーナ、重いバケツは僕が全部持つからね……!』)


(ミキラカーデ:『ふむ、魔法を使わずに自力で壁を直す作業ですか。これもまた人間社会の『連帯責任』という素晴らしいデータですね。リリィーナさん、私とペアになって作業をしませんか?』)


 校長先生に怒られてビビったのも束の間。 王子たちは放課後の

「居残り作業」というシチュエーションに、それぞれの方向性で再び胸を躍らせ、リリィーナへの熱い視線を復活させるのだった――。 


 正式に、校長先生の絶対命令により、魔法禁止の居残り掃除が始まったのであった。 


「う、動けん……。くそっ、足の感覚が

全くねぇ……!」


「あはは……。オフィカールくん、僕もだよぉ。膝から下が、まるで他人のものみたいにジンジンする……」


 先ほどまで1時間も正座をさせられていた王子たちは、生まれたての小鹿のように足をプルプルと震わせ、床にへたり込んだまま一歩も動けない。


国を揺るがす天才魔法使いたちが、正座の痺れという物理攻撃の前に完全無力化していた。 そんな情けない男たちをよそに、一人だけやたらと元気な人物が

いた。


「せーのっ! よいしょー! あぁ気持ちぃ、水が雑巾に吸い取られて床が綺麗になって行くの気持ちいいなっ!」


 リリィーナ(野生)は、お上品なドレスの裾を大胆にたくし上げ、四足歩行の野獣のような恐るべきスピードで廊下を爆走していた。


彼女の通り過ぎた跡だけ、水たまりが綺麗に消え去っていく。

(オフィカール:『は、速ぇ……! なんだあのスピード。雑巾がけってあんな音立ててやるもんだっけか!? でも、

ドレスからチラッと見える足が、健康的でめちゃくちゃそそるな……!』)


(ミディティ:『リリィーナちゃん、

お掃除上手だねぇ……! 楽しそうに汗をかいてる姿も、眩しくて本当に可愛いなぁ。僕も早く足の痺れを治して、隣で

一緒に雑巾がけしたいよぉ……!』)


(カルトナージュ:『ああ、見て、リリィーナが僕たちのためにこんなに一生懸命になってくれている……! 汚い泥水さえも、彼女が触れると聖水のように輝いて見えるよ。リリィーナ、君の

その奉仕の精神、愛さずにはいられ

ない……!』)


(ミキラカーデ:『素晴らしい。魔法を使わない清掃作業において、ここまで効率的な動線を一瞬で見抜くとは。リリィーナさんの身体能力と空間把握能力は、我が国の近衛騎士団をも凌駕するかもしれませんね。実に素晴らしい研究対象だ……!』) 


足がプルプルして役立たずな王子たちは、床に転がったまま、野生全開で輝くリリィーナへと熱い視線を送り続ける。


 しかし、そんな彼らの熱視線を受け止めながら、リリィーナの心の中

(お上品な表の人格)は完全に激怒

していた。

(心の声:『……ちょっと、皆様。お顔がよろしくていらっしゃるのは結構ですが、床に寝そべって私の脚を凝視するなんて、淑女に対する破廉恥が過ぎましてよ!? というか、何突っ立って

(座り込んで)いらっしゃいますの!? 早くそのお重たい腰を上げ、この

汚らしい床を磨きなさいましーーーっ!!!』) 


リリィーナの怒りの「心の声」が、廊下中にこれでもかと響き渡る。 王子たちはその気高き怒声(?)にビクッと身体を震わせながらも、


「怒るリリィーナちゃんもゾクゾクしちゃうねぇ」


「ああっ、もっと罵ってくれ……!」 と、さらに執着の炎を激しく燃え上がらせるのだった。

第58話をお読みいただきありがとうございました!あんなに格好よかった王子たちが、正座の痺れには勝てずにプルプルしている姿、いかがでしたでしょうか?(笑)一方、野生のリリィーナは雑巾がけでも無双モードです!「へのへのもへじ校長先生、お疲れ様!」「足がプルプルな王子たち可愛い!」と思ってくださった方は、ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】の評価やブックマークで応援していただけると、執筆のめちゃくちゃ励みになります!次回、居残り掃除は無事に終わるのか……!?お楽しみに!

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