第52話二重人格と私と向き合う
前回、圧倒的な強さを見せるミミカラカーデを前に、オフィカールとミディティが倒れてしまいました。残されたカルトナージュが、兄弟としての情に葛藤しながらも前に進みます。そして、それを見つめる猫の姿のラトラは――。ついに物語が大きく動き出す第52話、どうぞお楽しみください!
「今度はカルトですか……。僕を圧倒するような魔法を使ってくださいね?
カルトなら、僕を相手にしても本気で攻撃してくると――そう信じています
から」
ミキラカーデはどこか寂しげに、けれど挑戦的な眼差しをカルトナージュへと向けた。 かつて兄弟として育った彼らと戦うなんて、どうかしている。本当は戦ってなどいけない。
けれど、これは避けては通れない運命なのだと、ミキラカーデ自身もどこかで割り切っているようだった。
「ミキラと戦うなんて……これっぽっちも考えたことはなかった。だけど、手加減はなしだよ、ミキラ!」
カルトナージュは静かに魔力を練り上げる。「――『我が願いを聞き届けよ。精神の精霊よ、ミキラを……っ』」
紡がれる詠唱。しかし、その途中でカルトナージュの身体が激しく刻んだ。
カルトナージュの得意とする精神を操る魔法は、術者の脳にも多大なダメージを受ける禁忌の術。だからこそ滅多に使わないし、普段は少しの風魔法を扱う程度に留めているのだ。
「……っ、できない。できないよ、ミキラ……!──あ、う、頭が……っ」
術の反動による強烈な頭痛がカルトナージュを襲う。彼は途中で魔法を霧散させ、その場に膝を突いてしまった。
彼の手が、床を強く叩く。
(カルトナージュ:『だって僕たちは、血を分けた兄弟じゃないか……っ! 小さい頃、いつも一緒に遊んで、難しい謎解きを競い合うように一緒に解いた、大切な家族じゃないか……っ! なのに、なんで……なんで僕たちが戦わなくちゃいけないんだよ……っ!!』)
その頃――。 3人の王子たちの必死の攻撃、そして戦うことすらできずに流した涙を、私は見つめていた。
彼らの心の中には、かつて過ごした温かい家族の思い出がいっぱいに溢れていた。 その悲痛な叫びを特等席で聞き続けていた、二重人格の私――ラトラとリリィーナの心の中では、いま、初めての対話が行われていた。
「ねぇ、ラトラ。私、あの4人の王子を救いたい。……でも、ラトラから私に意識が切り替わると、私はその間のことを何も覚えていられない。それでも――
もしラトラと私が一緒に手を取り合ったら、この猫の姿から人間に戻って、あの4人を救えるのかな?」
暗闇の中で、野生の私――リリィーナが、お上品な私――ラトラに真っ直ぐな視線を向ける。 ラトラは優しく、けれど確固たる意志を宿した瞳で微笑み
返した。
「ええ。わたくしも、あの4人の悲痛な叫びはもう聞きたくありませんわ。
もし可能なら、リリィーナと一緒に彼らを救いたいです。……実はね、わたくしは小さい頃、あなたが眠っている間に少しだけ活動していたことがあったの。
その時、王宮で迷子になってしまって……カルトナージュには一度だけ会っているのよ?」
「えっ!? 昔からラトラは私の中にいたの!? しかもカルトナージュに一度会ってるなんて、私、全然覚えてない……っ!」
「ふふ、そりゃあそうですわ。でもね、昔の王子たちをこの目で見たからこそ分かるの。彼らはとっても仲が良くて、
お互いを大切に想い合っている……家族としての温かい情愛が溢れていたわ。
だからこそ、あの頃のように笑い合っていた王子たちを、絶対に救いたいの」
「……そうだね」 リリィーナはぎゅっと拳を握りしめた。
「私は今まで、王子たちに追いかけ回されて逃げ回ったり、急にキスされたりしてばっかりで、何も返事ができていなかったもんね。――アタシたちが動かなきゃ、何も始まらない!」
リリィーナの言葉に、ラトラはそっと両手を重ね合わせる。
「わたくしたちは二人で一人。あなたがいれば、わたくしも怖くありませんわ」「うん、アタシたちの底力、アイツに見せてやろう!」
――野生と、お上品。 交わるはずのなかった二つの人格が、大切な人を救いたいという強い願いで、心から通じ合った。 その瞬間。 廊下にポツンと座り込んでいた小さな猫の姿が、バチバチと弾けるような眩い黄金の光に包まれた。
周囲の空気が、世界そのものが、彼女の規格外の魔力に震え始める。 ――
学園を飲み込むほどの圧倒的な光の柱が、いま、静かに立ち上ろうとして
いた。
第52話をお読みいただき、本当にありがとうございました!カルトナージュ王子の優しさと過去の思い出に胸が締め付けられつつ、ラストではついにラトラとリリィーナが心を通わせ、覚醒の光が溢れ出しました!二人で一人の彼女たちが、一体どんな姿で人間の姿に戻るのか……!?「ラトラとリリィーナのコンビ最高!」「早く人間の姿での大反撃が見たい!」と思ってくださった方は、ぜひ作品の下にある【☆☆☆☆☆】の評価やブックマークで応援していただけると、執筆のクオリティがさらに跳ね上がります!次回の完全覚醒・大降臨編もどうぞお楽しみに!




