第47話「教室へ向かったのに…」
第47話をお読みいただき、ありがとうございます!「私の勝ち〜!」と、王子たちの包囲網から見事に逃げ切ったリリィーナちゃん。しかし、そんな彼女を待ち受けていたのは、謎の女子生徒が放った怪しい魔法でした。激しい熱の後に目が覚めると、なんとリリィーナちゃんの手にはピンクの肉球が……!?まさかの『子猫』に変身してしまったリリィーナちゃんと、彼女を探す王子たち。今回は、完璧超人なあの王子の「意外すぎる弱点」が大発覚してしまいます(笑)。どうぞお楽しみください!
私はあのカオスな状態から、とにかく猛スピードで走った。昇降口で急いで靴を履き替え、息を整えながら、私は自分の教室へと歩き出していた。
だが――そんな私には、今まさに裏で
起きている「知る由もない出来事」
なんて、知る術もなかったのだ。物陰の壁から、じっとこちらを覗き込んでいる一人の女子生徒がいた。
その女子生徒の名前は分からない。
けれど、彼女は凄まじい形相で私を
キリキリと睨みつけると、口元でブツブツと呪文のようなものを唱え、怪しい
魔法を発動させていたのだ。
そんな不穏な空気に気づくこともなく、私はのんきに教室の前へと
向かっていた。
「はぁ、はぁ……やっと教室に着いた〜! これで王子たちは追って来れなかったね。私の勝ち〜! ……ん? あれ……? なんか、目の前がグラグラする……?」
勝利を確信した次の瞬間、視界が急激に歪み始めた。私は何が何だか分からないまま、全身の力が抜けていくのを感じる。(え、嘘……真っ暗……?)視界が
完全にブラックアウトし、私はその場にバタッと倒れてしまった。
(んんん……!? 身体が、身体がめちゃくちゃ熱い……! なにこれ、まるで
ひどい風邪を引いたみたいに身体が燃えるように熱いよ……! 誰か、冷たいお水かお茶をくださいーーーい!)
激しい熱の波に襲われながら、私は必死に意識を保とうともがいていた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
廊下の向こうから、私を追ってきた王子たちの騒がしい声が近づいてくるのが
聞こえた。
「あれ? 野生リリィーナの奴、どこへ消えたんだ? 俺らより先に教室に行って
ただろ?」
「僕たちを置いて先に行っちゃうなんてひどいよねぇ。……にしても、
どこを探しても見当たらないねー?」
「……? リリィーナが見当たらないな。もしかして、イライラしてラトラになっちゃったのかな? でも、もしそうだとしたら、暴れてこのへんにいると思う
けれど」
「リリィーナさんはいませんねぇ。逃げるのをやめて、教室の中で待機して僕たちを待ち伏せしているんですかね?」
王子たちが口々に首を傾げながら、私が倒れているはずの場所に近づいてくる。私は必死に
「ここよ! ここに倒れてるわよ!」
と大声を出して助けを求めようとした。
「……にゃあ、にゃあ……にゃ」
(――へ?)
自分の口から飛び出したのは、聞いたこともないような、か細くて可愛い鳴き声だった。
すかさず、私のすぐ上でミディティ王子が声を上げる。
「あれ? こんなところに、すっごく可愛い猫ちゃんがいるー!! どこからか迷い込んできたのかなー?」
そう言って、ミディティ王子がしゃがみ込み、私の頭を優しくナデナデと撫でてきた。
(な、撫でられたーーー!? っていうか、なんか妙に王子たちの視線が高い気がする……。私、こんなに身長低かったっけ……!?)
恐る恐る自分の前に手を突き出して
みる。すると、そこにあったのは
――白くて柔らかい毛並みに包まれた、ぷにぷにとしたピンクの肉球のついた
「おてて」だった。
(えっ…………。嘘、嘘でしょ、嘘だって言ってぇぇぇ! まさか私、本物の猫になっちゃったのーーーー!? なんで!?
どうしてこうなったの!? わけがわかんないよぉぉぉ、誰かどうにかしてぇぇぇーーー!!!)
私は脳内で大絶叫しながら、この絶望的な状況を誰か助けて、と心の中で激しく涙を流した。だが、王子たちにはただの愛くるしい子猫が必死に鳴いているようにしか見えないらしい。
「この猫ちゃん、可愛い声で鳴いてるねぇ。お腹が空いたのかな?」
ミディティ王子が目を輝かせながら私を見つめてくる。
と同時に、彼の邪悪な本音が脳内に
ダイレクトに入ってきた。
(ミディティ:『最近リリィーナちゃんに逃げられてばかりだし、この猫ちゃんに思いっきり慰めてもらおうかなぁ……。隙を突いて、猫吸いもでき
ちゃうかも♪』)
(猫吸いって何よぉぉぉ! 怖いからやめて、私に顔を埋めないでミディティ王子ーーー!!)
私が短い手足をバタつかせて拒絶していると、今度はオフィカール王子がフイに私を覗き込んできた。
「にしても、こんな場所に猫がいるなんて珍しいな。誰かの飼い猫じゃなさそうだし……。おい、俺のところに来るか?」そう言うと、オフィカール王子は私の小さな身体をひょいっと両手で持ち上げ、白い歯を見せてニカッと眩しい
笑顔を向けてきた。
抱き上げられた瞬間、彼のちょっぴり
戸惑ったような心の声が流れ込んで
くる。
(オフィカール:『うーん、なんかよく分からねえけど……この猫、どことなくあの野生リリィーナに雰囲気が似てる気がするんだよな。……いや、さすがに気のせいか?』)
(オフィカール王子、気のせいじゃないの!! それ、私!! 私だからァァアア!!!)
持ち上げられて宙ぶらりんになった
まま、私が必死に肉球を動かして真実を訴えかけていると、それを見ていたカルトナージュ王子が、珍しく怯えたような顔をして一歩後ろに下がった。
「ね、猫だねぇ……。暴れて僕を噛んだりしないかなっ? 爪とか引っかかれたりしないかな……?」
(カルトナージュ:『ひぃぃ、猫がいるーーー! 僕、猫だけは一番苦手なんだ……! 昔、猫を見かけて撫解でようとしたら、思いっきり噛まれるし引っかかれるし、それがトラウマで怖くて猫だけは好きになれないんだ……!』)
(ええっ……!?)私はオフィカール王子に抱えられたまま、カルトナージュ王子の意外すぎる本音に驚いて目を丸くした。いつも私に対しては余裕たっぷりで、独占欲丸出しの肉食獣って感じなのに、まさかこんな可愛い弱点があるなんて……。
「完璧な王子様にも、こんな姿があるんだなぁ」と、私はパニックを忘れて思わず感心してしまった。
すると今度は、キミラカーデ王子が目をキラキラと輝かせながら、私の顔の目の前まで近づいてきた。
「ふむふむ。この猫、暴れたりはしますが基本的には大人しいですね。
猫は大抵、人間に威嚇して距離を取ろうとするものですが、この猫さんはそれをしませんねぇ」
(キミラカーデ:『間近で本物の猫を見るのは初めてです! こんなに猫の手って柔らかいんですねぇ〜。あと、猫って
身体がめちゃくちゃ柔らかいと聞きますけれど、一体どんな風に柔らかいの
でしょうか。……よし、このまま研究室に連れて行きたいです!』)
(ちょっと待ってーーー!!! 私
(人間)だけじゃなくて、猫の姿になっても研究室に連れて行くつもりなのーーー!? そこは絶対に持っていかないでーーー!!!)猫になっても変わらないマッドサイエンティストからの
ロックオンに、私はひえぇぇと声を
上げ、オフィカール王子の腕の中で本日何度目か分からない大パニックを
起こすのだった。
(第47話 つづく)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!リリィーナちゃん、まさかの猫化です(笑)!!謎の女子生徒の魔法によって、ぷにぷにのピンクの肉球を持つ可愛い白猫ちゃんになってしまいました。そして今回、カルトナージュ王子の「大の猫嫌い」という可愛すぎる弱点が発覚しましたね!いつもはドス黒い下心を溢れさせている彼が、「ひぃぃ!」と子猫に怯えているギャップがたまりません。逆に、キミラカーデ王子は猫になっても安定の研究欲全開で、リリィーナちゃんの「そこは持っていかないでー!」という魂のツッコミにめちゃくちゃ笑いました。果たして、王子たちの誰が最初に「この猫がリリィーナちゃん」だと気づくのでしょうか?そして、どうすれば元に戻れるのか……!?もし「カルト王子の弱点が可愛すぎる!」「猫リリィーナちゃんを応援したい!」と思ってくださったら、ぜひブックマークや評価、感想をいただけると大変励みになります!次回、第48話もどうぞお楽しみに!




