第41話ラトラ、苛立つ
いつもお読みいただきありがとうございます!さかやさらです。前回の第40話では、先生の魔力理論を「常識ですわ!」とドヤ顔で論破し、クロスバイク級の超高速移動で教室を飛び出したラトラ様。急いでリリィーナと交代しようとする彼女ですが……なんと、そう簡単には帰らせてもらえないようで!?今回はラトラ様が色んな意味でブチギレ(苛立ち)モードです!ぜひ最後までお楽しみください!
いつも応援していただき、本当にありがとうございます!本作の「野生な主人公」と「お上品で最強な裏の人格」、そして「王子の心の声が聞こえる」というドタバタな魅力を、新しく見に来てくださる方にもっと分かりやすく伝えるために、本日タイトルとあらすじをリニューアルいたしました!旧題:『魔法を知らない天然令嬢ですが、なぜか四人の王子様を次々と救って(物理)溺愛されています。』↓新題:『野生な普段の私も、二重人格(お上品&最強魔法)な私も、両方まとめて四人の王子から溺愛されています。〜裏の記憶はないし、王子たちの心の声は聞こえるし、卒業までに一人の本命を選ぶなんて全員の執着が凄すぎて選べません!〜』中身のストーリーや毎日の更新は変わらず、さらにパワーアップしてお届けします!4人の王子の中から主人公が最終的に誰を選ぶのか、ぜひ最後まで見守っていただけると嬉しいです。引き続き、ブックマークや評価での応援をよろしくお願いいたします!
「俺様が背負って送ってやるからさぁ? そんな無視せずに話聞けよ」
わたくしの腕をきつくぎゅっと掴み、
逃げようとするわたくしを強引に食い止めようとしている男。
(……はぁ。なんでわたくしが、こんな目に遭わなければいけませんの?)
見知らぬ男からの不躾な接近に、わたくしは心の中で深い、深い溜め息を
吐いた。リリィーナと交代したい大事な時期だというのに、完全に予定が狂ってしまっている。
──事の始まりは、ほんの二十分前の
こと。教室を出たラトラは、
「はぁ……」とため息を吐いていた。
身体のバランスがどことなく不安定で、今にもリリィーナに戻ってしまいそうな感覚がある。
早く静かな場所へ移動しなければ
いけない。それなのに、さっきの授業での先生の上から目線な態度や、何の意味も持たない褒めちぎり言葉が頭を
よぎり、イライラが募るばかりだった。
(早く……早くどこかへ行って交代しなくては……っ)苛立ちを抑えながら、
普通の人のママチャリを置き去りにするほどの猛烈な早歩きで廊下を歩いていた、その時。一人のチャラついた
男子生徒──まったく見覚えのない男が、わざとらしく進路を塞いで当たった可能様な感じに声をかけてきたの
だった。
「てめぇ、俺の肩にぶつかりやがってな! 謝れよ。骨折したから慰謝料五万で手を打ってやる」
なんとも図々しい男。おそらく、わたくしを脅してブチ切れさせ、金を巻き上げようとでもしているのだろう。
「ごめんなのですわ。ですが、わたくしあなたにぶつかってなどおりませんの。当然、肩にも掠ってなどおりませんので、それでは失礼……」
「おい、待てよ! 俺様が骨折でどうなってもいいのかよ。この事、学園中に言いふらすぞ!」
しつこく付きまとってくる男に、
ラトラの脳内でプチッと何かが切れる
音がした。
(──なんで、わたくしがこんな男子生徒に足止めされなければいけませんの? わたくし、別に悪いことなど何もしていませんのに……!)
ただでさえ早く帰りたいのに。
イライラが、完全にMAXの限界値を突破しそうだった。
「俺様の介護をしてくれたら許して
やってもいいぜ? どうなんだよ」
ニヤニヤ笑う男にグイッと腕を
掴まれる。掴まれたところがじんじんと痛み、ラトラの堪忍袋の緒が完全に引きちぎられた。
(※ここが、ちょうど二十分後の
『現在』へと繋がる瞬間である)
(──もう我慢の限界ですわ。魔法で
今すぐ消し飛ばしてあげますわ!!)
わたくしが手から
「魔法(物理的な破壊力)」を発動させようと、拳に凄まじい筋力を
集中させた、まさにその時──。
「「「ちょっと待った!!!」」」
廊下に、四人の王子たちの怒号が同時に響き渡った。はずだったのだが。
「はぁ……はぁ……っ。なんなんだよ、
今日は朝から走りっぱなしじゃねぇか! ラトラ……っ、お前に変わってからも、相変わらず逃げ足が早すぎるんだよ!」
肩を上下させて激しく息を切らせているのは、第一王子のオフィカール様だった。いつもは完璧で美しいはずのオレ様王子が、信じられないことに息も絶え絶えになっている。
(……クソッ、こんなに汗をかいたのは生まれて初めてだ。しかも俺は王子だぞ? なのに、こんな泥や草まみれになるなんて……全然笑えちまうぜッ!)
「ラトラ、一体何があったんだい? 話はいくらでも聞くから、まずはその手を下ろして、魔法をやめようか」
カルトナージュ様が、引きつった笑みを浮かべながら両手を挙げてわたくしをなだめようとしてくる。
(あ、危ない……! もしここで本当にあの魔法なんか使われたら、この学園の廊下が跡形もなく吹き飛んでしまう……! とにかく、これ以上彼女を怒らせないように慎重にいかないとね)
「もう、みんな足が早すぎるんだからはぁ、はぁ……っ! 置いていかないでよ……って、何、この状況?」
遅れてトコトコと走ってきたのは
ミディティ様だ。
(キミラお兄様が正気に戻って、慌てて教室に向かったのはいいけれど……。
まさかラトラが帰ろうとして、それを追いかけてこんなに校内を走り回ることになるなんて思わなかったよ)
「ああ……美しい。リリィーナさん、どうか私を見つめてください……。そのお上品な所作も、今こうして荒々しくはしゃいでいるあなたも、すべてが本当に愛おしいです……!」
一人だけ完全に世界観の違う溜め息を
漏らしているのは、キミラカーデ様だ。(また君に会えるなんて、今日はなんて幸運な日なんだ。ああ、そんな愛らしい目で私を見つめてくれるなんて……!)
カツアゲのチャラ男は、突然乱入してきた泥まみれの王子たちの異様な迫力
(と、ラトラの拳から放たれる圧倒的な威圧感)に完全に恐怖し、わたくしの腕を離して一目散に逃げ出していった。
しかし、邪魔者が消えてもわたくしの
イライラは収まるどころか、
さらに加速していく。
「──わたくし、非常に苛立っておりますの。色んな意味で……。わたくしのこの苛立ち、一体どうしてくれますの? ……あなた達が、わたくしのお相手をなさってくださるのかしら?」
「ま、待って、ラトラ! 僕たちは君に苛立って欲しくないんだ。というか、君を止められる自信なんかこれっぽっちも
ない……!」
カルトナージュ様が引きつった笑みの
まま、本気で冷や汗を流して一歩後退する。
(なんせ、僕たちは今までに彼女を止められたことが一度もないんだ。
ここでラトラが暴れ出したら、本当に
不安で仕方がないよ……!)
王子たちがその圧倒的な武力の前に戦々恐々としている中、
「……っ!!!」ミディティ様が、何かを閃いた様子でポンと手を叩いた。
路を塞ぐカルトナージュ様の服の裾をツンツンと引っ張る。
「ねぇ、カルト兄様。もしかしたら
『キス』とかで、ラトラの苛立ちが収まるんじゃない? カルト兄様のキス、すごく威力あるし」
(この前、大人になったカルト兄様にお仕置きとしてキスされた時……今までにないくらい、その……すっごく気持ちよかったから)
ミディティ様からの予想外の助言に、
カルトナージュ様は一瞬目を見開いた後、とろけるような怪しい笑みを
浮かべた。
「ふふ、あまりお上品な案ではないけれど……確かに、試してみる価値はあるかもしれないね。ありがとう、
ミディティ」
カルトナージュ様は、ゆっくりとこちらへ歩みを進めてくる。実はこの御方、
普段は過保護で甘々なのに、一度怒らせると手が付けられない「キス魔」に変貌するという恐ろしい悪癖があった。
それを思い出したのか、他の王子たちもゴクリと息を呑んで見守っている。
(な、安全に交代したいだけですのに……近づかないでくださいまし……っ)
いつもなら自慢の筋力で吹き飛ばせるはずなのに、彼から放たれる圧倒的な色気と王者のプレッシャーに気圧され、
ラトラは思わず一歩後ろに下がった。
しかし、背中はすぐに冷たい廊下の壁に当たってしまう。
いつの間にか、完全に退路を
断たれていた。
カルトナージュ様はすっとラトラの顎を持ち上げ、息がかかりそうなほど顔を近づけると、とろけるような笑みを
浮かべた。
「ねぇラトラ、君は僕のキスに耐えられるのかな? リリィーナは耐えられなくて、足をガクガクさせながらされて
たよ。──君はどんな反応をするか、
今からとても楽しみだ」
「っ……!?(な、何を言って……!)」リリィーナが過去に受けたその
「対決でキス」の感覚が、共有されている身体を通じて脳裏にフラッシュバック
する。あまりの恥ずかしさと、耳元で
囁かれる甘く低い声の破壊力に、最強であるはずのラトラの心臓が、
今までにないほどドクンと激しく
跳ね上がった。(第41話 終わり)
第41話をお読みいただきありがとうございました!ラトラ様を朝から追いかけ回して、泥・草まみれになっている王子たち(笑)。オレ様王子オフィカールの泥臭い奮闘や、廊下の崩壊を本気で恐れるカルトナージュ様など、王子たちのタジタジっぷりを楽しんでいただけたら嬉しいです。……が! ラトラ様の圧倒的な威圧感の前に、ミディティくんがまさかのとんでもない提案を投下していきました。一度怒ると「キス魔」に変貌するカルトナージュ様、ラトラ様を壁際まで追い詰めてからのセリフが、とろける甘さの中に独占欲が見えて確信犯すぎます……!リリィーナの「足ガクガク」の記憶を揺さぶられたラトラ様、一体この後どうなってしまうのでしょうか!?続きが気になる!カルト兄様最高!と思ってくださった方は、ぜひ【評価】や【ブックマーク】、【感想】で応援していただけると執筆の励みになります!次回、第42話もお楽しみに!




