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第39話ラトラが降りた先には

いつも応援ありがとうございます!前回の第38話では、お上品な二重人格「ラトラ」が唐揚げ弁当1キロを優雅に平らげた挙句、3階の屋上から迷いなくダイブするという衝撃のラストでした。今回は、その瞬間屋上に残されたオフィカール王子、カルトナージュ王子、ミディティ王子たちのリアルなパニック(と冷や汗)からスタートします!そして、優雅に(物理で)着地したラトラを待ち受けていたのは、まだリリィーナの野生の洗礼を受けていない「第四王子」で……?それでは、第39話をお楽しみください!

「「「おいぃぃぃぃぃぃぃぃーーーっっっ!!!???」」」上から3人の王子たちの絶叫が響き渡るが、

私──ラトラは何も気にせず、そのまま重力に従って降りてゆく。


淑女として、スカートが上にめくれ上がってしまうなど絶対にあってはならないこと。私は両手でしっかりと純白の裾を掴み、完璧に綺麗な姿勢をキープ

しながら風を切った。


その頃、3階の屋上に残された3人は、あっという間にラトラが飛び降りて行ったことに、顎が外れんばかりの顔でポカーンとしていた。


「な、なぁ見たかあの野生リリィーナ屋上から飛び降りていったぞ、さすが野生リリィーナだけあるな!」


オフィカール王子が泥だらけの顔を引きつらせ、フェンスにしがみつきながら

叫ぶ。

(にっしてもあの野生リリィーナはなんか違う気がしたが、気のせいだと

いいけど……)


「いや、あれ、リリィーナじゃあないよ、二重人格ラトラだよオフィ」


カルトナージュ王子が、額から流れる冷や汗を拭きもせずに、鋭い目で階下を

睨みつける。

(久しぶりにこんなひあせが出てきたなぁ。リリィーナが寝たと言っていたけど、戻る時はいつ戻るだろう)


「そそそうだよ、オフィ兄様あれは

ラトラなんだ。眠くなってラトラに変わった見たいけどあんな恐ろしいオーラは初めてだよぉ」


ミディティ王子は恐怖のあまり、その場にへたり込みそうになりながら涙目で

訴えた。


(僕あんな、オーラ初めて見たけど、

こんなに足音がプルプルしちゃうなぁ……これじゃあリリィーナに刃向かってた自分が恥ずかしいや)


と、3人が屋上でそんな風に怯え、それぞれの思いを巡らせている間に。当の

ラトラは至って冷静だった。


とはいえ、3階からの自由落下はさすがにスピードが出ている。このまま着地したら、いくらなんでもお上品な足首を

痛めてしまうからね。私は着地の直前、ほんの少しだけ、周囲の空気を編み込むように浮遊の魔法を使った。


フワリ。極上の白鳥の羽根のように、

静かに中庭の芝生へと着地した瞬間。

目の前には、まさかの第四王子キミラ

カーデがいた。


手には読みかけの難解な魔導書。どうやら静かな中庭で読書を楽しんでいた

らしい。


「リリィーナさん! どうして上から降りて来たんですか!? その身体能力がすごいね! どうしたらそんな能力ができる

ですか!?」


キミラカーデ王子は、驚いて腰を抜かすどころか、目をこれでもかとキラキラと輝かせながら、一歩、また一歩とわたくしに熱烈に歩み寄って来た。


「今の着地、ただの身体能力じゃありませんよね!? 落下速度に対して反作用の風系魔法を、それも無詠唱かつ一瞬で

展開していました! 魔法式の構築スピードが異常すぎます! 一体どんな魔力制御をしたらそんなことが可能

なのですか!? ぜひ僕に詳しく教えてください!」


(……あらあら、いくら殿下とはいえ、淑女にここまで距離を詰めて早口で捲し立てるなんて。少々配慮に欠けるはしたないオタクですわね……)


ラトラは心の中で小さくため息をつきつつも、表情には一切出さない。ハスハスと興奮して顔を近づけてくる彼を、ただ穏やかに見つめ、小首を傾げた。


「あなたはキミラカーデ王子さん?」


「はい! キミラカーデです! それで、

さっきの魔法と着地のコツは──」


「この身体能力が気になりますの?

でも、そんな大層な能力なんてありませんよ、ふふふ……。でも、やっぱり女の子の秘密なんですの」


上品に人差し指を桜色の唇に当てて

微笑む。その瞬間、キミラカーデ王子はまるで雷に打たれたようにピキリと

硬直した。


いつもなら「あははー! 秘密だよー!」と大笑いして逃げる野生のリリィーナが、見たこともないほど妖艶で、完璧な淑女の笑みを浮かべているのだ。


そのギャップと、ラトラから漂う

「底知れない超高密度の魔力」に、彼の天才的な頭脳が一瞬でフリーズする。


私はドレスの裾をそっと持ち上げた。


「それではわたくし、次の授業がありますので失礼致しますわ」

王宮の筆頭礼法指導員さえも腰を抜かすほど、それはそれは綺麗なカーテシーをその場に残して、私はお茶会を退席するようにエレガントに去っていった。


中身がお上品になっても、リリィーナ譲の鍛えた足の力は健在である。優雅な足取りに見えて、その移動速度は残像が見えるほど速かった。


「あっ、リリィーナさん!

待ってください……!」

キミラカーデ王子が思わず手を伸ばすが、時すでに遅し。

彼女の姿は、あっという間に校舎の角へと消えていった。


屋上から息を切らせて階段を駆け下りてきたオフィカール、カルトナージュ、

ミディティの3人が中庭に飛び込んできたときには、そこには呆然と立ち尽くすキミラカーデ王子しか

残されていなかった。


「おいキミラ! リリィーナは!?

無事なのか!?」


オフィカールが肩を揺さぶるが、キミラカーデは魂が抜けたような顔で中庭の空を見つめている。


「……キミラ?」カルトナージュが不思議そうに顔を覗き込むと、キミラカーデはぽつりと呟いた。


「なんか、いつものリリィーナさんではないような……? いつものはお転婆で野生児なリリィーナさんだけど、今日はいつもと全然違う。まるでお姫様、いや、本物のお嬢様って感じだ。一体どうなっているんだ……。

……あ、胸がすごくドキドキする……」


「「「はあぁぁぁぁぁぁ!!???」」」


中庭に、今度は4人の王子たちの困惑と絶叫が木霊した。屋上で恐怖の冷や汗を流した3人と、中庭で未知の恋の雷に打たれた第四王子。


リリィーナの体の中に眠る『ラトラ』の存在が、ついに4人の王子全員の心を、これまで以上に激しく、そして狂おしいほどに揺るがし始めていた。

(第39話 終わり)

第39話をお読みいただき、ありがとうございました!屋上の3人がラトラの圧倒的なオーラにガタガタ震えて(ミディティ王子の「刃向かってた自分が恥ずかしい」が可愛いですね笑)いる一方で、下で待っていた第四王子キミラカーデは完全に別のベクトルで雷に打たれてしまいました。3人の王子が「あの恐ろしいバケモノ(淑女)は何だ……」と戦慄している中、1人だけ「あ、胸がすごくドキドキする……」と恋に落ちているキミラカーデ王子の温度差がたまりません!

【作者からのお願い】「キミラカーデ王子のオタク特有の早口と勘違いに笑った!」「屋上の3人の冷や汗最高!」と思ってくださった方は、ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】の評価ボタンをタップして星をつけていただけると、執筆の大きなエネルギーになります!ブックマーク登録や感想コメントもお気軽にいただけますと幸いです!

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