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第37話平穏なランチタイムの終わりと、謎の令嬢

いつもお読みいただきありがとうございます!前回、お母様の鬼畜GPSブレスレットのおかげで、ボロボロのオフィカール王子に木の上まで追い詰められてしまったリリィーナ。絶体絶命(?)のピンチですが、野生児リリィーナがこのまま大人しく捕まるはずがありません!今回はリリィーナの「物理(斜め上)」からスタートです。そして、物語は屋上でまさかの急展開へ……!?どうぞ最後までお楽しみください!

「へへっ、これで逃げれねぇーだろう

野生リリィーナ。早く降りてこいよ」


木の下から聞こえるのは、満身創痍の

くせにどこか楽しげなオフィカール王子の声。その顔は泥だらけだが、瞳の奥にはギラギラとした執念が宿っている。


(──クソ、大人しく降りて来たらお姫様抱っこで教室まで連れてってやるし、もし飛び降りたらこの腕でしっかり

キャッチしてやるからよ……っ!)


そんな王子の熱い(心の声)がダダ漏れしていることなど露知らず、私は太い枝の上でジリジリと後退しながら、脳内で必死に作戦を練っていた。


私はまだ、諦めていない。機械なら

壊せるはず。何かしら、例えば──

水とか。


「……よし」


私は悩ませながらも、手元にあった水筒のキャップを開け、お母様特製の魔力

遮断ブレスレットに向けて思い切り

傾けた。

ジャァーっ!宇治抹茶の清らかなグリーンが、国家機密レベルの超高精度魔導具を無慈悲に濡らしていく。


すると──。ピピーーピピっぴ、と鼓膜を突き破らんばかりに鳴り響いていた音が、嘘のようにピタリと消えた。


「なっ……!? お母様が作ったブレスレットが壊れるはずない! 何をしたんだ野生リリィーナ!?」木の下から、オフィカール王子のひっくり返った絶望の悲鳴が聞こえてくる。


「簡単なことなのよー。当てられるものなら当ててみなさい!」

私は勝ち誇った顔でそう言い捨てると、大木の枝を蹴って、文字通り煙のようにその場から逃げ出した。遠くの方から

「待てぇーー!」と聞こえるが、そんなの今の私にはどうでもいい。


次の避難先は……よし、

屋上でも行くかー!


「ふぅ……! やっぱり静かなところで

食べるお弁当は最高ね〜! 屋上だから涼しいし、すっごく安らぐわ」


あの後、持ち前の身体能力で軽々と屋上にたどり着いた私は、やっとの思いで布に包まれたお弁当を広げることができた。そよ風が髪を揺らし、最高のランチタイムが始まる──。


そう、まったりと幸せを噛み締めていた、その時だった。


「オフィだけじゃあ、監視は持たないと思ってこっそりつけて来たんだ。

あ、ちゃんと君に見えないように魔法を使って来たんだけどね?」

(やっぱり子供の頃と変わりないなリリィーナ。今も昔も暴れん坊で、すぐに

逃げ出すところは変わりないな)


「カルトお兄様について行けば、リリィーナちゃんの場所がわかると思って来たんだー。リリィーナちゃん、逃げ出したらダメじゃん」


(ふふふ、逃げ出すリリィーナちゃんも可愛いな。もっと僕を楽しませてよ! じゃないと僕がつまらないからさ)


「……っ!?」


背後から突然響いた二つの声に、私は心臓が跳ね上がった。振り返ると、そこにはまさかのカルトナージュ王子と、ミディティ王子の二人が並んで立っていたのだ。なんでいるのよ……!?野生の勘を持つこの私が、気配を何も

感じなかったわよ……!?


動揺する私の頭に、急激な激痛と目眩が襲いかかる。な、なんだろう……急に、視界が歪む……。倒れちゃあいけないのに……、お弁当、まだ食べてない、のに……。バタッ!


「リリィーナ!? しっかりして、

リリィーナ!!」


「リリィーナちゃんどうしたの!?

起きてー!!」


遠のいていく意識の中で、二人の焦った声が聞こえる。私はなんで倒れたのか分からない。


ストレス? 魔力の暴走? よくわからないけれど……でも、なんだか、もの凄く眠たいな……。


数分後。屋上に、心地よい風がふわりと吹き抜けた。


「……あら?」


床に倒れていた私の身体が、ゆっくりと、しかし信じられないほど優雅な所作で起き上がる。その瞳は、先ほどまでの野生の輝きとは一変し、まるで深く静かな湖のような輝きを湛えていた。


「私わたくし、何をしてましたの? ……ここは、屋上ですわね?」

トントン、と自分のドレスの砂を上品に払い落としながら、私は小首を傾げた。


そして、目の前で呆然と立ち尽くしている二人の王子へ、極上の微笑みを

向ける。


「ねぇ、そこのカルト。ミディティ王子さん。……私わたくしに、何かあったのかしら?」


「えっ……?

リリィーナ、どうしたの……? 君、リリィーナではないよね……? 一体、君は

誰なんだ……!?」


カルトナージュ王子の顔から余裕が消え、驚愕に目が見開かれる。


「リリィーナちゃん……? ほんとにリリィーナちゃんなの……? 雰囲気が、全く違うんだけど……っ」


ミディティ王子も、そのあまりの豹変ぶりに一歩後ろへ後ずさった。

ここへ来て、突然変わってしまった

リリィーナ。一体、彼女の身体に何が起きたのか?はたまた、彼女の内に眠るもう一つの人格『ラトラ』が目覚めてしまったのか……?


今、四人の王子を巻き込む、大いなる謎の幕が上がる──。(第37話 終わり)

第37話をお読みいただきありがとうございました!まさかの宇治抹茶(お茶)による水没強制ショート!お母様の超技術も水分には勝てなかったようです……オフィカール王子の明日はどっちだ。そしてやっと逃げ切った屋上で、まさかのカルトナージュ王子とミディティ王子の登場、さらにはリリィーナの意識が暗転して謎の人格(?)「ラトラ」が目覚めてしまいました……!「私わたくし」モードになったリリィーナ(ラトラ)を前に、王子たちは一体どうなってしまうのか!?「お茶かけるの笑った!」「ラトラちゃん気になる!」と思ってくださった方は、ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】の評価ポイントやブックマークで応援していただけると、執筆のめちゃくちゃ励みになります!次回、屋上がさらに大混乱に陥る第38話もお楽しみに!

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