アルバの泉
その後、アリオンがうさぎを捕まえてきて、ライールさんがそれをさばき、街で買ってきたパンにはさんで、セリス謹製水じゃないただの水で作ったスープと一緒に食べた。
こういうのよ!
私が想定してた逃亡生活は!!
今はただの観光だけれども…。
その後しばらく行くと、完全に道はなくなり、目の前には気が生い茂る山が見える。
「この先はモンスターも出るから気をつけろよ」
ライールさんがそう言うと、
「楽しみ!」
「楽しみです!」
「いいねー足音聞こえたら教えるよ」
「よっしゃー!」
と、皆非常に楽しみにしている。
「お前ら……はぁ……」
ライールさんはため息をつきながら、意気揚々と山に向かっていく私達の後をついてくる。
これよ!
これよこれよ!
モンスターとかいいじゃない!
私は戦えないけれども……。
「モンスター出てこーい!」
「こっちに獲物がいるよー」
アリオンとリリアはそう言った。
「お前らもうちょっと緊張感持てよ…」
「あ、右前方200メートルぐらいかな? 足音」
オフィールがそう言うと、一気に場に緊張が走った。
ということはなく、
「いってくるー!」
「あ、待てよリリア!」
「二人ばっかりずるいですー」
とそっちの方に皆向かっていってしまった…。
「おいおい! 何かあったらどうするんだよ!」
あっと言う間に見えなくなった4人の後を、私のペースに合わせて大きな声を出しながら歩いているライールさん。
そしてしばらく歩くと、モンスターらしき生物の屍を前に立つ4人がいた。
「それはワイルドボアだな。お前ら怪我はねーか?」
ライールさんは、その生物を見てそう話しながら4人に近づく。
「よっゆー!」
「モンスターさんもっと出てきませんかねぇ」
「俺も少しは戦いたいよー」
「リリア早すぎんだよ!」
どうもリリアが脚力強化で一気に近づいて、セリスの燃える剣ですぐ倒したみたいね…。
「お前ら…騎士団員ですらワイルドボアなんてケガするやつもいるんだぞ…」
「でもほら! ライールさんのお陰でモンスターの倒し方は知ってるし!」
とリリアは腕を組んで言う。
「はぁ、とりあえず独断専行は禁止だ。Aランクのモンスターでも出てきたら、お前らでも流石にやべーから。わかったな」
「「「「はーい…」」」」
と皆不服そうに返事をした。
「皆早すぎて、このままだと私動くモンスターが見れなそうだわ。だからお願い」
「フィオラがそう言うなら仕方ないなぁ」
とリリアは両手を頭の後ろに組んで言った。
「リリアー。なんで、フィオラが言ったらちゃんと聞くんだよー」
「えー? だってフィオラだから!」
「お前…」
そう言ってはぁとため息をつくライールさん。
「さぁアルバの泉に向けて進みましょう! 冒険みたいで楽しいじゃない!」
「そうだね! 行こうか!」
そういうと、オフィールを先頭に皆は歩き出した。
そしてその先、何匹かのモンスターに遭遇しつつも、危なげなく倒して私達は進んだ。
まぁよく考えれば、もはや最高レベルと言っても過言ではない諜報能力があるんだから、よほどのことがない限りモンスターに近づかれたりもしない。
本当皆私が見れるように、待っていてくれてるぐらいだった。
なんか思ってた冒険と少し違うけど…まぁいいわ!
細かいことだし、普段の暇な生活よりは随分楽しい!
そして2時間ほど山を登ると、奥に湖が見えてきた。
おお。
おおおおおお!
私達は走って泉に近づく。
「すごいわ! なんて綺麗なの!!」
「綺麗ー。見てー、底が見えるよ?」
「いいですねいいですね!」
そう言って水辺でキャイキャイはしゃぐ私達。
「んじゃ俺等は適当に狩りでもしてくるから、ここから離れるなよー」
「わかったわー!」
そうして男子チームは山の更に奥へと向かった。
「ねーねーフィオラ! あっちの奥の方の洞窟みたいなところ見に行こうよ!」
「いいわね! セリスも行きましょう!」
そう言って私達3人は泉の向かい側に見える洞窟を目指して、泉の周りを回った。
「ここから水が流れてきてるみたいね」
近くに来たら、洞窟の中に小さな川が流れており、泉に水が流れてきている。
「これ、洞窟の先いけるんじゃない?」
「確かにいけそうね」
「行ってみましょうー!」
そうして洞窟の奥に進むと少しひらけた場所に出た。
そして私達は息を飲んだ。
そこは周りが洞窟の壁みたいのに囲まれて、中心には湧水が沸いており、そしてその周りに様々な色の花々が咲き誇り、色とりどりの蝶が飛んでいる。
上は壁が途切れて穴が開いているので、ほのかな風によって水面が揺れて、差し込む光がキラキラ照らして、これでもかって程にその空間は神秘的に光輝いていた。
「す、すごいわね」
「うん…」
「神秘的ですね…」
思わず私達3人は感嘆し、その場に立ち尽くした。
しばらくその光景を目に焼き付け、
「こっちがアルバの泉かしら」
「どうなんだろう。こっちは大きな男の人とかだと、ちょっと入るの辛くない?」
「そうかもしれないけど、こっちの方が段違いで綺麗よ…」
「そうですねー。お水はどうなんでしょうか?」
「あ、セリス! 化粧肌専用水を作ってみましょうよ! それでわかるわ!」
「あ! そうですね!」
そう言うとセリスは背負ってるリュックからコップを出して、水を汲んで、魔力を込めた。
「できました」
「どうかしら?」
私達はその水を手に取り思い思いの肌に塗ってみる。
「どうも仕入れていたのは外の水のようね」
「そうだね。あきらかに効果がいいねこれ」
「もはや肌を回復させるというより、綺麗にしちゃいそうですね…」
ここまでモンスターもいたし、水を汲んでいくとなるとそれなりに重労働だろうし、恐らく水を汲みに来るのは男性だ。
確かにこっちのほうが水質はいいが、ここに入るには小柄じゃないとちょっと辛い。
というか樽の出し入れが大変そう。
外の泉でも十分すぎるほどきれいだから問題ないが、こっちは最早別物だ。
なんて素敵なのかしら…。
私達はその周りの花の脇に座り、セリスはそのお水を汲んで何かを作ってみたり、リリア蝶と戯れたりして、私は1冊だけ持ってきた本を読みだした。
あぁ、こんなところで毎日本が読めたらなんて幸せなんでしょう…。
そんなことを思いながら過ごしていると、リリアが急に起き上がり洞窟の出入り口をみた。
「フィオラ誰か来る気がする」
「ライールさん達?」
「違う感じだから少し後ろに下がっていて」
「セリス索敵して」
私がそういうとセリスは魔力を込めて、
「敵意は感じません」
セリスはそう言ったが、こんなところでライールさん達以外の人に出くわすなんてそうそうないだろうから、リリアに少し前に出てもらい、私とセリスは後ろに下がった。




