【ルイン視点】子爵
「こ、これは一体…!」
「あ、あなた…」
「お父様…」
ジョルト子爵の両脇で、隠れるように奥方と娘が立っている。
父上は気にすることもなく話した。
「ジョルト子爵よ、これよりそなたの処遇を決定する」
「しょ、処遇とは! 一体何を!!」
明らかにうろたえるジョルト子爵。
俺は証拠の紙束を持ち前に出た。
「身に覚えがないと? これを見てもか?」
俺はそう言いながら、紙束をペラペラ読みながら子爵に投げた。
「えー、なになに。貝殻の樽の底に忍ばせた」
「んー? こっちは、検閲官の買収リストねぇ」
「ほー、これはトリップ密輸の対価に中毒女性の出荷リストと」
俺が読み上げた紙を投げつけるたびに、どんどん顔が青ざめていく。
「他にも色々あるようだがどうする?」
俺は真っ青になっている子爵に近づき言った。
「…」
「申し開きはあるか?」
「…し、しょうがなかったんだ! なんの特産もない領地で、運営のために仕方なく…!」
「その割には王都では派手にやっていたようだな? 娼館の上得意顧客リストをだそうか?」
「なっ…」
「あ、あなた!!!」
「うっ…」
王の目の前だというのに夫婦喧嘩を始めるジョルト子爵夫妻。
本当バカだなこいつら…。
まぁ、そこに座っている王も傀儡なのだがな…。
俺は投げた紙を拾い、カイエン兄上に渡した。
「ジョルト子爵よ。委細認めるということでよろしいな?」
「カ、カイエン殿下! な、何卒ご慈悲を!!」
「ならん。トリップは国で用途を管理することになっているはず。それを密輸入して密売するなど言語道断」
「し、しかし!」
「ジョルト子爵の爵位を剝奪の上、ジョルト子爵家を取り崩しとする。領地は王家直轄領とする。並びに子爵本人は打ち首とする」
静まり返った玉座の間にカイエン兄上の採決が響く。
そして子爵は地面に崩れ落ちた…。
「あなたどうするのよ!」
「お父様! どうしてくれるのですか!!」
キーキーわめく奥方と娘。
本当にうるさい。
少しはフィオラ嬢のような冷静さや思慮深さを持ってほしいものだ。
俺はキーキーわめく二人の前に立ち、
「奥方。領地にいる名前はなんでしたっけね。そうだそうだ、ゼオンとロジェだ。随分と仲良さそうですね。先日はついに3人で事に及んだとか?」
俺がそう言うと、奥方は一気に顔を青白くした。
「貴族家の夫人が、領民を囲って淫行ねぇ…」
「や、やめなさい!」
そう言って俺に掴みかかろうとするが、後ろに立っていた騎士団員に抑えられる。
「あぁ、それにアマレーヌ嬢。なんでしたっけ、ライデン男爵家の三男のー…そうだそうだ。ゼリスト殿か。学院でも随分と仲良かったようじゃないですか。それこそ繋がってしまうぐらいに」
俺がそう言うとアマレーヌ嬢は、カタカタして後ずさった。
「あれ、他にもいたなぁ。本当一体この国の貴族はどうなっているのですか? 私の記憶が確かならば、血を重んじる貴族子女は生娘が結婚の必須条件だったはずなのですが…私の記憶が違うのでしょうか…」
と俺がとぼけた感じで言うと、ジョルト子爵が床に崩れ落ちたまま少しだけ顔をあげて、
「あ、アマレーヌ…ほ、本当なのか…?」
と聞くと、アマレーヌ嬢は、
「う、う、嘘よ! そんなわけないじゃない!」
「ほう、では、報告書を読みましょうか? 事細かに、それこそ何時何分にどういう状態だったかまで詳細の記録を暗部で確保しておりますが?」
俺はそう言うと、子爵の前に紙を投げた。
子爵は恐る恐る紙をとり、それを読み、途中でやめた。
「アマレーヌ…」
「ち、違うの! 無理やりなの! 無理やり私はされたの!」
と慌てたように言うアマレーヌ嬢。
「へぇ。無理やりされたという割には乗り気ではないですか。どれどれ、「ゼリスト、もう一回したいわ! もっと激しくして!」」
俺が報告書の会話部分を読み上げた。
そしてアマレーヌ嬢は床にペタンと座ってしまった。
俺はそんな状態なのはお構いなしに、
「そういうことですから、貴族社会の文化を乱す行為はやめて頂きたいと思いましてね、少しお勉強していただこうかと思っています」
「お勉強…?」
奥方がボソッとそう言った。
「はい。奥方には海沿いの辺境のアルテミシア修道院へ30年。アマレーヌ嬢は山沿いの変更のサンモニカ修道院へ50年ほど行っていただきます」
そしてそれを聞いた奥方はガクッと床に膝をついて、
「な、何卒…。そ、それだけは……。あ、アマレーヌあなたもお願いなさい!」
「は、はい! 何卒!」
と二人は泣きながら土下座して懇願した。
俺は二人に近づきしゃがんで、乱暴に顔を持ち上げると、
「本当は、あらゆる手を使って打ち首にもできたところだ。命があるだけましと思え」
そして手を離すと二人はガクッと土下座のまま泣き出した。
カイエン兄上はそれに構いもせず、
「ではウィルオス元伯爵同様、速やかに刑の執行実行したまえ」
そういうと騎士団員が出てきて、3人を捉えた。
奥方とアマレーヌ嬢は最後まで泣きながら懇願していたが、周りの国の重鎮たちは冷ややかな目で二人を見ていた。
まぁ、アルテミシア修道院とサンモニカ修道院と言えば、超厳格で有名な修道院だ。
贅沢など一切ない。
周りを高い壁に阻まれ、外に出ることは出来ず、朝から晩まで祈り、さぼろうものなら厳しい罰が下る。
彼女たちが耐えられるのかはわからないが、命があるだけでもましだと思ってもらおう。
こうしてフィオラ嬢を脅かす、ウィルオス伯爵家とジョルト子爵家の処罰を完了させた。
王国建国以来、初めての2家同時の取り崩しとなった。
俺は仕事を終えて執務室に盛ると、
「ザッハ!」
「は!」
「フィオラ嬢の居所は!」
「まだわかりません。しかし王都にいないことは確認済みです」
「そうか。帝国に向かうというのであればルクセンであろう。直ぐに出発する」
「畏まりました」
そして俺は暗部の実行部隊として活動するときの黒い軽装に着替え、ザッハと王城をあとにした。




