【ルイン視点】毒杯
翌朝俺はいつも通り目覚めた。
今日はウィルオス伯爵家とジョルト子爵家を取り崩す日。
気合をいれねば。
俺はそう思いつつ、中に入ってきた侍女に身支度をされ、そのまま部屋で軽めの朝食を取り執務室に向かった。
執務室に向かう途中、殺気のような雰囲気を感じ警戒すると、柱の前にセルジュ兄上がいた。
「ルイン、やってくれたね」
「なんのことでしょうか」
「一体どうやって解毒したんだ」
「一体何のことでしょう?」
「お前…!」
そういうとセルジュ兄上は胸ぐらを掴んできた。
「残念でしたね。全て思い通りにならず」
「お前!」
そういうとセルジュ兄上は懐からナイフを取り出した。
俺はすぐさまセルジュ兄上の後ろに回り込み、ナイフ持った手を蹴り上げた。
そして転がったナイフを拾い、
「セルジュ兄上。今回は見逃します。俺はいいですが、俺の大切な物を再び奪おうとしたら」
俺はセルジュ兄上の首筋にナイフをあてる。
「次は殺しますよ」
そう言って俺はナイフをセルジュ兄上に返した。
「セルジュ兄上も、少し鍛えた方がいいのでは? 弱すぎます」
「ぐ…」
そして俺は、悔しそうに俺を殺したそうに睨みつけているセルジュ兄上の前を悠々と歩いて行った。
そして執務室に着くと、げっそりとしたディアッハが執務を行っていた。
「る、ルイン様…。あんまりですよ……。カイエン殿下からも仕事依頼され……。俺を殺す気ですか!!」
「なに。ディアッハが仕事ができるから皆頼みたくなるのだ」
「これじゃ家に帰ったらレミアに絞られて、王城に来たら仕事に絞られて、俺は一体どこで休憩すれば…!」
「レミア嬢の所でいいじゃないか。あんなに美しく優雅な女性もそういないぞ?」
「いやー、そうなんですよ! レミアって本当美人ですし、でも少しか弱いところもあってですね…! って違う!」
「まだ元気なようだな。今日ウィルオス伯爵家とジョルト子爵家を取り崩すから忙しくなるから、それぐらいの方がちょうどいいな」
「勘弁してくださいよ……」
ディアッハはそういうと執務室のテーブルにうなだれた。
俺は執務室の自分のテーブルに座り、今日の証拠品等を確認しているとザッハが執務室に入ってきた。
「ルイン様。玉座の間にお越しください。始まります」
「わかった。ザッハ手伝ってくれ」
「はっ」
そうして俺はザッハと証拠品の数々をもって玉座の間に向かう。
そして玉座の間の前に来ると、扉が開けられた。
俺は中を通り、玉座の脇に立った。
玉座には父上が座っており、右隣にカイエン兄上、左隣に俺が立っている。
そして玉座の間にはサシェル義兄様や、文官、第1騎士団長や宰相等国の重鎮たちが控えている。
「では、これよりまずウィルオス伯爵家の処遇を決める」
父上がそういうとウィルオス伯爵が、
「一体なんのことなのでしょうか! 急に城に連れてこられたと思ったら、まるで罪人を扱うかのように監視までされて!!!」
と大きな声で叫んだ。
俺はそれを聞き、
「当然であろう。罪人なのだから。むしろ牢にいれなかっただけでもありがたいと思え」
と言い放つとウィルオス伯爵は俺の方を見た。
「これはこれはルイン殿下。一体それは何のことですか?」
「ふん、白々しい。これを見てもそれが言えるのか?」
俺はそう言うと1枚の紙きれを前に出した。
これはウィルオス伯爵家の正式な印鑑が押されている、帝国との密書の1つである。
「なっ!」
「父上、こちらをご確認ください」
俺はそう言うとその紙を父上に渡した。
父上はその紙を読み、見る見る表情が青ざめていった。
「は、伯爵…。貴様とんでもないことをしてくれているな!」
と、父上には似つかわしくない大声をあげた。
「他にも色々ありますがご覧になりますか?」
父上は、息を切らしながら、
「カイエンとルインに任せる」
と言った。
「では、伯爵、これらの書面について何か弁明はございますか?」
「そ、そんなもの偽造だ!」
「なるほど。ではこの印影も偽造であると?」
「そ、そうだ」
「それは大問題ですね。なぜ国に報告していないのですか?」
「さ、最近なくなったのだ…」
「そうですか。しかしその報告がされていない以上こちらではいつから偽造の印鑑が存在したかわかりませんね。これではこの印影と同じ印影の書類は全て偽造と言うことにする他ありませんね」
と俺が言うと伯爵は慌てて、
「そ、そんなわけあるか! なくなったのは最近だ! 10日ほど前だ!!」
「そうですか。それを証明するものは?」
「…」
「ないのであれば、この印影は全て偽造と言うことで処理します。過去ずっとに渡り偽造の書類が提出されていたとなると大変ですね」
「き、貴様……」
「まぁどちらでも刑は変わらないですから、私はどちらでもいいんですけどね。過去ずっと偽造の書類を提出していたということでも、帝国に軍事機密を売却していたということでも!!!!!!」
俺がそう言うと、一気に玉座の間がザワザワした。
するとカイエン兄上が、
「ウィルオス伯爵。あなたには私を支援してくれたこと感謝していた。しかし、こんなことはもちろん見過ごせない。ご丁寧に俺の情報までも提供していたみたいだしな」
「か、カイエン殿下…」
「この他にも非合法な賭博に女性の監禁。もう情状酌量の余地などひとかけらも存在しない」
カイエン兄上がそう言うと、玉座の間はシーンと静まり返った。
そしてカイエン兄上はそのまま、
「ウィルオス伯爵の爵位は剝奪し、伯爵家は取り崩し。領地は王家直轄領とする。伯爵本人は毒杯の刑とする。また一家全員打ち首とする。父上よろしいですね」
「…構わぬ…」
カイエン兄上がそう言うと、再び玉座の間がざわついた。
なにせ毒杯だ。
毒杯は遅効性の猛毒で、7日7晩苦しみ続け確実に死ぬ。
解毒薬もない。
7日7晩苦しみ続けるのがあまりにも残虐であると、恐らくここ数百年この刑が執行されたことはない。
「そ、そんな! 一家全員とはあまりにも!!」
ウィルオス伯爵がそう父上に懇願するように言うと、
「伯爵。お主とは長い付き合いじゃったな。しかし、まさか国民全員を危険に晒しているとは思わなんだ! 一家全員で当たり前であろう!! どこにお主の意思をついでおる者がおるかわからんわ!」
と大きな声をあげた。
「では文官の皆さん。この決定を正式な書類に」
俺がそういうと文官たちが慌ただしく動き出した。
「ウィルオス伯爵家の一家全員捕らえよ。元伯爵は牢へ」
カイエン兄上がそう言うと、騎士団員が急ぎ足で出ていき、ウィルオス元伯爵は縄で縛られ連れていかれた。
「続いてジョルト子爵家の処遇を決める」
父上がそういうと、近衛騎士団が慌ただしく動き、別室からジョルト子爵家の3人が連れてこられた。




