天眼の神父
ルイン殿下は、驚愕した表情で聞いてきた。
「ま、間違いないのか?」
「ええ、間違いないですわ。オフィール皆を連れてきて」
そして暫くすると全員が別宅の裏口から出てきた。
「聴力強化ですの。私のさっきの声も聞こえていたのですよ? 恐らく私たちの会話も彼には筒抜けです」
と、ニコニコ笑って手を振るオフィールを見て言った。
「ほ、本当なのか…」
「そして、そこのアリオンは身体強化スキルです。アリオン、ライールさんを持ち上げて走って」
私がそう言うと、アリオンはライールさんをひょいっと片手で持ち上げて消えた。
そして殿下の横にライールさんを置いて戻ってきた。
「まぁ殿下。そういうわけなんで、俺はこいつらを守るよ」
ライールさんがそう言って殿下に話しかけると、
「ライール殿…。そういうことですか…」
「フィオラのこの力は危険すぎる。下手すると教会に殺されかねない。だから俺達はこいつと一緒にいるんだ。まぁ、フィオラはしっかりしてるし、頭もいいからってのもあるけどな」
「なるほど…」
ルイン殿下はそう言うと少しうつむいて何かを考え出した。
そして暫くすると、
「…天眼………」
と言った。
「天眼?」
私が聞くとルイン殿下は話し出した。
「かつて帝国が勢力を拡大させた時は多くのスキル持ちがいたとされている」
「そうなんですの?」
私がそう聞くと、ライールさんが、
「ああ、そうだ。当時のスキル持ちが作ったと言われる、今では実現できないアーティファクトという武器なんかもある。まぁセリスの作った火の剣なんだけどな…」
「あら、セリス世界最高峰になっちゃったじゃない」
「えぇー、私は普通でいいですー」
と、いつも通り私達が話していると、ルイン殿下が咳ばらいをした。
「き、君達は…。この事実がどれ程世界を揺るがすことか…」
「まぁ、こういう奴らなんで悪いことに使ったりはしねーさ」
と、ライールさんが笑いながら言った。
「なぜ当時の帝国にスキル持ちが多かったか知っているか、ライール殿」
「んあー、当時の戦争が戦争を呼ぶ世界に終止符を打つべく、神が帝国に与えたんだろ?」
「あぁ、教会ではそう言い伝えられており、だから教会の水晶でしかスキルを見ることは出来ないとされている」
「そうだな」
「そして世代を重ねるごとに、そのスキルの継承は薄れ、今ではごくまれに存在するぐらいまで少なくなっているとされている」
「俺もそう思ってたぜ」
「ただ、王国の暗部の調べで帝国の王家にだけ伝わる伝承の中には、天眼の存在がある」
「天眼?」
「実はスキルは多くの人が保有しているが、水晶にはその一部しか表示されないと帝国の王家の伝承には記載があったそうだ」
「あぁ、俺等もそれは確認済みだ」
「そして、当時帝国には天眼の神父たる人物が存在し、その神父は本来水晶でしか見ることが出来ない神が与えしスキルを見ることができた上に、水晶ではわからないスキルまでも見える天の遣いだと。そして帝国ではその神父の目を天眼と…」
ルイン殿下がそう言ったの聞いて、全員が私を見た。
「え? 私?」
「そりゃお前しかいないだろフィオラ。だってスキル見えるんだろ? 現に俺たち全員使えてるわけだしな」
とライールさんが言った。
ルイン殿下はそのまま、
「帝国王家は、次なる天眼の持ち主を探すべく、それ以来ずっと全世界に密偵を放っている。それほど天眼が世界に与える影響は大きい」
私はそれを聞いて、少し怖くなった。
私教会からも帝国からも狙われるの?!
「当時の天眼がどのようなものかは、流石に調べられなかったが、フィオラ嬢のそれがきっとそうなのだろう」
「…そうですか」
ルイン殿下は少し考えて、
「これは迂闊に報告もできないな…」
「いいのかい? 王子だろお前?」
「構わん。むしろ今の王国に連れて行くと、よからぬことしか起こらなそうだ」
「まぁそれはそうかもなぁ。だから俺は報告しなかったんだけどな」
「流石だライール殿。フィオラ嬢」
「なんでしょう?」
「本来であれば、俺は君を強引にでも連れ帰らねばならない」
「嫌ですわ」
「知っている。だから、君のその力を正しく使える国に変えてみせる」
「お待ちしておりますわ」
「それまでは、ライール殿、頼むぞ?」
「ああ、任された」
「ちなみに他に知っている人は?」
「いないな。フィオラの情報は、最も秘匿してきたものだ。サシェルも知らない」
「そうか。以降も絶対守秘してくれ。下手すると戦争が起こる」
「あぁ、わかっている」
えぇ…。
ライールさんが誇張してたとばかり思ってたけど、本当に戦争起っちゃうんだ…。
「それではフィオラ嬢。スキルありがとう。私も使えるように練習するとするよ。またお誘いしても?」
「嫌ですわ。私は自由に生きたいのです。王子様と一緒にいるなんて知られたら、それこそ色んな意味で自由がなくなりますわ」
「…王子であることを、これほど後悔したことはないな……」
ルイン殿下が苦笑いしながらそういうと、皆が笑った。
「伯爵と子爵の件もあるので、また使いを出す。ライール殿よろしく頼んだ」
「わかったよ。ザッハによろしく言ってくれ」
「伝えておく」
そういうとルイン殿下は、スッとその場から消えた。
え? そんなスキルなかったけど!
「やっぱりあの殿下手練れだよー」
「間違いねーな。まさかスキルも使わずにあんなに足音を消すなんて、並みの努力じゃねーぞ」
とリリアとアリオンが言った。
「あ、証拠渡すの忘れてしまったわ」
「まぁ後で届けるかぁ」
「お願いね」
アリオンにお願いしつつ、私はスキルもなしで、リリアやアリオンも認める身のこなしのルイン殿下のことを考えていた。
ルイン殿下。
一体何者なのだろう…。




