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元主婦、異世界で暗殺者となり世界を救う ~裏切られたので暗殺ギルドごと王国を乗っ取りました~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2 第6話:皇宮の茶会

シーズン2第5話をお読みいただきありがとうございます!


貴族のサロンに完全に溶け込み、見事なスパイ活動を展開する茜。第6話では、いよいよ帝国の心臓部である皇宮が開く「皇宮の茶会」へと潜入し、神殿と帝国の秘密に迫ります!

ガルド帝国の皇宮、その庭園で開催される「白銀の茶会」は、帝国最高峰の権力者たちだけが参加を許される極めて閉ざされた社交の場だった。

どこまでも続く白大理石のテラス、クリスタルで作られた噴水、そして贅を極めた薔薇が咲き誇る庭園に、帝国の皇族や高官、有力貴族の夫人たちが優雅に集っている。


その中心でひときわ輝いていたのは、帝国の最高権力者である皇帝の寵愛を受ける「皇妃レティシア」だった。

彼女の周囲には常に多くの貴族たちが群がり、機嫌を取ろうと必死になっていた。


その華やかな輪のすぐ近くで、茜はシルバーのティーカップを片手に、涼やかな笑みを浮かべていた。

前回のサロンで知り合った高官の夫人の同伴という形で、彼女はこの皇宮の茶会へのぐり込みに成功していたのだ。身に纏うのは、夜空を思わせる深い藍色のベルベットドレス。過度な装飾はなくとも、その立ち振る舞いと圧倒的な気品は、生半可な帝国の貴族夫人よりも遥かに目を引くものがあった。


(ふん、見栄と権力欲の張り合いね。ママ友同士のマウントの取り合いと本質は何も変わらないわ)


茜は内心で冷ややかに分析しながら、優雅に紅茶の香を楽しむ。

表向きは世間話に花を咲かせているように見えて、その耳と鋭い観察眼は、皇妃や大臣たちが交わす機密の会話を一切逃さずキャッチしていた。


「――最近、神殿からの要求がエスカレートしているわ」

少し離れた東屋(あずまや)のテラスで、皇妃レティシアが側近の宰相に向かって、苛立ちを隠せない声でそう呟いた。

「軍の兵士を『祝福』と称して神殿の地下牢へ送り込めというけれど、あれは人間をただの兵器に改造しているだけじゃないの。皇帝陛下は神殿に頭が上がらないけれど、私はあの連中のやり口が気味悪くて仕方ないわ」


「お言葉ですが、皇妃様。神殿勢力の後ろ盾がなければ、我が帝国とてこれほどの大陸覇権を維持することはできません。それに、噂によれば……神殿は『別の世界から訪れた特異点』を利用して、さらなる次元を超える計画を進めているとか……」


(――別の世界から訪れた特異点?)


その単語を聞いた瞬間、茜の瞳の奥がスッと鋭く光った。

それは、かつて彼女がこの世界へ召喚された時に使われた言葉そのものだった。神殿が企んでいるのは、単なる帝国による領土拡大の裏で、次元の裂け目をこじ開け、自分たち都合で別の世界をも巻き込もうとする狂気の実験なのだと確信に変わる。


(私をこの世界に引っ張り込み、あんな過酷な運命を背負わせたのも、すべてあの神殿の連中の仕業というわけね……)


怒りが静かに、しかし激しく茜の胸の内で燃え上がった。

平和な日常を奪われ、家族と離れ離れにされ、命を狙われる地獄のような日々を強いられた。そのすべての元凶が、この世界の理を我が物顔で歪める神殿にあると分かれば、やるべきことは一つしかなかった。


「おや、そこの美しい奥様」

突然、甘ったるい声が茜の思考を遮った。

振り返るとそこには、帝国の第2皇子である男が、傲慢な笑みを浮かべながらワイングラスを傾けて近づいてきていた。

「見慣れないお顔だ。どちらの貴族の方かな? よければ、私のプライベートな離宮にご案内しますが……」


(うわ、最悪。こういう空気の読めないナンパ男、一番面倒くさいのよね)


茜は内心で盛大にため息をつきつつ、顔には完璧で作り込まれた淑女の微笑みを貼り付けた。

「お誘いいただき光栄ですわ、殿下。ただ、あいにくわたくしは、夫や家庭という『守るべきもの』がありまして。軽率に他の男の巣穴についていくほど、危機感のない主婦ではないのです」


「は? 主婦……? 一体何を――」


第2皇子が怪訝な顔をしたその瞬間、茜はわざとらしく足を滑らせたふりをして、手元にあった濃厚な赤ワインのカップを、皇子の真っ白な高級軍服の裾に綺麗にぶちまけた。


「きゃっ! まあ、お戯れを……失礼いたしましたわ!」

「なっ……! ぐっ、この服は特注の……!」


皇子が青ざめて叫んでいる間に、茜は優雅に一礼し、群衆の影へとスッと姿を消した。

騒ぎに乗じて茶会のエリアから抜け出した茜は、皇宮の奥深くへと続く回廊の影に身を隠す。


(ふう、厄介払いは完了っと。……それよりも収穫は十分ね)


茜の頭脳には、茶会で得たすべての情報――皇妃と宰相の会話、神殿の地下牢の存在、そして次元を超える実験の真実が完璧にインプットされていた。

帝国の首都、そして神殿の急所を握ったいま、反撃の時は近い。


最強の元主婦による、世界を揺るがす大がかりな「しつけ」が、いよいよ本格的に始まろうとしていた。

シーズン2第6話「皇宮の茶会」をお読みいただきありがとうございました!


皇宮の華やかな茶会に潜入し、ナンパしてきた皇子にワインをぶっかけるスカッとするシーンを挟みつつ、神殿の企む「次元を超える狂気の実験」の真相に迫る重要な回でした。

次回、第7話「裏切りの皇子」もお楽しみに!よろしければブックマークや評価、感想をよろしくお願いいたします!

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