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元主婦、異世界で暗殺者となり世界を救う ~裏切られたので暗殺ギルドごと王国を乗っ取りました~  作者: 凪塩 未来


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シーズン2 第5話:極秘任務、皇都潜入

シーズン2第4話をお読みいただきありがとうございます!


帝国軍の背後に潜む「神殿勢力」の影を掴んだ茜。根本から敵を叩き潰すため、彼女が選んだ次なる一手は、なんと敵国・ガルド帝国の首都への単身潜入でした。今回は少し長めに、華麗なスパイ劇をお届けします!

ガルド帝国の首都――『帝都ヴェルガ』。

大陸全土の中心にそびえ立つその巨大な皇都は、高い黒鉄の壁に囲まれ、天空には魔導飛行船が優雅に往来する、圧倒的な繁栄と軍事力を誇る街だった。帝国の皇宮からは黄金色の光が放たれ、往来を行き交う貴族たちは贅沢な毛皮や魔導甲冑に身を包んで傲慢な笑みを浮かべている。


その華やかな表通りの一角に、ひっそりと佇む高級サロンがあった。

「――おや、奥様。そのお召し物、非常に珍しい仕立てですね。どちらの工房のものですか?」


上品な笑みを浮かべ、紅茶のカップを傾ける貴族の夫人が、隣に座る美しい黒髪の女性に話しかけた。

問われた女性――黒の高級ドレスを完璧に着こなし、まるで長年この上流階級に身を置いていたかのような気品を漂わせるその人物こそ、身分を完全に偽って帝都へ潜入した宮内茜その人だった。


茜はふわりと優雅に微笑み、カップをソーサーに戻した。

「あら、お目に留まりまして光栄ですわ。これは少し遠い東方の小さな王国から取り寄せたものでして……。なんと言いますか、余計な装飾を削ぎ落とした『機能美』を重視しているのです。お目が高いあなた様なら、この無駄のなさがお分かりいただけるかと」


「まぁ、機能美、ですか。面白い表現ですわね」

夫人はすっかり魅了されたように目を輝かせた。


もちろん、そのドレスはクタバレ王国の工房で、茜自身が「動きやすさと上品さの両立」を徹底的に指示して特注させたものだ。茜はわずか数日のうちに、帝国の貴族社会のネットワークへと完璧に溶け込み、上流階級の奥様たちをすっかり手玉に取っていた。

元主婦としての卓越したコミュニケーション能力、そしてママ友付き合いやPTAで培った「相手の懐に入り込み、機嫌を取りつつ情報を引き出すスキル」は、異世界の高級スパイ活動においても圧倒的な威力を発揮していたのである。


(ふふ、情報収集なんて、要するに近所の奥様方の井戸端会議の高級版よ。誰がどこで不倫しているとか、どの家が財政難だとか、そういうドロドロした裏話ほどすぐに出回るんだから)


サロンでの優雅な歓談を終え、茜は夕暮れの帝都の街並みを馬車から眺めていた。

表向きは華やかな帝都だが、茜の鋭い観察眼と、暗殺ギルド『カナリア』から送られてくる裏のデータが、この国の本当の姿を暴いていた。

帝国軍がなぜあそこまで強力なのか。そして、背後にいる神殿が何を企んでいるのか。その核心に迫るための手がかりは、この帝都の地下、あるいは皇宮の奥深くにある。


馬車が静かに皇宮近くの貴族街へ差しかかった、その時だった。

街の路地裏で、帝国軍の兵士たちが一人のローブ姿の人間を乱暴に引きずり回しているのが見えた。


「おい、神殿の聖職者様よ! 皇都の警備に協力しろと言っているのが聞こえないのか!」

「は、離しなさい! 私は神聖なる神殿の使者だぞ!」


ローブの男が叫んだ瞬間、そのフードが脱げ、茜の瞳にその顔が飛び込んできた。

――その額には、かつてアルスの周囲や、この世界の理を歪める者たちが身に纏っていたものと同じ、不気味な神聖文字の刻印が浮かび上がっていた。


(……神殿の人間が、帝国軍に拘束されている?)


茜はすぐさま御者に馬車を止めるよう命じ、影に身を隠しながら、その様子をじっと観察した。

表向きは手を組んでいるはずの「帝国軍」と「神殿勢力」。だが、その内部ではすでに、何か深刻な亀裂や利権の擦れ違いが生じているらしい。


(なるほどね。仲良しこよしで世界を滅ぼそうとしているわけじゃなさそうね)


茜の唇に、冷たく美しい笑みが浮かんだ。

利用できるものは、敵であっても徹底的に利用する。そして、自分たちの家庭(王国)の平和を脅かす者たちは、残らずその足元から崩壊させてやる。


帝都に潜入した最強の元主婦による、神殿と帝国の内部崩壊工作。

その歯車は、いまや音もなく、しかし確実に回り始めていた。

シーズン2第5話「極秘任務、皇都潜入」をお読みいただきありがとうございました!


貴族のサロンに完全に溶け込み、主婦のコミュニケーション能力(?)をフル活用して情報収集を行う茜の無双スパイ回でした。帝国と神殿の間に生じる亀裂の影も描かれ、いよいよ物語が大きく動き出します!

次回、第6話「皇宮の茶会」もお楽しみに!よろしければブックマークや評価、感想をよろしくお願いいたします!

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