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先祖返り


「最近、ヘンリエッタ様とよくお会いになっていると聞きましたの」

「あ、はい……よくしていただいております」


サンドラ王女が私の顔を窺うように問うてきた。

戸惑いながらも頷くと、三人の顔色がぱあっと明るくなった。


「やっぱり!ついに魔法を習い始めたのですね!!!」

「わわわ、い、生きててよかったです…」


イザベル様は拳を握って鼻息荒く迫ってくるし、エルシー様はどこかに祈り始めた。おお、神よ、とでも言わんばかりに。


「わたくし達も魔法が使えるのですが、あなたは先祖返りでしょう。先祖返りの保有する魔力量はとてつもないものです、そして今生存確認がされている先祖返りはあなた含めこの国には三人。とっっっても貴重なんですわ、あなた方のような存在は」


サンドラ王女が熱く語り始めた。

眼力と熱量がすごい。


先祖返りのことは、ヘンリエッタ様から聞いていた。

今確認されているのはたった三人だが、国が把握しきれていないものもいるかもしれないと。

私は髪にその証が出ているから分かりやすいが、証が瞳に出ることもあるし、色を魔法でわざと隠すものもいる。

だから、実際のところは分からない。


でも、彼女達がどうして私と仲良くなりたいかが分かった。

私が、先祖返りだからだ。

魔法が使えるからだ。

それが分かったとき、何故か少しがっかりしてしまった。

でも、それと同時に納得した。


「……そうなんですか」


口元に笑みを浮かべて言ったつもりだったが、尻すぼみに言葉が小さくなっていった。

目の前の三人の顔が曇る。

いけない、雰囲気を壊してしまった。

せっかく楽しくおしゃべり出来ていたのに。


「……。あなたが先祖返りであることは、きっかけの1つにすぎませんわ。夜会では、ハワード家の双子といえばとても目立っていました。シンシア嬢はあの通りですし、でもあなたは……社交辞令程度の挨拶は皆と交わすものの、どこかいつも冷めていて、でも寂しそうで。そんなあなたが気になって、仲良くなりたかったのです」

「でもなかなかお話をするきっかけが見つからなくて、そうしたら最近ヘンリエッタ様とお会いしていると聞いて、これだと思ったんです」


私は周りからそんなことを思われていると知って、とても恥ずかしくなってしまった。

いたたまれない。


「そんな細かいことまでは私達以外は気付いてないわよ、良くも悪くもみーんないつもシンシア嬢の方を見ているんだから」


イザベル様が頬杖をついてつまらなさそうに言った。


「そうなんですか……」

「そうですわよ、それにブレイズ公爵だって、あっ!噂をすれば!あなた!ちょっとこっち来なさい!」


サンドラ王女が私の後ろを見て大きな声をあげた。

私達三人もそちらを向くと、エヴァン様がちょうど渡り廊下を歩いているところだった。

彼も気付いたようで、目が合うとびっくりしたように目をまん丸にした。


「サンドラ王女、皆さん御機嫌よう。クローディア、いじめられてはいない?」

「まあ、失礼ね!!そんなことをするわけがないでしょう!どこかの誰かさんとは違うんだから!」


彼の挨拶を無視してイザベル様が食ってかかった。


「エヴァンもエヴァンよ、全く。あの性悪に惚れてるって信じられないわ、趣味が悪い」


彼とは親しいらしく、彼女の攻撃は容赦なく止まらない。

とりあえずイザベル様はシンシアのことが嫌いらしい。


「はは、まあまあ、怒らないで。おバカさんでなんにも気付いていない愚かなところとかさ、可愛いと思わない?」

「……」


それ以外に好むべきところある?と、彼はとても爽やかに笑った。

だが、話す内容は爽やかさは微塵もなかった。

もう、棘しかない。

というか、イザベル様はシンシアのことを性悪としか言わなかったが、先程の口調を聞くに彼はシンシアのことを言っていると気付いたらしい。

それにはさすがのイザベル様も黙り込んでしまう。


え、エヴァン様はシンシアのことが好きなのよね??

屋敷にもあんなに通ってきていたし、好きではない方にあそこまではしないわよね??

……急に自信が無くなってきた。


「急に静かになったけど、どうしたの?」

「……ほ、ほんとうにシンシア嬢のことはお好きなんです、よね?」


エルシー様が口元を引くつかせて問い掛けた。

エヴァン様は、一瞬きょとんとした顔になったが、いつもの胡散臭い笑みを貼り付けて口を開いた。

その時だった。


「ここにおられたのですね!宰相閣下がお呼びです!」


宰相補佐がエヴァン様を呼びに来た。

急いでいたらしい補佐は立っていた彼しか目に入っていなかったようで、奥にいた私達に気が付くと、焦ったように礼をした。


「申し訳ございません!お取り込み中でしたか」

「いえ、かまいませんわ。ブレイズ公爵、仕事中足を止めさせて悪かったわね。お行きなさい」


サンドラ王女がエヴァン様にしっしっと、手で払うような仕草をした。

彼は苦笑し、軽く礼をすると、まだ顔の青い補佐と一緒に歩いていった。


「結局、聞けずじまいでした」

「巷では、エヴァンはシンシア嬢に骨抜きにされてるとかなんとかって噂なのだけれど、あれを見るにそうでもないみたいね」

「噂は当てにならないものですわねー」


三人は、エヴァン様が去っていた方を見ながらクッキーをサクサクと頬張っていた。


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