表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

王宮からの招待状

 

「お嬢様!起きてください!!!早く!!」


「……んん……」


 いつになくイリーナに乱暴に起こされて、私は少し不機嫌だった。

 時計を見るとまだいつもよりだいぶ早い時間。

 今日は特に予定はなかったはずなのに。

 のろのろと着替えと洗面をすませ、階段を降りている時だった。

 バタバタと騒がしい。

 不思議に思っていると執事のルードと目が合った途端。


「クローディアお嬢様!!!」


 大声で叫ぶように私の名前が呼ばれて、びっくりしてしまった。

 その声を聞いた下の階にいた人達が私を見る。

 お父様お母様と、シンシア、それにルード。

 何故皆こんなに早いのかしら、何かあったの?


「クローディア、早くこちらに来なさい」


「はい」


 お父様に急かされて、私は階段を降りる足を早めた。


「こんなに早くからどうされたのですか?」


「……これを」


 質問には答えず、お父様は私の前に一通の封筒を差し出した。


「?」


 私はおそるおそるそれを手にとる。

 手触りがいい、上等な紙を使っているようだ。

 高位の貴族からだろうか?

 かといって、ヘンリエッタ様は、いつも魔法の鳥を飛ばしてくださるから違うだろうし。

 私にお手紙をくれるような方なんて、他に誰がいたかしら。

 差出人を見ようと封筒をひっくり返した。

 だが、封蝋を見た瞬間私は固まった。


「王家から私に……?」


 見覚えのありすぎる刻印だった。

 差出人は第二王女のサンドラ王女。

 私に何の用があるというのか……

 騒いでいた周りもいつの間にか静かになり、固唾を飲んで私の言動を見守っているようだった。

 ゴクリと唾を飲んで封を切る。

 中からこれまた上質な紙の便箋を取り出して開いた。


 ―――――……


 書いてある内容はにわかには信じられなくて、何回も目で追って読み直した。

 時間をかけて読み終わると便箋をまた折って封筒に戻す。


「ク、クローディア、そのお手紙はなんだったのですか」


 お母様の声が震えている。


「王宮で行われるお茶会への招待です」


 何故私が招待されたのか謎ではあるが。

 王宮でのお茶会というと、王女と選ばれた高位の令嬢が行っているもので、伯爵令嬢である私は今まで呼ばれたことがなかった。

 それもそうだ。

 皆雲の上の存在なのだから。

 夜会でたまに見かけてご挨拶することはあっても、その程度。

 特に友人や知り合いというわけでもない。


 私の言葉を聞いた皆はこれでもかというほど目を見開き、口をパカリと開けて固まった。


「何故クローディアなんだ……」


 一番初めに我に返ったお父様がぽそりと呟いた。

 それは私も思っていたのですよ。


「シンシアならまだしも……」


 そこか。

 なるほど、我が家ではそういう考えに至るのか。

 我が家では彼女はちやほやされている。

 夜会に出席したときも。

 だが、特に本人に突出しているものもなし、傍から見ると私達は等しく伯爵令嬢である。

 まあ、この親の考えがおかしいのは昔からなので、いちいち気にするのも馬鹿らしいのだが。


「お姉様、何かなさったのではないわよね?」


 ……それはどういう意味だ、シンシア。

 私の顔色を窺うように見て話す彼女に少し苛立った。

 彼女の話す様子から察するに、何か、というのは多分よくないこと。

 私がそれをしでかして、王女様や令嬢達の怒りに触れた、とそういうことを言いたいのだろう。

 つまり、友好的な招待ではなく、粛清的な意味の招待であると?


「……私の記憶にはないのだけど」


「そうなの?お姉様が分かっていなくても、無意識にその、怒らせてしまうようなことをなさった、というのも考えられるわよね?」


 どうしてもそこに結びつけたいらしい。

 たが、昔から決まってそういったことをするのはシンシアの方だ。

 数年前某侯爵令嬢の婚約者殿に手を出してお叱りを受けたのを忘れたのだろうか。

 たしかその時の言い訳は、私は知らなかったのです、だった。

 普段私を下に見ているから私が呼ばれて彼女が呼ばれないという事実を信じたくはないのだろう。


「ああ、そしたらシンシア。先日仕立てたばかりの新しいドレスを、クローディアに貸してあげたらどうかしら!」


 名案!とお母様は両手を叩いた。


 ……お母様は空気が読めない。


 案の定シンシアは抗議の声を上げた。

 そもそも、私はドレスをここ最近新調していないのだけど、シンシアは夜会に行くたびに新しいものが増えている気がするのは気のせいではなかったようだ。


「王宮に行くのに、相応しい格好でなくてはね!」


 私がそれに相応しいドレスを持っていないと言いたいのか。


「でもお母様!あれは私もまだ一度も着たことがないのよ!」


「いいではないの、一度くらい!双子なのだからサイズは合うでしょう?でも一度試着はしておいた方がよいわね、クローディア、今からシンシアの部屋で試しに着てみなさいな」


 お母様、気付いて。

 シンシアが私を射殺さんばかりの目付きで睨みつけていることに。

 胃がしくしくしてきました。


「……分かりましたわ、どうぞ、お姉様」


 シンシアに案内されて私は彼女の部屋に向かった。

 お父様はずっと何か考え込んでいるようだった。


 ―――――……


「このドレスよ」


 シンシアの部屋について、クローゼットを開きそのドレスを見た時、試着せずとも察した。

 そもそも彼女とは服の趣味が全く合わないし、似合う色も違う。

 彼女が好きなのはピンクや黄色などといった暖色系で、フリルにレース、リボンをふんだんに使ったドレスが多い。

 対して私はというと、ブルーやグリーンの寒色系、デザインはシンプルなものが多い。

 嫌いなわけではない、似合わないのだ。

 私の銀髪と紫の瞳に、可愛らしい色とデザインは。


「ありがとう、シンシア。私やっぱり自分の持っているドレスで出席するわ」


 ドレスを見た途端そう言った私にシンシアはそう、とホッとしたような声を出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ