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どうしてこうなった?

 リクエストでいただいた、『純夜くんと龍貴くんの二人年下END』です。穏便?な三角関係なので、そういうのが嫌いな方は注意してください。



 どうしてこうなった?


 私は声を大にして叫びたい。


 もう一度言おう。だからどうしてこうなってしまったのだろうか。

 ゲームと類似しているだけで、ここが私の知っているLienの世界ではないと気付いて自覚した時、それまで見えなかった。見ようとしなかった大量のものが見えてきた。

 それは悪い事じゃない──と思う。

 けれど気付いて分かった事は、私に対して向けられる感情。ソレは酷く私の心を揺さぶった。急に恥ずかしくなってしまい、今まで出来て当然だった当たり前の事が出来なくなった。

 恥ずかしい。本当に恥ずかしい。

 彼らよりも年上のはずなのに、私は初めて恋をしたかのように、心を揺さぶられ、頬を朱色に染めるだけでは飽き足らず、顔を見れば逃げ出してしまうまでになっていた。


 今までの無防備な自分の記憶を消したい。本当に消したい。心底消してしまいたい。そう思い、逃げ回った先にあったもの。

 外部の大学を受けても、自宅からは余裕で通える距離。電車は使うけど。だから生活のペースは然程変わらなかった。けど、やはり電車を使う分だけほんの少しだけ早く起きるようになった。

 全員分の朝食を作り、私は先に食べて30分早く家を出るだけ。

 そう、1人で食べて、一人で家を出て歩くだけ。だったのに。

 向かい側には純夜の姿。

 両親の朝食にはサランラップをかけてある。本来なら1人で食べているはずなのに、何故か純夜が一緒に食べている。

 もう1つの疑問は、何故か私と一緒に家を出るのだ。高校生の純夜にとってみたら30分早いのに。それですら、元々余裕があった時間だったのに。素直にそう思ってしまうが、それ以上の疑問が私の心を支配する。



「璃音。行こうか」


 そう言って、玄関で私を待っていた純夜が手を差し出す。勿論私にだ。

 私が高校を卒業すると同時に、“姉さん”と呼ばなくなった純夜。

 本来ならまだ出なくていいのに、結果だけみれば、私がつき合わせてしまっている。んだと思う。でも、大学に通い出してから毎日差し出される手の意味を、知らないとは言えない。


「あぁ。璃音が遅れちゃ困るしな」


 そして、何故か家まで来るようになった龍貴も、私に向かって手を差し出す。

 いつもだったら少しだけ、私達よりも遅くに家を出ていたのに。


「て……手を……両手を繋いで歩いていたら、歩き難いと思うのね」


 最近ではすっかり言い慣れてしまった言葉を口にするが、2人には全く通じない。


「駄目だよ。璃音」


 純夜が私の右肩に手を置き、耳元で囁く。


「それは駄目だって。なぁ……璃音」


 龍貴は左肩に手を置き、純夜に負けず劣らずの色っぽい声を私の耳元で囁く。そっ。そこまで距離を縮める必要はないと思うんだけど。

 ただ心の中だけで思っているだけなのに、それだけで噛み噛みだ。つい項垂れてしまった私に、純夜と龍貴が呼吸を合わせたかのように、頬にキスを落としてくる。


「──ッッ」


 何故か。本当に何故か、毎朝と言わずに少しでも気を抜けば、場所も然程考慮する事無くこうしてキスをしてくる。口以外は一通りされ済みだ。

 けれど一番の問題は、私がソレを嫌だと思えない事。恥ずかしいけど嫌じゃなくて──……寧ろ最近ではしてくれないと寂しいと思ったりなんかしちゃってるんだけど、これってどうなの?

 幼馴染みと義理の弟から、まるでお姫様のように扱われているこの現状を、受け入れてしまっている私。

 駄目でしょそれって。二股だよねこれ。付き合っていない男性からのキスが当たり前になっちゃったとかってどうなの!? 付き合ってないけど、やってる事はただの二股だよね。本当に。きゃーきゃーと悲鳴をあげたいけど、出来ない。

 それは人として駄目だと思うんだ。

 少し前に純夜に、『そんなに可愛い顔をして襲ってほしいの? 俺──……止まれないよ?」


 と、輝かんばかりの笑顔で言われた。

 ちなみにその場には龍貴も居て、『そうだな。そんな可愛い事をされたら抑えられないよな。なぁ、璃音?』と言われた……。

 両耳に囁かれて、パニックな私に2人は容赦なさ過ぎだ。

 おそっ……襲ってほしいだなんて。あぁぁ。駄目。照れる。恥ずかしいッッ。

 ごめんなさい。前世でも恋愛ぼっちでまともな恋なんてした事ないんです。だから前世の経験値なんてものは全く当てにならない。

 一体どうすればいいのか、全く分からない。

 本当にわからない。


「あぁ。また照れちゃって。今日の夜──璃音の部屋に行っていいって事?」


 いつ誰がそんな事を言ったのでしょうか。

 けれど純夜が素敵な表情と色気たっぷりな声で、耳元で囁かれるという非常事態。私は立っている事が出来ずに座ろうとしたら、2人に支えられる。すいません。お願いだから座らせてください。

 何かもう色々キャパがオーバーし過ぎて耐えられません。


「俺が支えてるから、体重は全部俺に預けて」


「俺がいる事も忘れないでくれな。璃音」


 抱きしめられるように私は2人に支えられ……というか、支えられる領分はとうの昔に過ぎてます。元々スキンシップ過多な所はあったけど、卒業と同時に過多を越えて何と表現していいか分からない状態になったんだよね。

 どうしてだろう。

 純夜も龍貴も、毎日のように私に愛を囁く。2人は自分達2人だからいいんだと言って、私を愛でてキスをして男を見せてくる。

 それに感化されたのか、慣れたのか。当たり前になってしまった自分も大問題! けれど純夜も龍貴も笑うのだ。そんな私の考えなんてお見通しとばかりに、綺麗な笑顔を向けてくる。私が色っぽくなった、なんてよく言われるけど、私以上に純夜と龍貴の色気が半端じゃない。恋愛初心者にはキツイ。本当にキツイアプローチ。


「「愛してるよ。璃音」」


 私が困ったように。でも嬉しそうなのが分かっているのか、2人は極上すぎる私に笑みを向けながらキスをした。







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