孤独な帝国 其の八
遅刻したけど当日中なのでギリ!ギリギリセーフということでどうか!
「ここら辺だったよな、壁の中に謎の空間があるって言ってた場所」
だらだらと喋りながらフェネクスさんの後を歩いていたら、例の場所で立ち止まったので確認をする。
ぶっちゃけ場所の景色なんぞどこもかしこも土壁か木の根の洞窟だからな、全く見分けがつかん。
[回答…種火の揺らぎで検査した場所と同じ場所です]
「ここが地下行きの隠し部屋がある場所なのねぇ」
事の顛末を事前に歩きながら聞いていた姐さんが壁に触れながらそういう...ただこう蜘蛛の部分の足先で土壁を少しずつ削ろうとしてるように見えるんですが、気のせいですかね?
「ここで合っていますよ、そして今からその内部にご案内いたします。これも仕事ですので」
そういいつつもやっと来た役割だからかほんのり楽しそうに見えるのは気のせいじゃないと思う。
っていうか普通仕事って報酬目的だからそんな顔しながら働けないって…この場所の探索が終わった後もフェネクスさんにはたまに会いに来ようかな。
「その持っているものは何かしらぁ?」
「鍵です。住宅の出入りを制限するための道具、とでも言いましょうか」
「そういや拠点は作ったけど鍵とかは作ってなかったな」
すっかり忘れてた、同じ寝床にきゅーちゃんがいるのが当たり前だったからな。安心感がセキュリティシステムと同等だったわ。
[警告…セキュリティの脆弱性を検知…冗談ですが。私達が最高のセキュリティですからね]
「そうだねー」
ブレスを吐けるきゅーちゃん、相手を拘束できる小ルラウネと拘束も毒も行けるアラク姐さん。
そして何もできない自分とその脳内に住むAIさん。
安全性だけならまぁそこそこの自宅になったものだなぁ…。
「少し後ろにお下がりください」
フェネクスさんの言う通り全員後ろへ下がる。
次の瞬間、今まで洞窟通路の壁でしかなかった土が一瞬にして崩れていった。
なんだろう…水で洗い流された泡というか、その位流れるように消えていったな。
「なんていうんだっけ、水泡に帰すじゃなくて…出てこないな、いいや」
「鍵を開けますが、大丈夫ですか?」
「あ、ごめん気にせず開けていいよ」
その金属の扉を気にするべきなんだろうけども、どちらかというとこの土壁偽装の方が気になってしまう。
どうも"未知のロマン"とか"この世界にない科学"とかも心揺れ動くが、それ以上に認識されにくくなるこの地下洞窟の一つ一つが気になるわ。
「ぜひ本拠点にも実装したいな。あ、そういう意味では早く地下に居るやつと話したいかも」
「そこなのねぇ…貴方前から思ってたけど本当に安全が好きなのねぇ…」
「死ななきゃ安いが座右の銘だ、生きて生きて生き延びて幸福をつかみ取るんだよ」
もしくは横から掠め取るか…まぁ似たようなものだし誤差だろう。
地下行きの金属扉…鍵を差し込み開かれる。
金属扉を偽装していた土壁…僅か数ミリ程度の薄く伸ばしただけのような土の壁だが、見た目からは他との判別がつかず、生半可な打撃、斬撃ではびくともしない。しかもその耐久性を脅かす攻撃を仕掛けると崩落の危険があるという罠。




