孤独な帝国 其の五
前回来た時はこの曲がり角を曲がったら外なんじゃないか!?
って向かったら行き止まりの部屋だわなんか立ってるわで引き返したんだよな。
「確認...前回同様存在しています」
「例の人型が突っ立ってるってことね...さてどうするか」
「話しかけに行ったらいいんじゃないかしらぁ?」
確かに今までもそうやって乗り越えてきたなぁ…っていうか獣人の里以外は全部対話だけで乗り切ったようなものか。
「しょうがないな、そしたら最初に話しかけてみるからヤバそうなら回収任せたよAIさん!」
「了解...尚多少強引な回収を行う想定です」
うーん脊椎とか痛めないかなそれ?
スライムの伸縮で引き戻されると鯖折になる可能性が常に脳裏に浮かび続けるんだよなぁ、助かるんだから文句は言えないけど。
「よし、この世界来てから「ファイア」と並んで大変お世話になってます「翻訳」改め「花鳥風月」さん!」
この「花鳥風月」なら言語体系のない物とも話せる...もしあの人型が人間だとしたら超長時間あの場所で微動だにせずとどまる呪いでも掛けられてるのか?この世界だと"無い"とは言えないかなぁ。
――――――――――
◆
「疑問...ご主人があの部屋の敷居範囲に侵入したと同時に一切の音声を感知できなくなりました」
「でも見えてるわよぉ、無事そうだし平気なんじゃないかしらぁ?」
曲がり角から覗き見る二人、下半身が大型の蜘蛛な為上の方から顔を覗かせるアラク姐さんと、
対照的に軟体の体を生かし、ほぼ生首と言っても過言ではない状態で下から覗き見るAI。
そしてその視線を背中に感じながらも何か話してるのか、それとも会話自体不可能で一方的な語り掛けになっているのか...それすら何故か聴き取れなくなったAIは不思議に思っていた。
◇
凄い後ろから視線を感じる...いや確実に覗き込んでるだろうけどそっちに目配せするほど余裕はない。
何故かさっきまで調子よく脳内で好き勝手喋っていたAIさん(脳内鑑定の方)が全く喋らなくなったから。
これが一時的な障害なら後でどうにでもできるんだろうが、遮断や妨害ではなく完全な削除だった場合非常に不味い。
主に自分の精神衛生的によろしくないし後ろで待ってる外付けがまるで予備みたいな扱いになってしまう...そういう悲しい展開の作品は苦手なんだ。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか...えっと、会話できますかね?」
「....................................」
おっと会話できないパターンか...?
「οπωρθνά ατνοχράπυ νοτ όπα ςήκιτεροφαιδ ςηψέκσ ησυενχίνΑ」
「あ、まだ翻訳かかってないのね...とりあえず会話は出来そうで何より」
そして相変わらず何言ってるのかは分からないな...でもここで日本語で喋ってないってことはこの世界の人間がベースなのか?
◆
その人型の思考は一点のみ...「この者はこの世界の人間か否か」と。
奇しくもお互いに同じ疑問を抱きながら会話を試みようとしていた。
製造された人型であり、表面以外はまるで生物とは呼べないもので埋め尽くされている。
内臓はなく、生命機関も存在せず、常に体内が燃え滾っていた。
地下の人のモチーフだけは決まってます。
全然地下っぽくはないけど。




