先発は潜り後発は進む
◆
「分かれ道か?」
少し広がった空間から進んだ先、ひたすら下り続けてきた洞窟で初の分岐だ。
実質ただの一本道だったからな、魔物もいないしマジでワインセラーにでもしようかと迷ったわ。
[疑問...食糧の貯蔵庫や発酵食品の製造場所では?]
「それも考えたけど、あまりにも通路が長かったからワインセラーも行けるかなって」
[.........ブドウは?]
「まだ見つけてないけど、小ルラウネ達にその辺詳しい奴いると思うんだよね」
そんなことよりこの分かれ道だ...さっきの謎の文章にこの分岐の事は書いてなかった。
解読不能だった部分がこの分岐だとしても、これを目印にして進むってのも謎だしな。
「右か左か...AIさんはどっちだと思う?」
[思考中.........どちらも同じところに通じている可能性は?]
「無くはない...けど分岐させる意味がない気がするんだよなぁ」
天運を取り出す、突き当りの中央辺りに立ててみる。
「右に倒れたか...それじゃ右で」
[疑問...理由をお聞きしても?]
「このやり方で川にたどり着いたからってのが一つ、あともしかしたら下りになってる方に倒れるかなって期待」
これで左が上りだったらここまで下ってきたのに地上行きになるかもしれない。
それ自体は別に悪い事じゃないが、下手に魔物の群れの巣とつながってたりしたら厄介だし、どうせなら地下の終着点をこの目で拝みたい。
「果たしてどんな場所が作られてるのか...工場っぽい感じならわかりやすいんだけどな」
右に曲がって今までより更になだらかな下り坂をAIさんと話しながら進んで行く。どうする、恋バナでもする?
◇
「ねぇきゅーちゃん?」
つぶらな瞳で見つめてくる、私なんかよりはるかに強い竜を撫でながら声をかける。
「川下の魔物倒すのにこんな時間ってかかるかな?」
私に小ルラウネなんて名づけた奴でも、私たちにとっては住む場所を守ってくれる奴で、なんだかんだ一日を暇なく過ごせる存在なのだ。
まぁ今となってはだけど、最初会ったときは滅茶苦茶怖かったし。
「うーん、あの頭の中の子?と会話しながらだから平気そうって思ってたけど、ついて行った方が良かったかなぁ?」
実際魔物と戦うなら自分は戦力外だ。
川下に居た魚型魔物に負けることは無いと思うが、避けれる戦闘は極力避けてきた種族。
根っこから臆病な種族と言っても過言ではないのだ。
「で、でも...帰ってこないのは...やっぱ寂しいもんね」
頷くきゅーちゃん、一緒なら少しは怖くないかも!なんて思い、川下へと向かう小ルラウネ。
尚、その竜の戦闘能力で特筆すべき点が木々を焼き払えるブレスなことを、彼女は忘れている。
◆
思いの外恋バナは盛り上がったが、小ルラウネやアラク姐さんの事を話すと若干頭が軋むのは何故だろう。AIさんに聞いてもスルーされたので恐らくそういうことなんだろうけど怖すぎない?謀反?
そんな軋む頭をゆらゆらさせながらAIさんと話してたお陰、とは言えないかもしれないが見つめていた指先の火がほんのわずかに揺れ動いた。
それも進行方向とは全く関係ない"左右"に揺れた。
「っと、AIさん鑑定よろしく。対象は左右の壁面」
[解析開始...]
自分も手で触ってみる。うん土の感触。
試しに天運で思いっきり叩くか迷ったが余計なことして崩落なんてしたら本当に何もかも水の泡になるので止めておく。
[完了...右の壁面内部、通常地中に存在しない金属物を検出]
「右の土壁が内側に何か隠してるってことね」
うーんあの謎の文章的に"もっと降りよう"がほぼ答えだと思うんだけどなぁ。
でももし予想通りならここを掘る作業は今の能力構成だと天井の崩落が心配になる。
天井も補強しておいてくれよ過去の誰かさん...。
「うーむアルラウネ達の誰か引き連れてもう一度探索かなぁ」
[了解...引き返して反対方向の探索を行いますか?]
「上り道の方ね、まぁそっちも気になるし行ってみるかな」
しかしこの地下...もしかしてこの世界の人間にとっても結構重要施設なのでは?
小ルラウネ:きゅーちゃんも一緒だし多分...安全!(ドヤッ)
きゅーちゃん:魚型魔物が来たら焼き払おうと考えている(範囲攻撃、引火しやすい同伴者)




