奪われた核と頼った者たちとの和解
アラク姐さんから手渡された「スライムの球体:気苦労を添えて」が思いのほか重かったので一旦きゅーちゃんに預けつつ、獣人の父親と今回救助要請をした娘の再開をぼんやりと眺める。
「そ、それ...あんたが持ってなくていいの?」
「ん?あぁきゅーちゃんに預けてるこれね...まぁ実際核が外に漏れだすことは無いし平気じゃない?」
いやアラク姐さん達が引き剝がしてるときに本当に核が生成されてたって聞いた時はかなり驚いたよ。
だって確証なかったし、会話自体碌に成立してなかった気がしてたが...多少意識は割いてくれてたんだなぁ。
「まぁ終わりよければなんとやらだ、無事?解決して何より」
「いやまぁ...何人か獣人?の人たち食べられちゃったらしいけど...ね」
そう、到着前に既に捕食された奴もいたらしい...ただそれを悔めるほどまだ獣人達とは仲良くなれてない。
それに前提として自分たちの住処に被害が出るかもしれないからどうにかしなければ!って理由が大きかったから、人助けは父親だけに意識を割いていたからな。
「ここに着く前に起こってたことだ、実際自分たちが到着してからはそこまで被害は出てないみたいだし気にし過ぎるなよ?」
「うん、分ってるわよ...」
まぁ思うところがあるんだろうなぁ...アルラウネ達にとっては十分生態系の上に位置する獣人が被害にあっているんだ。もしかしたら自分たちも同じような目に合っていたかも?って考えてもおかしくはないしな。
「さてと...しかしこの球体どう処分したものか。古龍さん辺りなら喰ってくれたりしないか?」
「私が実験で使ってみてもいいけどぉ?」
「それ安全性皆無だろ…姐さん達が捕食なり乗っ取りなりされた日にはそれこそ対処不可能になるわ」
あの機動力で糸と毒持った環境適応捕食型スライムとか、実験場から逃げ出した危険生物だろ。
昔読んだぞそんな感じのパンデミック系の小説、あれは最終的に地域ごと高火力兵器で焼き払う寸前で人類と和解する感じの最終回だったな…オチは結構賛否両論だったから世界滅亡IFを作者が出して鎮火してたのを覚えてる。因みにそのIFは結構好きな終わり方だった。
[質問...相談があります]
「ん?なんか解決策あるのか?」
「「「???」」」
毎回声に出してAIと会話してるからいい加減周りの目が辛くなってきた...いや説明してもいいんだけどなんというか、面倒なんだよなぁ説明するの。
どういえばいいんだよ、寝てたら脳内から天の声が聞こえて次の日その声の主が頭の中に居ましたって説明理解不能すぎるだろ!
[模範解答では?]
(だとしても理解を得られる気がしない...)
っていうかマジで解決策あるのか?
今の所本命が古龍さんのご飯、大穴にアラク姐さんの実験体だぞ?
少なくとも対抗馬に出来るような代案があるんだろうなぁ?
[回答...そのスライムは変異個体であり、既に自我を確立し、維持が可能な"核"を保有しています]
「ふむふむ」
[且つ、現状其の"核"は弱っている状態です]
「まぁ麻痺してるしぼっこぼこにされてたしな」
おや周りにいつの間にかアラク姐さん達も小ルラウネ達も集まって、あれ私がこの輪の中心?
良いんだよ皆広がって、獣人達と仲良くお話してきても?あっちはあっちで生の喜びに忙しいか。
[結論...その核の人格を消し飛ばして、私が外付けのAIとなります]
ふむ...その......えーっと?つまり...つまり?
「どゆこと?」
[こういうことです...人格の複製開始:および常時思考共有且つ演算処理の設定]
頭の中で突然何かを実行するのはやめろ!というか複製って言ったか今!?
[続けて対象指定...完了:異常個体の球体核を補足、内部人格を解体...しばらくお待ちください]
「コンビニの電子レンジかお前は」
「こ、こんびにってなに?」
「あぁすまん小ルラウネ...多分この後ちょっと驚くことが起こると思うから腰抜かすなよ?」
「森の上位種を捕まえた今、そう簡単に驚かないわよ!」
わぁ―いつも見事なフラグを建てることで...まぁええか、忠告はしたから。
[解体完了:注入開始...保護している糸の解放を要求します]
「あーアラク姐さん、そのスライム覆ってる糸ほどいちゃっていいよ。きゅーちゃんもそれこっちに頂戴?」
「な、何言ってるの!?」
「いいわよぉ?」
きゅーちゃんも渡してくれてありがとね、凄い不安そうにしながらだけど大丈夫。
渡された掌の上で糸が解かれて、解けて、崩れていく…。
そしてついさっきまで殴ったり引っ張ったりしていた黒色の「粘性の何か」が姿を現す...。
「さて、おはようというべきか...それとも初めましてかな?」
「えぇそうですね、初めましてで良いのではないでしょうか」
[同位体:AI...二人まとめてよろしくお願いしますね]
「私は所謂遠隔デバイスのようなもの...だとしても雑に扱わないでいただければ幸いです。ねぇ、ご主人?」
掌から腕に纏わりつき、そのまま自分の全身を這う。
先ほどまで「粘性の何か」だったそれは...天の声から「鑑定」という能力へと変わり、そして今...悪戯な笑顔を浮かべるようになった。
「っていうか人型になれるのか!?」
「当然、先ほどまで人型の獣人を支配していたこの身体をそのままいただいたので、能力も技術も据え置きですよ」
「マジかよ」
あぁマジだわ、さらっと肩甲骨があるはずの場所から腕生やしやがった。
いやまぁ仲間が増えた、増えた?元々頭の中にいた相棒が肉体を得たっていうかなり熱い展開なんだが、元の肉体がスライムなせいで見た目が自由自在という...。
[あ、私も脳内で健在なのでお忘れなく]
便利な体になりました!じゃねぇよ!!
スライムの自我は会話で確立したというより、話しかけられてるのは自分...自分ってなんだ?
位の感覚で目覚めただけ。
あと核自体は最初からあった。だって他の獣人取り込んだりしてたし...腕の複製とかできてたし...あんな思考"核"ありきですよそりゃ。
AIは女体の人型で主人公に纏わりつくヴェ〇ム的な感じ。




