奪う者と頼る者 其の三
眠い、引き延ばそうとしてるわけではないが、もっと長く書きたい気持ちがある。
川を渡り、アルラウネ達が元々住んでいた所を通り過ぎ、途中のアント達に声をかけておく。
と言っても既に簡単な連絡は入っていたので、手を貸してくれる人員を確認するだけだが。
「あ、女王蟻の護衛の時期なのね?」
難しそうな顔して蟻塚から出てきたから何事かと思えば、どうも女王蟻の体調が優れないらしい...そんな状況でわざわざ森の上位で、しかも体を乗っ取るかもしれないような奴と戦いに来てくれる奴は居なかったらしい。
「といってもまぁ無理してこっちに参加してもらうような契約はしてないからな、気にせず女王様によろしくと伝えておいてくれ」
「き、気が向いたらてつ...手伝いに来てくれてもいいからね!」
まぁある程度終わりが見えてきたら手を貸してもらうのも良いかもな...いや寧ろ「只の回復」で女王蟻を治せばとか考えたが、まぁ無理だな。
[質疑...理由の説明]
「んーいや、女王蟻様が怪我だの病気だのならもしかしたら効果あるかもしれないけど、これで治せないような重症だったり呪いみたいな管轄外の物だったりしたら、寧ろ不敬扱いで交友関係が切れるかもしれないかなら」
実際そうなったらかなりマズい、小ルラウネ達の身の危険は一応自分が守るという名目で預かっている状態だ。ここで友好関係に亀裂でも入ろうものならこの後の小ルラウネ達の士気が下がるどころか敵前逃亡すらあり得てくる...それは勘弁してほしいからな。
「な、なにぶつぶつ言ってるのよ?」
「いや、アルラウネ達が恐怖で一斉に逃げ出したらどうしようかなぁって」
「さ、流石に今回みたいな状況じゃ...逃げたりしないとお、思うわよ?」
本当かなぁ...いや信用はしてるんだけどね?
ただまぁ、逃げそうだなぁという思いが頭の片隅から離れないのよね。
読んできた小説の種類のせいか分らんけど、どうにも完全に信用、信頼するってのが難しくなっている気がする...。
「まぁ無理そうなら逃げるのも大事だからな、危険を感じたらすぐ逃げろよ」
「多分、言われなくても私たちはそうするわ...」
そんなセリフの時だけまっすぐな目をするんじゃない!
普段のオドオドした雰囲気一切なく、淀みない目ではっきりと言いやがったぞこいつ...そして他のアルラウネ達も同意するように頷きやがって...。
「逃がさないように縛っておきましょうかぁ?」
「アラク姐さん、それはそれで士気が下がりそうなので無しの方向で...どちらかというと逃げるときに引きずる感じでお願いします」
「まかせなさいなぁ...あぁそれとぉ、獣人ちゃんがさっきからあまり指示を出さなくなったからぁ…しばらく直進みたいよぉ?」
数キロ先右折って言われた気分だ。そりゃそれまでは直進でしょうねぇってか?
たださっきからちらちら見える獣人ちゃんの表情的に、結構いいペースで動けてるみたいだ。
流石にアラク姐さん達の機動力が異常なだけだろうが、それにしたって早いからな。
「なんだろう、段差と障害物を無効化する熊に乗ってる気分だ」
「それは誉め言葉かしらぁ?」
「ウン、ホメテルヨー」
馬並みに速く、森の中という直進には不向きな環境でほぼ減速せず動ける機動性。
大人子供関係なく人を乗せたままそれを軽々とこなす圧倒的な力。
うん、熊って感じだ...それも家みたいなサイズのヒグマを戦闘力だけ抽出して人型にまで圧縮したような。
「アラク姐さんなら単騎でそこそこの集団なら壊滅できそうですね…」
「そうねぇ...しっかり鍛え上げた冒険者の一団は厄介だと思うけどぉ、後方から不意打ちで壊滅させていくなら出来るかしらぁ?」
暗殺適正もお持ちで...そらそうだわな、こんだけ大勢で結構な速度出してるのにほぼ音しないんだから。
「でもこれから会敵する相手は物理無効っぽいしなぁ」
「それ、試したらあの子の親諸共やっちゃいそうじゃない?」
びくっと震えた獣人の子に「そんなことしないよ」と、決して本気だと思われないよう軽く伝えつつ、実際諸共消し飛ばすのが一番手っ取り早いだろうなと思ってたことは言わないでおく。
事実は時に人を傷つけるだけだからな、ここは嘘ではなく沈黙が正解だ。
「そろそろ見えてくるそうよぉ?」
「全員警戒態勢、即散開できるよう準備!」
「「「了解!」」」
さぁ、アラクネ達約20騎。アルラウネ達15木。人間、獣人、竜が各1ずつ!
「開戦じゃあああぁぁぁ!!!!」
開けた森の視界から、獣人達の畑が目に入った。
――――――――――
◆
「足音が近づいてきているぞ!」
「結構な数だ...畑の後ろの森からだ!」
「おいよそ見をするな!また腕が増えたぞ!?」
[■■■] 満たされない
[■■■] まだ足りない
[◆] (仲間を襲わないでくれ!)
[■■■] 黙って喰われていろ......?後ろが騒がしい
開戦




