奪う者と頼る者 其の二
自分の妄想から産まれた世界を広げることのなんと難しい事か...
「ひとまず案内はこの子に頼むとして、アラク姐さん乗せたままでいてあげてくれる?」
「良いわよぉ...後で何かお願いさせてもらおうかしらぁ」
まぁ他種族の里一つ救えるならお願いの一つぐらい…うーん腕一本とか言われたら流石に困るかな?
でも別に人間は美味しくないらしいし、それよりは研究の手伝いとかの方が報酬になるのではなかろうか。
[補足...周囲への自慢目的の報酬という可能性]
(ありそうだから困るんだよなぁ...いや好かれてるのはありがたいのだけども)
小ルラウネ辺りにマウント目的で見せびらかすような報酬要求されるかもしれんが、まぁそういうごちゃごちゃした面倒事は後回しだ。未来の自分に雑な梱包で発送しとけ。
「こ、これからこの森の上位の奴と戦うかもしれないのに...何考えてるの?」
「んー、アホな事かな。気にしなくていいよ小ルラウネ、明日の自分がどうにかしてくれるはずだから」
「ま、丸投げ!?」
そうだよ、面倒な事って言うのは大抵昨日の自分からぶん投げられて届くものなんだよ。
昨日の自分を殴りたくなったらやっと二流ってところだ、一流は更に明後日辺りに着払いで郵送する。
とりあえず今すべきことは単純だ、戦力を集める。
一応アント達とアラクネ達には姐さん経由で声掛けしてもらったが、相手が捕食者である以上アルラウネ達は後方支援組だ。こいつら前線に出して間違って一人でも喰われてみろ...木と同化する不意打ち奇襲型スライムとかどうやって勝てばいいんだ。
「いやでもアラクネ喰って機動力お化けになっても、アント達喰って戦略型になられてもどっちにしろ困るな…やはり電撃戦か」
「で、でんげきせん?」
「相手に何もさせず機動力で理不尽を押し付けて速攻で決着をつける、ただ失敗すると笑えて来るほどすべてが瓦解する」
大体の歴史で失敗してきた作戦のはずだが...今回に限って言えばこの作戦しかないわけで。まぁ軍略系の小説とかでも突発的な電撃戦とかあるし、それが役に立つかはわからないけど...一応保険の作戦は考えておくか。
「アラク姐さん、自分スライムって見たことないんだけどさ...あれってやっぱ体が流動体なの?」
「そうねぇ...全身が意思を持った液体って感じかしらねぇ?固体として捕まえるのは難しいと思うわぁ」
「逆に固体に留める方法とかって知ってる?」
にぃ...と笑う姐さんに若干背筋がぞわぞわする感覚を覚える。
これはあれだ、自分の欲しい答えを得られた時のヤンデレキャラの表情とそれを見て蛇に睨まれた蛙になる主人公の構図ッッ!
「凄い食べられそうな表情で...めっちゃぞわぞわするわ」
「ふふっ...たっぷり時間をかけて食べてあげましょうかぁ?」
「だ、だめよ!?」
きゅーちゃんと小ルラウネが同時にアラク姐さんに威嚇をする。
凄いぞ、きゅーちゃんはまだ威嚇としての雰囲気を保ててるけど小ルラウネお前、ぱっと見レッサーパンダの威嚇と大差ないぞ?
「し、心配してるのに凄い後ろから失礼な視線を感じるのだけど!?」
「気のせい気のせい、あと多分アラク姐さんの「食べる」って捕食じゃなくて別の意味だよな?」
なんとなく分かるんだが、これからある意味決死の戦いなのに凄く、こう...フラグが立った感じがする。
これが終わったらおねだりという名のデザートを食べるね?みたいな折れるタイプのフラグっぽいのがまたなんとも...。
「まぁどうもアラク姐さんの力...というか知恵?を借りれば「粘性の何か」こと異常個体スライムを固体として捕らえれそうなので、全員その瞬間を叩くイメージで行くぞ!」
「「「了解!!!」」」
「自分はきゅーちゃんと一緒に遠距離から状況確認しつつ指示出しと援護射撃、小ルラウネ達は他の奴らの援護、アラク姐さん達はその機動力でサポートに回りつつ、可能なら糸で捕縛、拘束をよろしく!」
「り、りょうかい!」
「まかせなさいよぉ」
「そして名も知らぬ獣人の子、案内宜しくね…?」
今にも泣きそうになりながら、姐さんの背中から頷いてくれたのを確認して自分も覚悟を決める。
いやまぁここで格好つける必要もないかもしれないが...折角だし気合い入れるのも兼ねてね?
「折角だ、獣人達にどでかい恩売る気持ちで行くか!」
「凄い...ず、ずるい気がする...!」
「漁夫の利とか、マッチポンプとかって言いそうだな」
[脳内資料参照...拾う神側の人間になるおつもりで?]
「生憎神とは会ったことが無くてな」
会えるならぜひ会ってみたい、じゃなきゃどうやってこの世界に来たのかもわからないからな...。
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◆
「操られているだけだ!」
「無理に攻撃をするな!それよりも動きを抑える方法を考えるんだ!」
[■■■] 前が見えない
「あれがこっちに移り変わるかもわからんぞ...近づきすぎるなよ!」
「あそこの娘はどこに行ったんだ...一緒にいただろう?」
「助けを呼びに行くと言っていたぞ、以前森で他の所の奴と会ったらしいからそこに助けを求めに行ったらしい!」
[■■■] 声が聞こえるが理解できない
「腕が、伸びた!?」
「違う、伸びてるのはがわだけだ!捕まるなよ!」
「おい、これ以上後ろに行くと人里の方に抜けてしまうぞ...?」
「下がる向きを変えろ!畑の方に戻すよう誘導するんだ!」
[■■■] おなかがすいた
「まずい...何人か喰われたぞ!?」




