不安の種はいつだって周囲の奴らが零す。
「とりあえず木刀は作ってくれてありがとう、ありがたく使わせてもらうわ」
「それじゃ、お昼食べる約束だからね!」
「一緒に食べましょうねぇ?」
そんな約束だったな、じゃあ「五穀豊穣」で米出してと。
なんとなく昔からしっかり洗って水切ってから米は炊いてるけど、最近の米ってほぼ洗う必要ないんだっけ?まぁ異世界に召喚してる米のブランドとか不明だから洗うけど。
「さて今日はどうするか...小ルラウネ、何か食べたいのあるか?」
「ちょっとは頑張ったから、多めに食べたいわ」
「アラク姐さんはー?」
「私はそこそこでいいわよぉ?あぁ、だったら命冥賀使って作ってくれるかしらぁ?」
おぉまさかの食材追加、しかもちゃんと人数分の生きた生肉...持ち歩いてるのか?
「内緒よぉ?」
「アッハイ」
おかしい、心を読まれた?心読まれたところで何一つ困らないというのが一番面白いがそれは置いといて、この肉で何作るかなぁ...。
[解析完了...命冥賀:部位「背面軟性肉」柔らかな触感と推定]
背面...背中...柔らかい背中側の肉ってことか...肩ロースでは?
ってことは丼にでもするか。だとしたら軽く焼きつつ味付けはアラク姐さんから借りた香辛料を適量。
きゅーちゃん印の炊飯器(ファイア+ブレス+古龍さんの鱗窯)で炊きあがった米の上に滴る油ごと乗せたらはい完成!
「えーっと、人造...蜘蛛造?お肉の適当丼です、どぞー」
「じ、字面が怖いわよ!?」
「あらぁ美味しそうだわぁ」
お米は一回で出せる量の問題で少なめだが、その辺はお肉の密度でカバー!
いや本当食事に関してアラク姐さんには今後も頼ることになりそうだ...あとは調味料だなぁ、そこら辺から岩塩取れないかな?
「なにか、頭の悪いこと考えてる顔してるわよ」
「小ルラウネ、それは中々の暴言だぞ?」
「い、いつものお返しよ!」
うーむそういわれると返す言葉はないな、頭でも撫でて茶を濁すか。
まぁそれはそれとして肉を食べながら気になった事を処理していく。
「小ルラウネ達から前聞いたけど、アラク姐さんって向こうに居た頃他の種族に会ったりしてるよね?」
「えぇ、会ったり追い返したりお話したり、色々あったわよぉ?」
今の所アルラウネ達から聞いた種族は「八脚」「翼腕」「獣牙」と、解決済みの蟻族ことアント族。
「八脚」はほぼ確定でアラク姐さん達の事なので今は関係ない。
「翼腕」は多分ハーピー系の種族だと思ってるけど情報不足。
「獣牙」はどうもアルラウネ達を襲ったりもするから敵対の可能性アリ。
「この中でアラク姐さんが見たことある奴っているかな?」
「そうねぇ...木の上で寝てた時に空を飛んでた子を見かけたことはあると思うわぁ」
[飛行個体、竜の可能性はありませんか]
(多分竜なら古龍さんが他の個体として説明してくれてそうだし可能性は低い、でもなくはないって感じかなぁ)
[了解...記録しておきます]
「獣っぽい牙がある子達はねぇ、人里の方に住む場所を移したみたいよぉ?」
「人里に?」
「人里の方によぉ。オークやゴブリンとかが細々暮らしてる森の方にわざわざ移り住むなんてねぇ...何か理由があるのかもしれないけどねぇ」
「食糧不足とか、他の種族に追いやられたりとか、その辺かな?」
「で、でもあの子達すごく強そうだったわよ?」
「小ルラウネちゃぁん?あの種族は確かに強いわぁ、でも決してこの森の上位ではないのよぉ?」
ほう、つまりアラク姐さんはその「獣牙」の種族より強い存在を知っていると。
古龍さんやきゅーちゃんみたいな竜って可能性もあるけど、今のいい方からして別の種族っぽいな。
「上位ってことは、問答無用の強さってことか?」
「そうねぇ...私達みたいな人型の種族とは完全に違う生き物って感じかしらぁ?」
「意思の疎通は出来たり?」
「無理じゃないかしらねぇ...貴方の能力で出来るかどうかは知らないけれどねぇ?」
ふむ...「翻訳」ももう少しで進化するみたいだし、意思疎通目的というより敵対してるかどうかの確認目的で接触するのはアリかもな。
「因みにどんな見た目とか...分かったりします?」
「この森の上位種はねぇ...私が知ってるのだとぉ「粘性の何か」と「生きた臓器」の二体かしらねぇ」
「どっちも聞いただけだと何もわからんな…」
「こ、怖そうってことしかわからない…」
うん多分とっても怖いだろうな、だって人間やアルラウネ達が最下層の生態系ピラミッドの上位だろ?
アルラウネという種族はまぁヘタレで逃げ腰で生存弱者だが、植物に関する一芸は自衛するには十分すぎる力を持ってる。
只の木の枝を砕けない木刀に加工するとか誰ができるんだ、その技術で防衛陣地作れるだろ。
そして問題はそこだ、そんなアルラウネですらこの森では最下層。人間と同じ順位だ、泣けるね全く。
いやまぁ特殊な能力があるこの世界で人間が最低限繁栄できてる時点で十分凄いんだろうが、この森で暮らしてみればそれがどれほど井の中か分かる。古龍さんとかあれ討伐できる生き物じゃないだろ。
「しかし...「粘性の何か」に「生きた臓器」かぁ...ろくな予感がしないラインナップだな」
「私が見たのはその二体ってだけよぉ、他にもいると思うわぁ」
「そんなにポンポン上位の生き物が出てこられても困るわ...一瞬で轢かれて消えるだろこの住処」
まぁアラク姐さんが見かけた程度なら近くにいるわけでも、こっち目指して突っ込んでくることもそうすぐにはないだろうけど。だから怯えて震えながらこっちに抱き着かないでくれ小ルラウネ...ガタガタ震えられると食べたばかりの昼飯がシェイクされてしまううううう。
「因みに見た感じその二体って、倒せたりとかできそう?」
「どうかしらねぇ...「生きた臓器」の方は無理じゃないかしらぁ。でも「粘性の何か」はねぇ、見かけたとき人間と鉢合わせてたのよぉ」
「え、そんな人里近くにいたの?」
「どちらかというとあの人間達が森の深くまで迷い込んでたって感じだと思うわぁ...まぁすぐに飲み込まれてたけどねぇ」
捕食系ですかその粘性生物...それ放っておくとこの森丸ごと飲み込まれたりしないだろうな?
っていうかもし肉体乗っ取れる系だったりしたら古龍さんに相談しとかないと自分の生活圏が脅かされるのでは!?
「粘性の何か」:どす黒い粘菌みたいなやつ。小説や漫画における序盤のスライム的な雰囲気を醸し出しているけど一介の冒険者如きじゃ束になっても喰われて終わりのやべぇやつ。
「生きた臓器」:アラク姐さんが開発した命冥賀とは全く関係ない...こともない。少なくとも発想の一つとして姐さんのどこかに根付いてはいる。
めっちゃ強いとかめっちゃ凄いとか、そういう感じともまた違うやつ。




