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蜘蛛の森は無音 其の四

突然だが、倫理観って何だと思う?

いま改めて思い知らされたが、あれは人に定義づけをしたものだから、この世界でどこまで通用するかなんて考えるだけ馬鹿らしいと今日自覚させられた。


だってオークの肉を各部位ごとに培養生成して生まれた瞬間から肉の部位として存在するってもうSFの領域じゃん!昔読んだ本にそんな展開あったわ...地球的惑星の人類適応人数が許容値を超えたから宇宙船で他の星に移住する的な作品。確か「異惑星逃避行物語(プラネットエスケープ)」だったかな、あの作品も倫理観を宇宙にかなぐり捨てた内容になって、最終的に移住先の惑星に着くまでに宇宙船内の食糧事情がクローン培養と謎肉生成で派閥争いが起きるとかいう、今読み返しても絶対脳が理解しきれない作品だと記憶してる。


話を思考から眼前の状況に戻すと、さっきまで話してたアラクネのお姉さんが他のアラクネを読んできた。そしてそのうちの一人が蜘蛛の糸で包んだ何かを持っていたので、さっきの話的に養殖した肉かなー?って楽観的に思ってたら「まだ生きてる肉」とかいう...自分は守備範囲外だったけど人によってはSAN値チェック案件じゃないこれ?


「え、っていうか普通に生肉の状態で動いてるけど...どういう仕組み?」


「気にしたらぁ...ダメよぉ?」


「めっちゃ気になるじゃん」


あ、でもきゅーちゃんは普通に美味しそうなもの見つけた目で見てる。ってことはこの世界ではこれがまとも...ではないと信じたい。いや、いまだ人里に行ったことがないから確信は持てないけど。


「因みにぃ...このお肉の名前はぁ、命冥加(いのちみょうが)っていうのよぉ」


「それはその部位の名前か?それとも全体通してか?いやどっちにしろ名付けた奴分かってて名付けやがったな!?」


いやうふふって笑ってないで教えてくれませんか!?ってかマジで生まれた時点で生肉ってことは親とかもいなければ繁殖もしないってことだよな。え、究極生命体?焼かれて食われるのが定めづけられてるけど。


「人の子が泣き叫びながら名付けた子もいるのよぉ...この霜降り(マーブル)って子がその子の連なる子(シリーズ)よぉ」


連なる子(シリーズ)って言っちゃったよ!」


っていうか霜降りって...いやそもそも確かマーブルって大理石模様的な...え、そういう感じ?


「因みに他の連なる子(シリーズ)って聞いても?」


アラクネ姉さんが「いいわよぉ?」と色気?を出しながら他のアラクネに指示を出して持ってきた様々な肉の部位(全部程よくぴくぴくしてた)を眺めつつ、話し合いの本題が明後日の方向に逸れていたので軌道修正をかけることに...いやめっちゃ気になったけどね!?なんだよ究極大腰筋肉って...シャトーブリアンじゃねぇか!


「いやまだまだ気になる所は山積みだが一旦話を戻したい...和解でも和平でもいいけど、協力関係というか、そもそもこっちは仲よくできたらいいなぁって思ってここに来たんだよ」


「そういえばそうだったわねぇ」


「っていうかアラクネの姐さんもしかしてここの一番偉い人だったり?」


「んふふ...どうかしらぁ?」


絶対そうじゃん...あと姐さん呼びは思いのほか気に入ってくれたらしい。


「因みに、今まで人と仲良くしてきた経験は...?」


()()()した子たちはいたと思うけど...まともな対話は実は貴方が初めてだったりするわぁ?」


おっと...?これはもしかして自分が珍しい奴的なあれか?

異世界物でありがちな「こいつ、他の奴と違う...?」ってなって好感度が上がるタイプの!?

でもアラクネの好感度上げたら捕食コースに突入しそうじゃね?


「因みにその辺の話を詳しく?」


「いいわよぉ...軽食を挟みながらしましょうかぁ…」


え、マジ?これ喰うの?マジで?あ、きゅーちゃんセルフ焼肉するならいったん外でやらないとここ燃えちゃうから!?


―――――閑話休題―――――


美味しかった、うん。

大前提、一切包丁含む刃物を用いずに立方体で生成された生肉こと「命冥加」の各部位。

きゅーちゃんと協力して火力調整しつつ焼いてるとき、断末魔は聞こえなかったが燃えながらのたうつ生きた生肉を見て若干心を削り、アラクネ達が持っていた胡椒(人間から()()譲ってもらったらしいもの)を軽くまぶして食べたそれは...舌の上で蕩けるように、筋など一切感じずまるで口内で蒸発したかの如く旨味だけを喉奥へと届けたその余りの旨さに倫理観とかモラルとか死生観とか全部誇り被ったタンスに押し込んで滅茶苦茶喰った。


「あー満腹だ...久しぶりの肉...肉?だったわ」


きゅーちゃんも流石に魚に飽きてたのか幸せそうだ...いやまぁ、うん。

倫理観さんには暫く押し入れに入ったままでいてもらおう。


「美味しく食べてくれたみたいで何よりだわぁ」


「アラク姐さん、滅茶苦茶美味しかったですよー」


「名前みたいになっちゃったわねぇ」


アラク姐さん、よくない?


「あぁ、そうそう...貴方の所と仲良くしましょうってお話ぃ、纏まりそうよぉ?」


「おや、肉喰ってる間に一体何が?」


「んー私が貴方を気に入ったって言うのが一つとぉ、今まで出会った人間と違うって言うのが他の子達の総意ねぇ」


わぉ思ったより印象が良さそうだ...マジで何故吊るされたんだ自分。

次回、アラクネの里編完結!かも?

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