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蜘蛛の森は無音 其の一

眠すぎて書くの忘れそうになっていたのは内緒。

森に来た...最初この世界で目が覚めた森と風景は似てるが危険度が違うらしい川を渡った方の森。

アルラウネ達と出会って、蟻族との和解交渉的なことをした森。


どうも川に近い所で出合った種族と、森の奥の種族とでは危険度が違うらしい…と、ガタガタ震えながら説明してくれたアルラウネ達を思い出しつつ、頭にきゅーちゃんを装備してズカズカと森の奥へ進んでいく。

って言っても道とかわかんないしアルラウネ達の旧里と蟻族の巣を直線で繋いでまっすぐ進んでるだけだけど。蟻族の巣を通り過ぎるとき名づけの件を聞かれて咄嗟に「アント・○○」って名乗れば?と言ってしまったらそれが採用されたらしい…。いいのかそれで、直訳で蟻だぞ?


「しっかし代り映えしない景色だな...本拠点の方は伐採もしたし、アルラウネ達が住みやすいようにずっと改築状態だから久しぶりに見てて暇な景色だ」


目が覚めて適当に放り投げた木の棒が倒れた方に歩いてた頃を思い出す...。いやあれですら数日前のはずなんだが、遠い昔のように感じてしまうのは直近の密度が濃すぎたせいか?





頭の上のきゅーちゃんが何かに気づいて、尾で背中をバシバシ叩く痛みで正気に戻った。

いやだって森代り映えしないんだもん!生き物ほぼいないし、鳥っぽいの見かけた気がするけど一瞬で視界から消えたし、なにあれUMA?


「んできゅーちゃん、何か見つけて叩いたんだよね?」


もし意味もなく背中を叩かれたんだったら高い高いLv100をお見舞いするぞ?

こう...古龍さんの翼の上に置いて「只の回復(ヒール)」使って、翼を動かした勢いでものすごく上に吹き飛ばす感じで。小ルラウネが吹き飛ぶ風圧だし多分きゅーちゃんも高く飛べるさ、着地?知らん。

いやそんなことは置いておいて、マジで何見つけたんだ?


「うん?何、上に何かいた?」


きゅーちゃんが頭ごと後ろに体重をかけるから視線が自然と上を向く。これ首大丈夫?耐荷重制限超えてない?


「おぉ、初めて見た...いや今まで出会った奴ら全員そうなんだけどね?」




木々の上、さっきまで殺風景とすら思っていた森の中で空を見上げる必要も感じなくなっていたせいで気づくのが遅れたが、なんと表現すればいいか...。大量の、そう大量に束ねた()()()()って感じだ。木々を繋ぐように放射状に広がった極太の蜘蛛の糸が、僅かな日の光をさらに遮って視界を占領する。


そしてその糸の上を当然のように歩く奴ら。事前に聞いていたから驚きはしなかったが、人型サイズの蜘蛛ってのは人によっては発狂ものだろうなと、特に嫌いではないからそう思えるんだろうな。

見た目的にはまさしくアラクネ的な感じだ。本来蜘蛛の頭部に当たる部分が人の上半身になっていて、

腹部にあたる部分との境目を中心に脚が生えているような感じ...あれ、普通の蜘蛛って腹側じゃなくて頭側に足が八本あるんじゃなかったっけ?


「どっちだったかな...そこまでしっかり観察したことはなかったぞ?」


アラクネが登場するような小説は挿絵や表紙がかなり気合入っていたが、今思えばあれも構造的には腹から脚が生えていた気がする...いや、こういうのを気にするのは野暮だな、うん。


「その形に進化したと割り切ろう、竜がいてアルラウネ達がいて、アント族もいる...今更のツッコミだな」


でも新しい種族に出会う度にツッコむ予感がする、いや決して悪い事ではないんだけどね?


「っていうかあれ...話しかけれるのか?」


上半身が人型であれば「翻訳」の対象になりそうだが、そもそも距離が遠い。

地上に降りていたアルラウネ達と違って完全に木の上が生活空間になっているようだ。

誰か一人ぐらい気づいて降りてきてほしい気もするし、そのまま喰われそうだからこのままの距離間で話したさもある。

怖くはないが、それはそれとして多分生態系ピラミッド的に絶対勝てないからな、種族としての差というかなんというか。


うーん、いつまでここで立ち尽くしてるんだといわんばかりにきゅーちゃんが尾をぺしぺししてくる、それ気に入ったの?

仕方がない、このままだと背中に意味不明なあざが出来そうだし...もうこの際勢いで声かけてみるか!


「おーーい、誰か聞こえてますかーー!?っていうかこの言葉通じてますかーーー!!!???」


『!ώδε οιοτέτ νοιοπάκ ςιεπέλβ αν οτσιθήνυσα οσόΠ ...ςοπωρθνά ιανίε νεδ ,Ω』


「おぉ、聞こえてはいるんですね!!」


それなら「翻訳」されるまでもう少しか...毎度この言語返還にかかる時間がいまいちわからないんだよな。なんというか、ゲームのロードが想像していた速度とずれていたようなこの感じ。


『人間さんがこんなところに来るなんて、珍しいわねぇー?』


「あら想像に反しておっとり系の喋り方」


威圧されたり殺意マシマシだったりヤンデレ的な感じだったり、古今東西創作物におけるアラクネの立ち位置は大抵物騒だが、なんというか...例えるとおっとりお姉さん系?

いやアラクネだから見た目とのギャップで中々に、そう...()()()()()()


「もともと読んでた小説の異種族系嫌いじゃなかったしな...まさか実際会っても平気とは思わなかったが...」


「あらぁ...何のお話ぃー?」


気づいたら目の前にいた...普通の蜘蛛と同じで腹の根元から糸を出して、それでぶら下がりながら降りてきたらしい。っていうか全く音しないの控えめに言って隠密性能高すぎない?

うちのアルラウネ達にもぜひ見習ってほしい...でもあいつら土に潜れるしまぁまぁ隠密性能高いか。


「こっちの話ですー、っていうか初めましてぇ、川の向こう岸に最近住み始めた者ですー」


若干つられて語尾が伸ばし気味になってしまったが、不快そうな表情はしていない...セーフかな?


「あらぁそうだったのぉ...大抵人間の方達って私たちを...「討伐だー」って勢いで訪ねてくるから、貴方みたいに普通に話しかけてきたのが珍しくてねぇ?」


「自分ちょっと特殊で、人里で暮らしてるわけじゃなくて...向こう岸で竜とアルラウネ達と暮らしてるんです」


きゅーちゃんが頭の上でドヤ顔してるっぽい気配を感じつつ、言葉にすると中々凄い生活環境なのでは?

普通に人間が自分たちと違う種族と暮らしてるって。


「ふぅん...じゃあ今ここに来てるのはぁ...()()()()?」





一瞬で両足を蜘蛛の糸で縛られて逆さ釣りにされてしまった...頭の上のきゅーちゃんは自重で落下していった。きゅ、きゅーちゃーん!!(落下ダメージなどない。竜だから。)

さて、どうしたものか?

アラクネ族:毒だの蜘蛛の糸だの、戦おうとすると厄介極まりないが、一番厄介なのはその隠密性。

まず足音がしない、糸を出す予備動作がない、糸の上を歩かれると追跡も逃走も一気に難しくなる。

なのでそもそも近づかない、戦わない...が、人里の冒険者の間で鉄則になってる。

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