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幸せにしたいのは主人公じゃない!  作者: いたちのしっぽ
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本日より更新再開致します。

感想やメッセージをくださった皆様、ありがとうございます。

「この光魔法は闇魔法の中級程度なら無効化できる。しかし失敗すれば自分に跳ね返ってくるため、決して陣を間違えるな。陣の一つ一つの意味を理解し、反発し合わないよう組み合わせる。成功すれば…このように陣から光がでる」

教室内で魔法の手本を見せるシン。

勿論失敗する筈もなく、教室内が淡い光で包み込まれ、その美しさに生徒たちは見惚れた。

じゃぁやってみろ、と言うシンにエミリアは意気揚々と紙に丁寧に陣を描き始めた。

(後々の敵との戦いに必要だから、この魔法だけはちゃんと勉強してるのよね!)

珍しくスラスラと陣を描いていくエミリアであるが、シンは全く気にする様子もなく、教卓から全体を見回していた。

すると、やはりと言うか、失敗する生徒が出てくるため、それを即座に自分の魔法で押さえ込む。

失敗した魔法は強力な鋭い針のような光を放ち最悪失明する事もあるので、そうならないように、異変が有れば即座に対応する。

(シンて、実は教師に向いてるのかな?まだお城にいた頃は、アスベルの勉強も見てたくらいだし)

と的確に動くシンを横目で見ながらシュターナは陣を完璧に仕上げ、シンの手本のように派手にならないように、そっと淡く光らせる。

「さすがシュターナですわね」

一発で成功させたシュターナの様子を見ていたクリスは、自分の陣を確認してほしいと紙を見せる。

「んー…クリス様の陣、ここ間違ってますよ」

「え?あら、本当!」

いそいそと陣を描き直すクリスを横目に、今度はリリアが陣を持ってシュターナの元へとやってきた。

「どこか間違っていませんか?」

「リリア様のものは…完璧です」

さすが、光魔法の申し子。

完璧な仕上がりであった。

更にリリアが魔法を発動させれば、シンのように教室中に光が満ちて珍しくシンが感心の表情を見せた。

それに焦ったのはエミリアだ。

自分も完璧に仕上げ、光を生み出せたのだが、タイミングがリリアと被ってしまい自分の光はかき消されてしまった。

しかも、本来ならクリスの魔法は暴走し、エミリアに怪我を負わせる筈だったのだが、シュターナの助言によりそれも無くなってしまった。

クリスの役をシュターナにさせようと、シュターナを睨みつけるエミリアであったが、フェリエーラに声をかけられたことにより笑顔を貼り付けた。

「できたかい?」

既に自身は成功させたあとであるフェリエーラに、エミリアは和かに自分の描いた陣を見せた。

「完璧じゃないか」

「本当ですか?ありがとうございます!」

普段やる気のない生徒がここぞとばかりにやる気を出している。

シンとシュターナが警戒しないわけがなかった。

こいつ、何かやらかすぞ、と一瞬のうちにアイコンタクトをとった二人はそれとなくエミリアを見張った。

すると、予想外にエミリアは自分の魔法陣が描かれた紙を手にシュターナの元へと寄ってきた。

クリスとリリアは何かされる前に、と距離を取る。

「あ、あの!シュターナさんはこの魔法に詳しいみたいなのでお聞きしてっ!!!キャァ!!」

早足でやってきたエミリアは他の生徒の椅子に足を取られ盛大に転んだ。

「…」

今回ばかりは誰がどう見ても自分で転んでいた。

面倒だと思いながら、目の前で転ばれたら安否を気遣わなければならない。

本当に面倒だと、シュターナは膝をつき

「大丈夫ですか?」

と手を差し伸べた。

「は、はい!つまづいちゃって…」

「エミリア!大丈夫か!?」

シュターナの手を取るエミリアの後ろからはフェリエーラが駆け寄ってくるのが見えた。

エミリアは恥ずかしそうに立ち上がろうとするが、スカートの裾を踏んづけ今度はシュターナを巻き込んで転倒してしまい、シュターナは咄嗟にエミリアを庇い背中を机に打ち付けた。

「!?」

「っ!」

それは誰が見ても分かる行為だった。

フェリエーラもそれに気付き驚きで目を見開くが、「あいたたた…」と声を漏らすエミリアに直ぐ様意識を持っていかれた。

「エミリア!大丈夫か!?」

エミリアを気遣うフェリエーラを横目に、焦りそうになるのを堪えて、シュターナに手を貸すシン。

シュターナは大丈夫だと一つ頷く。

一応、教師としてエミリアにも声をかけると、足を捻ったなんだとフェリエーラにもたれかかっていた。

「…先生、医務室に…」

連れて行ってと続く筈だった言葉は

「そうか、フェリエーラ連れて行ってやれ」

と被せるようにシン自身により遮られた。

エミリアはフェリエーラの手を煩わせるわけにはいかないと遠慮していたが、強制的にフェリエーラはエミリアを横抱き(所謂お姫様抱っこ)にし颯爽と教室をあとにした。

女子生徒たちからは「きゃぁきゃぁ」と黄色い声が上がっているが、気に留めることなく、シンはチラチラとシュターナを気にしながら授業を再開した。

「シュターナ、本当に大丈夫ですか?」

「打ちどころが悪いとあとに響きますわよ?」

気遣いを見せる二人の令嬢にシュターナは安心させるように笑うと

「もう回復魔法で処置しましたよ」

とこっそりと話した。

それを聞いて二人はほっと息を吐いた。

(……?なんだこの陣?)

エミリアが転んだ事により散乱した自分の周囲を片付けようと、拾った陣の描かれた紙。

勿論自分の物ではない。

(……そう言えばエミリアが陣がどうのって言ってたな…。コレを見せたかったのかな?でも間違いだらけだし、さっきフェリエーラは完璧って言ってたしちがう人のもの?…んー…結局何がしたかったんだろ?)

うっかり発動したらクラスが大変だと、間違いだらけの陣は人知れず消されたのだった。


(もう!もう!もう!!まさかあんな所で転ぶなんて!!)

フェリエーラに付き添われ医務室へ行くと、養護教諭はまたお前かと内心思いつつも、フェリエーラの前なので顔には出さず治癒魔法を施す。

そんな中、エミリアの内心は大荒れであった。

転んだのは事故だったのだ。

本来はシュターナの陣と用意してあった陣を入れ替えて、間違った陣をシュターナに発動させクラスを混乱させようとしていたのだ。

転んで大恥をかいたばかりか、作戦も失敗してしまった。

イベントとは関係ないため、何が起こるか分からない。逆を言えば何をしてもイベントに影響は無いはずだと考えたエミリアは、シンに少しでも接触するために一芝居打つはずだったのに結局は失敗だった。

(大胆に接触すればもしかしたらイベントに影響が出るかもしれないから、偶然怪我をして介抱してもらう作戦だったのに!)

難しい表情で俯くエミリアを心配したフェリエーラは、優しい声色で名を呼ぶ。

「他にも痛いところがあるのか?」

「え?あ、いいえ!もう大丈夫です!ほらこの通り!」

両腕を上げたり曲げたりを繰り返して元気アピールをすれば、フェリエーラはホッと胸を撫で下ろした。

そこで、ふとフェリエーラはシュターナを思い出した。

エミリアを庇い盛大に背中を打ち付けていた。

エミリアより小さな体で、だ。

医務室にこないところを見ると大した事は無かったのだろうという結論に至った。

竜をけしかけるような危険な人間だ。自分が気に病む必要はないと、思う事にした。



「えぇー!!?シュンちゃんあの女に怪我させられたの!?俺ちょっと墓穴掘ってくるよ!」

「許すまじ…許すまじっ!!」

「腕の一本は切り落としていいよな?」

「いや、息の根を止めよう」

「待て待て待て待て、待て!ニノ、エクシャ、マール、シン、そこから動くな!!」

「流石シュン過激派…。発想が怖いな」

「そんな派閥いらないよ…」

夜、シュターナの部屋に集まったメンバー。

今にもエミリアに報復に行こうとするニノ、エクシャ、マール、シンを止めるレイル。

それを苦笑いで見守るグレンとシュターナ。

そんなグレンにニノはズイズイと詰め寄った。

「シュンちゃんが怪我させられたのになんとも思わないの!?」

「思わないわけないだろ?やるならひっそりこっそりバレないようにだ。バレたらシュンに迷惑がかかる。だから今は動かないだけだ」

「おいこら、結局お前も過激派か?グレン」

「俺は穏健派だとは言っていないぞ、レイル」

「はいはい、怪我は魔法で完治してるから。みんな落ち着こう?いったん深呼吸しよう?」

パンパンと手を叩き注目を集めるシュターナであるが、集まった視線は殺気じみている。

「はいはい、殺気もしまってー。そんな物騒な気を向けられたら普通の子は気絶しちゃうからー」

やめないとおやつ抜きだよと付け加えれば、渋々と言ったように殺気は収まる。

子供かよとツッコむのをなんとか耐えた。

そもそも、なぜ集まっているかと言えば、その日一日の報告会であった。

僅かでも不審な事が無いか、細かく情報共有する事を目的としている。

録画水晶にも何も映っておらず、今日も空振りとなった。

警備に黒の一団が混ざった事で警戒しているのではないかと、警備全体で噂になっているという。

それも一理あるだろう。

「抑止力にはなっても根本的な解決にはならないな」

「…魔力を奪うという事は、集めているという事なのでしょうか?」

「しかし、魔力を奪い集めるなんてできるのか?」

「……魔力の有無を調べる時、自分の魔力を流し込み反応を見るという方法を使う。しかし、他人の魔力を与えすぎると魔力同士が反発して体内で爆発が起きて死ぬのが普通だ」

「それをやってのける魔法があるって事だよね?」

シン、エクシャ、グレン、レイル、ニノを見回すマール。

最後にチラリとシュターナを見れば、完全に俯いていた。

それをやってのけてる人がここにいます、と言うわけにもいかず、マールは知らないフリをする。

が、じっとりと舐め回すような視線をよこす男が一人。

シュンの作る魔法には人一倍苦労させられたレイルが、様子のおかしいシュターナの目の前に仁王立ちした。

「何か言いたい事は?」

「?」

なんだ?と一同の視線が集まった。

「えっと?…言いたい事?」

「言っておきたい事でもいい」

魔法の事なら普段から率先して何かしら意見を出すシュターナが黙り込んでいたのだ。怪しい事この上ない。

「例えば?こっそりと?魔力を奪う魔法を?作った?とか?」

態とらしく一言一言に疑問符を付け、強調する様に言えばあからさまにシュターナは視線を逸らした。

「…マジか……」

少し離れたところではシンが口元を引きつらせている。

そしてレイルは久しぶりに両手で頭を抱え込んでしまったのだった。


結果から言えば、奪うどころか与える事もでき、更には貯める事もできる。

そんなシュターナの魔法になんだかんだ言いつつレイルは興味津々で、勿論シンもガッツリ食いついた。

「ああーあーいざと言う時の切り札だったのに…」

「よくもまぁこんなに魔力を溜め込んだな…」

コロンとした小さな水晶の中には、シュターナやシンの魔力と同等の量の魔力が溜め込まれていた。

うっかり割ってしまえば数年の苦労が水の泡になるため、しっかりと保護魔法がかけられている。

「与える時はどうやるんだ?」

「今はまだ色々模索中。まぁ、やれなくもないけど……グレン、ちょっと手を貸して」

「?」

言われるがまま右手を差し出すと、その手を握手するようにシュターナが握り返す。すると、グレンは驚きの表情を浮かべる。

「なんか…これ?シュンの魔力か?」

「何か流れ込んできたの分かった?」

「あぁ…明らかに自分の魔力じゃないモノが体の中を血液のように流れてる」

このように手を握ったり、体の一部を触れさせれば魔力を与えることができるが、逆に奪う時も触れていなければならない。

その“触れる”と言う縛りを無くす事が中々出来ずに悩んでいる。

「魔力は魔法を使えば勝手に消耗していくよ。多分今なら移動魔法を使うくらいの魔力はあるはず」

「マジでか!?すげぇな!」

それほど魔力のないグレンは、自室に戻る際に使ってみると、嬉しそうに頷いた。

そこで黙っていないのがグレンの相棒ニノだ。

「いいなー!シュンちゃん俺もー!ヒュッって消えたい!」

「はいはい」

言うと思ったと、手を差し出せば嬉々としてその手を取るニノ。

魔力を送り込めば、パシパシと目を瞬かせた。

「わっ!え!?一回の移動魔法ってこんなに魔力使うの!?」

送られた魔力量に驚き、普段シュターナたちがひょいひょい使っている移動魔法の魔力消耗量に驚き、クルクルと表情が変わっていく。

「そもそもお前たちは移動魔法の陣が分かるのか?」

突然のシンのツッコミにグレンとニノはピシリと固まった。

普段から勉強していれば分かったであろうが、使う事はないだろうと思い学ぶ気すら無かったためまるで分からない。

みんながいとも簡単に使うため難しくないのだろうと考えていたが、シュターナによってサラサラと描かれた陣は…理解不能であった…。

「えぇ…これを魔法陣無しで使ってるって思うとみんな怖い…」

「俺たちに魔力があっても宝の持ち腐れだな…」

俺たちって凡人だなと、視線を交わす二人だが、二人の魔法を組み合わせた剣技は一騎当千だ。

でなければこの黒の一団ではやっていけない。

移動魔法が理解できなかったため、取り敢えず魔力はそのままにし、いざと言う時のためにとっておく事になったのだった。



翌日、学校には居ないはずの人間の姿があった。

ヒュバート・ベルゲン、レイルの前任である、生徒に虐められていた教師だ。

「どうにも気になってしまって…」

魔力を奪われる事件で自身の生徒が被害にあっているため、その後が気になったのだと言う。

教壇には立てないが、レイルに生徒たちの様子を聞きにきたのだ。

「権力を盾に酷い目にあいながらも生徒を気にするとはな」

「……それでも私は教師なので…守ってあげたいと思ってしまうのです…。頼りにならないのは分かっていますけどね……」

あはは、と自信なさげに笑うヒュバートにレイルは眉を寄せた。

体調もまだ万全ではないだろうに、それ程までに生徒を思うことができるのは純粋に凄いと思った。

しかし、このヒュバートと言う男、通常よりも魔力の高い高学年を受け持つだけあり、魔力の多さや使える魔法のレベルも高い。

にも関わらず生徒たちから虐められていたのは、一重にその気の弱さが原因である。

「あの、私にも校内の見回りだけでもやらせてもらえないでしょうか?」

生徒たちのために何かしたい、と目を伏せる姿は実に教師の鑑である。

「俺からはなんとも言えん。そこは理事長と警備の連中と話し合え」

「そうですね。そうします」

生徒たちの成績表を見ながら、少し成長した子供たちの姿を想像し、嬉しそうに目元を緩めた。

レイルにも経験がある。

シュンやシンが新しい魔法を覚えて、それを自分に誇らしげに披露する姿が毎日楽しみであった。

真面目にコツコツタイプのシンに、自分で自由気ままに魔法を作る問題児のシュン。

どちらもレイルにとっては大事な弟子で、弟で、妹で、子供だ。

自分より上達した魔法は、今や可愛げのかけらも無いが。

ヒュバートは生徒たちの話を一通り聞くと、レイルに礼を述べ理事長室へと向かった。

常に理事長室にフレイザーが居るわけでは無いが、代理が居るため問題はない。

数日後には生徒たちに隠れ、コソコソと見回るヒュバートの姿があったとか。

見つかっている時点で隠れている意味は為さないが、生徒を想い少しでも守ろうという気持ちはヒュバートを虐めていた生徒達にも伝わり、考えを改めた者も居たという。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 待っててよかった! 久しぶりに過激派達を見られて嬉しいです! ありがとうございます!!
[一言] わぁっ!更新してるっ✧◝(⁰▿⁰)◜✧ 更新再開とっても嬉しいです♪ 続きも楽しみにしていますね(*´ω`*)
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