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幸せにしたいのは主人公じゃない!  作者: いたちのしっぽ
29/71

28

「あれ?朝早くからどうしたの?」

日が昇ってもいない早朝。

まだ辺りは真っ暗で、朝日が昇るまでに数時間ある。

そんな中起き出したシュンは、玄関ホールへと足を運んだ。

黒い衣装を身に纏って。

「どうせ獣人の村に行くんだろ」

そこに待っていたのは、同じく黒い衣装を身につけた一同であった。

「あはは、まぁね」

バレていたか、と頬をかくシュン。

「でも村に結界を張って追い返すつもりだから一人でも大丈夫だよ」

「いいや、お前は何をしでかすかわからないからな。一緒に行く」

一人で大丈夫と胸を張るがそれはバッサリと切り捨てられた。

「…シンは私をなんだと思ってるの」

「シュンちゃん、事情聴取に行って戦争参戦の依頼受けてくれば十分しでかしてるよ」

「……返す言葉もないけど、相手の方にふっかける事が出来たから良しとしてよ」

「言い合っていても仕方ない。敵が来る前にさっさと行こう」

獣人にあまり興味が無いと思っていたレイル達が、自分が頼まなくても率先して手伝ってくれる事がシュンはとても嬉しかった。

少なくとも、彼らは獣人に悪意や嫌悪が無いのだから。

「いい家族を持って、私は幸せだね」

ぽそりと言ったつもりが、それは全員に聞こえており、それは嬉しそうに破顔する少女に大人達も釣られて笑みがこぼれる。

『この笑顔を守ってやらなければ』

と。


「と、思っていたはずだがな」

「え?シン、何か言った?」

「…別に」

朝日が昇る直前、獣人にも内緒で村に二重の結界を張ったわけだが、朝日が昇りきろうとする今でもギルドの戦士達は村に一歩も入れていなかった。

「くそっ!どうなってやがる!?」

「まだ結界は破れないのか!?」

迎え撃つ準備をしていた獣人側も唖然である。

昨日の忠告や提案を蹴った相手、しかも獣人を守る行動をとるシュン達が信じられなかったのだ。

「なんだってこんな事を?」

「おやおや、勘違いしないでいただきたい。私が守りたいのはあの子達であって貴方達はついでだよ」

隠れている様に言われたのか、あの兄妹が家の窓からシュン達を見ていた。

余裕綽々のシュンに、出る幕がなかったなと、二人の騎士は肩を竦める。

「黒の一団!これはどういう事だ!?」

ギルドの戦士の中ではいい服を身につけた男が後方からやってきた。

彼はこの雪国のギルドの長である。

野盗討伐依頼の時に面識があった。

「黒の一団などと名乗った覚えはない」

勝手に名前をつけるな、と切り捨てレイルはシッシッと手で追い払う仕草を見せると更に上等な服を纏った男が現れた。

「ほぅ、貴様らが黒の一団か」

「違うっつってんだろ」

ギルド職員全体の難聴を疑い始めた時だ、その男は名乗った。

「私はハイネ・アンカー。ギルド議長の一人だ」

と。

話が早くなりそうだと、内心ニヤリと笑みを作るシュン。

その思惑にはまだ誰も気づいていない。

「議長殿がこんな所までご苦労様だな。暇なのか?」

議長と名乗っても態度が変わるわけでもないメンバーに、若干顔を引きつらせるハイネ。

「黒の一団諸君、このまま我らの邪魔をすればギルドから除名処分を下し、仕事を含めた全ての取り引きを中止する事になる。そうなれば君達も大変だろう」

今ならまだ許してやるから結界を解けと、なんとも上から目線の物言いに不快感を示す一同であるが、シュンだけはそうではなかった。

「じゃぁそれでいいです」

「…は?」

きょとんとしたのはハイネだけではない。

ギルドの戦士達も、働けなくなったらこまるだろ?と心配げな表情だ。

「私たち……あー…えっと…もう黒の一団でいいや」

なんか否定するのも疲れたし漫画でもそう名乗っていたのでもうこれでいいやと、半ば諦め気味に黒の一団を名乗る事にした。

「私たち黒の一団は今後ギルドに関わるなという事ですね?ハイネ・アンカーギルド議長」

「…そ、そうだが…」

「私は常々こういったやり方に疑問を抱いておりまして、何もしていない獣人達を一方的に数で攻めるのは、これはもう虐殺と同じではない?」

「君はまだ子供だから知らないだろうが、奴ら獣人達はその昔、自分達より弱い人間を苦しめてきた。そういった経緯があり人間は獣人から身を守るために戦っているのだよ」

これだからモノを知らぬ子供は、と言う心の声がありありと聞こえてきそうなハイネの表情に不快感を示すものも居るが、シュンはそうではなかった。

「それは議長殿が産まれる百年以上も前の事でしょう?今現在を生きる彼等には何の関係があるの?」

「歴史は繰り返すというだろう?獣人の中に流れる血がまたそうしでかすかもしれない。ならばそうなる前に駆除しようというのだ。分かってもらえるだろうか?お嬢さん」

「じゃぁ、こういう事?」

「?」

ドォーーーン!!

シュンがパチンと指を鳴らすと突如響く雷鳴。

「な、何を!?」

その雷鳴は雲も無いのに、ギルドの戦士達や議長の足元を的確に狙い撃つ。

「や、止めろ!どういうつもりだ!!」

「その昔、沢山戦争があったでしょ?もしかしたら貴方のご先祖と私のご先祖は敵同士だったかもしれないじゃない?だから貴方が先祖の恨みを晴らすために、私に牙を向ける前に始末するのよ?何かおかしい?さっき貴方が言っていたことと同じことだよ?」

「はぁ!?」

「さぁ、選んでいいよ。このまま丸焦げになるまで続けるか撤退するか。私って優しいからいきなり全滅じゃなくて、選択肢くらいはあげるよ?」

うふふ、と実に可愛らしく言っているが、内容はちっとも可愛くない。

これでは初めからギルドとの敵対が目的の様にも取れる行動に、レイル達は困惑した。

「レイル、シュンのやつどうしたんだ?」

実に彼女らしくない行動に、グレンはレイルに問うがレイルも分からないと首を横に振るばかりだ。

口で丸め込む事も出来ただろうに、なぜ態々敵対を選んだのか、疑問のみが残った。


結局ギルドは撤退を余儀なくされた。


「あんたらいいのか?ギルドを通さなければ仕事がもらえないんだろ?」

「さぁな、シュンに何か考えがあると信じたいな」

あの兄妹の父親が、心配げに声をかけてくるが、シュンは再びあの兄妹の頭なでなでを堪能しており、会話は耳に入らない。

獣人の為に人間同士の敵対が起きてしまい、困惑を隠せない獣人達はシュン達に対して、もう警戒は無かった。

しかし、「この人達色々と大丈夫かな」という心配の色が濃くなっていた。

ひとしきり子供達を撫でたあと、シュンは結界が解けないよう固定して帰宅を促した。

「さて、帰ろうか」

戦う事なくあっさりと帰っていったシュンの残した結界は、獣人達以外の者は出入りできない仕様となっており、今後人間に攻められても何ら問題がない代物であった。

なぜここまでして自分達を守ろうというのか、獣人達はシュンという少女が理解できなかった…。


「レイルこれ読んで。変なとこがないか確認して欲しいんだけど」

「?」

廃城に着くや否や、魔法で取り寄せた一枚の手紙。

リビングに移動しそれを開き読むと、目頭を押さえ黙り込んだ。

「レイル?」

不審に思ってシンがその手紙をレイルの手からとり、目を通すと徐々に表情が険しくなる。

「お前、これいつ書いた?」

漸く口を開いたレイルの問いにシュンは疑問符を浮かべながら

「昨日帰ってきてすぐ。何度か書き直したよ」

「…昨日…」

シュンが落ち込んでいる、何とかしたいと話してる間に書いたのだという。

つまり、あれからすぐこの策を講じていたというのだ。

落ち込むだの憂いてるだのどころか、とんでもない事を考えていた…。

「えー…何々?」

手紙の内容を話すつもりがないレイルとシンに代わり、グレンがその内容を読み上げる。


“ギルド本部及び各支部御中


拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。


早速ではございますが、本日行われましたギルドの作戦内容に疑問を持ち妨害致しました所、契約解除の通達を口頭で受けました事をお知らせ致します。

こちらとしても、致し方ない事と通達を了承致しました次第でございます。


それに伴い、これまでご愛顧頂きました、下記商品の納品終了をお知らせ致します。


商品名:身代わりくん、ポーション


尚、この件につきまして詳しいご説明が必要な場合は新聞朝刊一面にてお知らせ下さいませ。


以上。


代表 レイル


敬具”


「代表はシュンちゃんじゃないの?」

「そこじゃないだろ…」

「分かってるよ。ちょっとボケただけじゃん…」

こうなる事を予測して既に手紙を用意していた。

しかも、今のギルドには痛手となる内容である。

シュンが定期的に卸している身代わりくんとポーションは、ギルドでの販売数一位と二位で、尚且つ予約待ちである。

その売り上げはギルド運営費に使われるわけだが、ギルド予算の五分の一を占めている。

今や貴族たちからの寄付金すら上回っている売り上げがまるごとなくなる上に、もう一つ問題があった。

“今”非常にマズイ時期であるという事だ。

シュンがフレイザーから戦争の手伝いの依頼を受けた。

戦争が起きるという事は、シュンの作った身代わりくんやポーションの需要が一時的にではあるが、爆発的に上がる。

戦争参加の各国が集めさせる筈である。

しかし商品は品薄状態で、今後入荷の見込みがない。

ギルドは国どころか、普段愛用しているギルドのハンターや冒険者たちにも説明しなければならない。

“獣人虐殺の際、邪魔をされたので契約を打ち切った”と。

さて、この話を聞いた世論はどう考えるか。

“獣人よりも身代わりくんやポーションをどうにかしろ、である”

「しかもシュンの作った身代わりくんは魔法陣が綿密すぎて、その辺の魔法使いには再現は不可能でしょうね」

「ポーションもただの回復薬ではなく、麻痺なんかも同時に治し、最近では魔力も少しだが回復するように改良してある。これも真似するのは無理だろうな」

「じゃぁ、ギルドはどうすると思う?」

「…それは」


「撤回しろ!!黒の一団との契約解除を取り消せ!」

その日の夜、シュンらが赴いた事のあるギルドと、ギルド本部には僅かに書き換えられた手紙が送りつけられた。

ハイネは早急に本部に呼び戻され、詳細の報告と言う名の訊問を受ける事となった。

つい先程、ロザリール国より身代わりくんとポーションの早急手配要請があったばかりだ。

しかし物は無く、入荷もない。

ギルド全体は焦りに焦っていた。

早速新聞の一面を確保しろと指示を出すが、新聞社に言わせれば無理の一言である。

記事は出来上がっているし、既に刷ってあるものを差し替えるなどできるはずがない。

しかも、どこの国の新聞か分からないときた。

よって、ギルドは世界中の新聞の一面を買い取る羽目になった。

このような事態を生み出したハイネ・アンカーは即刻議長退任を迫られたのであった。


三日後、ギルド本部三階会議室。

“黒の一団”の姿があった。

対するは一人欠け、十二人のギルド議長だ。

「今回の件、発端のハイネ・アンカーは退任となった。よって契約解除を取り消したいと思うが、如何か?」

「代表は俺じゃない」

「?」

年長者であるレイルに視線が集まるが、そうではないとなると、一体誰が?と一人一人視線を向け確認するが、全員が首を横に振る。

ただ一人を除いて。

「ほらー、だからレイルにしておけば良かったんだよ!私が代表なんておかしいじゃん」

不服そうに頬を膨らませる少女に、議長たちはそんなまさかと目を見開いた。

「ふざけているのか?」

議長の一人が怒りを込めた声でレイルを見る。

しかし、レイルは

「ふざけているのはコレの頭の中だ」

失礼極まりない発言と共に、シュンを指す。

「どう言う意味だよ」

その指を叩き落とすと、悪態つきながらギルド議長等に向き直り、居住まいを正した。

「コホン、私としても不本意ではありますが、代表を務めさせて頂いております、シュンと申します」

「!」

子供とは思えない切り替えと言葉遣いに驚く議長等をよそに話を続ける。

「先程ご提案いただきました契約解除の取り消しの件ですが、こちらとしては一つだけ条件があります」

「条件?」

「はい」

ギルド議長等はお互いに目配せを行い、頷いた。

「その条件を飲めばこれまで通りという事だろうか?」

「寧ろ身代わりくんやポーションの数を倍に上げてもいいと思ってますよ」

「!!?」

それはそれは、なんとも気前の良い話か、と目の色を変えた者が数名。

週一万個が二万個である。

それはギルド全体の潤いを意味していた。

「分かりました。その条件を飲みましょう」

「私はまだその条件を言っていませんよ?」

「問題ない」

「……いやいや、もうちょっと真剣に考えよう?子供だからって油断してない?どうするの条件がギルド議長の座をよこせとかだったら。そんな椅子いらないけど」

金に目がくらみ、しかも子供が無茶な条件を出すわけがないという先入観からか、議長の半数は油断しまくっている。

少し心配になったシュンは、つい普段の話し方になってしまったが、誰も気にしていない。

「うむ、シュン殿のいうとおりであるな。皆話は最後まで聞こう」

ガタイの良いその男は、レイルの件で某ギルド長の悪事を暴いたルワイヤ・クーパーであった。

まともそうな人が居て良かったと取り敢えず話を本題に戻す。

「私の提示する条件は、獣人に対する無差別攻撃及び差別の徹底廃止。勿論、ギルドに属する者、ギルドに関わる者全てが対象です」

「!?」

議長等は勿論、仕事を得るためにギルドに登録している者、ギルドに寄付をしている貴族、ギルドに予算を提供している世界中の国々全てが対象だという。

それはつまり、世界中の誰一人として、今後獣人を傷つけてはならないというものであった。

「勿論、獣人側が攻撃して来た場合はその限りではありません。獣人がギルドを使って仕事をする。獣人が町で買い物をする。獣人が町に住む。これ等が当たり前になるようご協力願いたい」

「そんな事…」

「できるわけがない?ならば契約解除の取り消しには応じるわけにはいきません。帰らせてもらいます」

あっさり引こうとする姿に、慌てて止めに入るがいい返事はできない。

そもそも人間と獣人の間の溝が深すぎて、今更無理であるというのがギルド側の考えだ。

それに対してシュンは、そんなことを言っていたらいつまでたっても平行線のままで、獣人たちは狙われ続ける事になるという考えだ。

しかし、

「やるかやらないかの選択肢は二つです。返事は簡単なはずですが?」

その簡単な選択肢の答えを出すことができず、渋面が並ぶ。

それに対して、シュンはわざと深い溜息を吐いた。

「仕方ありません…ならばこちらも多少は譲歩致しましょう。…獣人たちが自分たちの村や町を作っても今回のような虐殺や攻撃を今後止めていただきたい」

先ほどの、人間と獣人を同等に扱えとも取れる内容から一転、傷つけるなという簡単な内容に変わり、議長たちもそれならばとあっさり頷くのであった。

「それでは書面にて、全議長のご署名を願いたい。後から子供との口約束であって正式なものではないなどと言われたくはありませんので」

「了承した。直ぐに用意する。暫く待たれよ」

一人の議長が席を立った後、何とかなったなという空気が会議室に流れた。

暫く時間が掛かりそうなので窓の外の景色でも見せてもらおうと、一言断りを入れ席を立つシュン。

このギルド本部がある町には興味があった。

世界の中心とも言える巨大都市、エルグランド。

この町には世界中のありとあらゆる物が集まると言われている。

「…あとで市場に寄ってみよう」

少しワクワクしながら、賑わう外界を見下ろす少女にルワイヤ・クーパーが歩み寄って来た。

「…ふ、過保護であるな」

「あ、申し訳ありません」

ルワイヤの背中にはいくつかの視線が突き刺さっている。

「いや、問題ない。シュン殿に聴きたい事があってな」

「私にお答えできる事なら」

ルワイヤが声を若干潜めたのに気づいたシュンは、他の人間に聞かれたくないのだろうと自身の声量も落とした。

その僅かな異変に気付いた少女に感心し、ルワイヤは何かに納得したように一つ頷いた。

「バジー・ドリス元ギルド長の不正を暴きフレイザー・アーリッシュ大公に手紙を送ったのは貴殿であるな?」

「おや、バジー・ドリス元ギルド長、懐かしいお名前ですね。送ったというには語弊がありますが、まぁ結果的にはそう言う事になりますね」

「ふっ…フレイザー閣下の仰られた通りだな」

「閣下とお知り合いで?」

ルワイヤはロザリール国出身の元軍人、フレイザーの部下として前線で戦い抜いて来たという。

今でもフレイザーには絶対の信頼と忠誠を誓っているという。

「フレイザー閣下の仰られた通り、見た目と中身が随分反している」

「…」(あのじじぃ何喋ってんの!?)

「む、老けていると言っているわけではないぞ。ただ賢いと思っているだけだ」

「…そうですか。てっきり年増扱いかと思いました」

フレイザーが何か良からぬ事を吹き込んだのではないかと一瞬警戒したが、それが拗ねているように見えたのか「そう言ったところは年相応であるな」とルワイヤは声を殺して笑った。

ひとしきり笑った後、ルワイヤは「それから」と続けた。

「見事な交渉術であったな」

「…え?」

「先程の件だ」

そうでない者も居るが、議長の殆どが普段偉ぶって人を見下している節がある。

そんな彼らは気づいているのだろうか?

最初に人間と獣人を同等に扱えという条件を出した意味を。

全世界の人間にそれをしろなど、そのような事無理に決まっている。

例えば町一つならば何とかなるかもしれないが、世界中の人間ともなれば必ず従わない者が出てくる。

その度に「契約違反なので取引中止します」などと言われてはたまったものではない。

シュンはギルド側が受けられない事を分かっていたが、敢えて難しい条件を出す事で後から出した「獣人を傷つけるな」という条件を通りやすくしたのだ。

「…分かっておいでならば、他の皆さんに話さなくてよろしいのですか?」

「問題ない。私は獣人に何の恨みもないし、今回の殲滅も反対だった。しかし、止める事は出来なかった…。私の力不足だ。だからお前達が止めてくれた事に感謝している」

「…敬愛する閣下の元でなくギルドに居るには理由がおありのようですね」

“力不足”その一言でシュンはそう感じた。

何か目的があり、ギルド内での地位が必要なため、それを失わぬように動くとなると、無理が利かないのだろうと推察すれば、ルワイヤは厳ついその表情をキョトンとさせ、次の瞬間盛大に笑い出した。

「あっはっはっはっ!」

「!?」

会議室内の視線が一斉に集まった。

「シュン殿!俺はお前が気に入ったぞ!さすがはフレイザー・アーリッシュ大公閣下が気にかけるだけの事はある!」

「!…それは光栄です」

これはルワイヤから他の議長に対する牽制であった。

世界でその名を知らぬ者がいないフレイザーと親交があるとならば、無下にはできないからだ。

その意を汲み取り、シュンはクリスに学んだ淑女の礼でもって返したのだった。

書面を受け取ると、では契約再開とばかりに魔法で木箱に詰められた二万個の身代わりくんとポーションを会議室へと出現させた。

その数に圧倒されるとともに、これでフレイザーの要求に間に合うと安堵する。

「では、私たちはこれで。お約束通り、この件は周知の徹底をお願いいたします」

「承知した。約束しよう」

代表同士が握手を交わし、これにて閉幕となった。







“ギルド本部及び各支部御中


拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。


早速ではございますが、本日行われましたギルドの作戦内容に疑問を持ち妨害致しました所、ハイネ・アンカー議長により契約解除の通達を口頭で受けました事をお知らせ致します。

こちらとしても、致し方ない事と通達を了承致しました次第でございます。


それに伴い、これまでご愛顧頂きました、下記商品の納品終了をお知らせ致します。


商品名:身代わりくん、ポーション


尚、この件につきまして詳しいご説明が必要な場合は新聞朝刊一面にてお知らせ下さいませ。


以上。


黒の一団

代表 シュン


敬具”


この件により、黒の一団は文字通り世界に周知されることとなった…。




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