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幸せにしたいのは主人公じゃない!  作者: いたちのしっぽ
21/71

20

月日は流れシュンは11歳になっていた。

相変わらず野菜や植物を育て、様々な国や町に行っては身代わりくんやポーションを卸している。

そして、シュンはブチ切れた。

「そろそろ硬貨だけじゃなくて紙幣も作るべきだと思うんだよね!!」

「しへい?」

リビングでいきなりブチ切れられた一同は疑問符である。

しへいとはなんぞやと。

「紙のお金だよ!硬貨だけじゃ重いんだよ!せめて硬貨100枚で紙幣一枚とかにならないかな!?」

「紙は貴重だから無理だな」

レイルにより一刀両断であった。

確かに紙は貴重であるが、湯水のように使っているシュンにはピンとこないようである。

何せ最近は紙すら魔法で作り出し、しかも使った紙をリサイクルしているため、紙不足など起こり得ないのだ。

ガックリと肩を落としテーブルに突っ伏した。

「いきなりどうしたんだ?」

心配そうに尋ねるマールにシュンはボソボソと話し始めた。

金庫が一杯でもうお金が入らない、と。

ドン引きであった。

何故ならシュンの使っている金庫はかなりの大きさがあったからだ。

取っ手のついた持ち運びができる金庫ではない。

大きなダイヤルのついた、人ごと中に入れる金庫である。

それが一杯になるとはどういうことか、である。

「身代わりくんも人気だけどさぁー、怪我が治せる上に、麻痺とか毒とか混乱とかも治せるポーション作ったらこっちもすごい人気になって最近じゃ二つ合わせて一万個くらい納品してるんだよ。そりゃすごい額になるよ。でも、出費がほとんど無いから貯まる一方なんだよ!だからみんな欲しいものない!?パーッと使おう!?なんならお城もう一つ買っちゃう!?」

「買ってどうすんだよ…んなもん…」

「…買うだけ?」

「却下だ」

無駄遣いにも程がある。

かと言って現状困ったことは何一つない。

素顔を晒せるようになったレイルも、半年ほど前からギルドに登録し、傭兵や賞金稼ぎなどの仕事をこなしている為、貯蓄は更に膨れ上がる。そして、なぜか自分で稼いだ金をレイルはシュンに預けている。

生活に必要な物は全て、シュンが与えている為特別必要なものは無いが、シュンが言っていることはそういうことでは無いのだ。

部屋を飾る小物やシュンが作ったものでは無い今流行りの服、新しい家具など今の生活に特に必要では無いが、ちょっと良いなぁと思うものなのだ。

「そうだ!いっそのこと家具を全部オーダーメイドにしちゃうっていうのは!?」

「俺はあれが気に入ってるんだが…」

「私も愛着が…」

「家具なんてなんでも良い」

「家具より新しい魔道書が欲しい」

「…何となくそんな反応だと思ってたよ。新しい魔道書は買うよ。それじゃ他に欲しいもの無い?」

うーん…と一応考えているようだが結局の所、何も意見は出なかった…。


「じゃぁ行ってくるね」

「あぁ」

翌日、雪の降る中シュンとシンは魔道書を買うために城を出た。

午後からレイルはギルドの仕事であるが、時々マールやエクシャも手伝ったりしている。

やはり二人も何か仕事がしたいと、最近手伝い始めた。

今日もいつもの一日であった。

その日の夜までは…。


深夜、全員が寝静まった頃、初めに異変に気付いたのはエクシャであった。

自身が使役している魔物から報告が入ったのだ。

エクシャの反応にマールが気づく。

「どうかしたのか?」

「…森に人間が二人入ってきたと」

「こんな夜中にか?」

二人がレイルに教わった魔力探知で報告のあった辺りを探れば、のろのろと城へと近づく二つの気配を感じた。

「シュンに報告を。俺は様子を見てくる」

「分かりました」

二人は素早く行動を開始した。

防寒魔法がかかったシュン作のコートを羽織り、窓から飛び立ったマールを確認し、エクシャはシュンの部屋へと向かった。

熟睡しているのか、ノックをしても返事はない為、一応「失礼します」と声をかけ、部屋へと足を踏み入れる。

天蓋付きのベッドの真ん中で、シュンは頭からすっぽりと布団を被り規則正しく寝息を立てていた。

「…シュン」

声をかけるが返事はない。

申し訳ないと思いつつも、肩を揺すり起こすと漸く寝ぼけ眼がエクシャを見た。

「エクシャ?なぁ〜に?いっしょにねる〜?」

「え!?良いんですか!?………ではなくてっ!森に不審者が入り込んだみたいです」

「ふしんしゃー?」

「魔力を持った人間が二人」

「魔力?」

寝ぼけた頭が瞬時に覚醒した。

ただの人間なら問題ないが、もし強い魔力を持っているなら城に張った結界が破られる恐れがある為、相手を確認しなければならない。

「今マールが様子を見に行っています」

「私も行くよ」

「危険です!」

自前のコートを羽織ると反対だ、とエクシャが声を上げた。

「どうした?」

異変に気付いたのだろう。

シンとレイルが顔を出した。

「エクシャ、二人にも説明しておいて。ちょっと行ってくる」

「待ってください!シュン!」

黒い羽をバサリと羽ばたかせ、窓から飛び立ったシュンの背をエクシャは見守ることしかできなかった。

「で?何があったんだ?」

「実は…」

レイルの問いにエクシャは事のあらましを話した。


「おい!もう少しだ!しっかりしろ!!」

「っ…まさか…こんな事でここに…来る事になるなんてね…っ!いてて…」

二人は騎士の様な装いであるが、全身ボロボロで、今にも倒れこみそうな程だ。

一人の男は、よりボロボロなもう一人の男を落とさないように抱えなおす。

「無茶するからだ!って…間違ってないだろうな?ボロボロの城だぞ?」

漸く見えてきた建築物は聳え立つ城であるが、灯など一切無い廃城で口角が引き攣った。

あたりは暗く、更にはひどい雪であった。

時折、獣の唸り声なども聞こえ二人に選択肢は無い。

「間違いないよ…確かに…ここだ」

ある境界迄きた瞬間、

「やめておけ」

と声だけが二人の耳に届いた。

「!?誰だ!?」

「そこから先は結界が張ってある。触れれば大火傷だぞ」

「はは…ほらね?…間違えて、な…」

「!?おい!!しっかりしろ!!」

がくりと、支えられていた男の体から力が抜けた。

もう一人は慌てて支えるが、意識は無かった。

その時、パチン、と指のなる音が響いた。

すると暗がりに一瞬で灯がともり、辺りを照らし、今自分たちがどこにいるかがよく分かる。

「…畑?」

眼前には畑が広がっていた。

しかも雪の影響を受けないように結界が張られている。

「あれー?誰かと思ったらいつかの騎士のお兄さん達だ」

「!?君はあの時の!」

顔見知りのなのか?とシュンの隣を飛んでいたマールが視線を交互にやった。

「マールもちょっとだけ会ったよ」

とは言われるが、首を傾げる。

「…取り敢えず中へどうぞ」

ボロボロの二人を見たシュンはパチン、と指を鳴らし四人まとめて城の中へと移動した。

そこは使われていない部屋で、埃まみれであったが、これも瞬時に魔法で綺麗にしてベッドを二つ並べた。

二人に回復魔法を施し、気を失ったもう一人の甲冑を脱がせベッドへ寝かせる。

この一連の流れを全て魔法であっという間にやって見せた為、もう一人の男は唖然としていた。

「グレンさん?」

「はっ!?あ!いや!助かった!」

グレン・ウィック。

ルーズランス国でシュンとシンがギルドの立てこもり事件に巻き込まれた時に出会った騎士の一人、そしてもう一人の男はニノ・レインス。

性的嗜好がアレなイケメン好青年だ。

「今温かいもの用意するね?」

シュンが部屋を退室した後、マールは見張りだと言わんばかりに二人に注意を向ける。

立ち振る舞いから只者ではないと緊張感が漂い、お互いリラックスとは程遠い。

そんな二人の耳に入ってきたのは

「ああ〜ん、もっと言って〜」

と言う、何とも言い難いニノの寝言であった。

(こいつ、こんな時にまでまた誰かに罵られる夢を見てるのか!?)

げんなりとした表情のグレンに何かを悟ったのか、マールは先ほどとは打って変わって同情的な眼差しに変わっていた。

「…大丈夫か?」

「…ありがとう…大丈夫…多分」

そのあと微妙な空気のまま数分が過ぎ、漸くシュンが戻ってきた時にはメンバー全員を引き連れていた。

そして、眠るニノを見たシンの表情が一気に引き攣った。

「捨てよう」

「ダメだから」

「本当にごめん。代わりに俺が謝るから、今は捨てないでやって」

流石に寝てる人間を銀世界に放ったら明日の朝には還らぬ人となっているだろう。

「どうぞ」

エクシャに渡されたカップには、温かいコーンスープが注がれている。

「美味い…」

一口飲んでホッと息を吐き、もう一口、とカップを口に付けたところで

「…お前ばかり何飲んでるの?」

「!?」

ニノが目を覚ました。

「生きてたのか」

「親友に酷くない!?」

ガバリと勢いよく起き上がるが、先程まであった全身の痛みが全くない事に気付き、確かめるように彼方此方、自分の体を触って確認する。

「…治ってる」

「シュンが魔法で治療してくれた」

「!?シュンちゃん!」

ばっと勢い良くシュンを見るニノだが、すかさずその間にレイルが立ちふさがった。

「それで、お前達は何の用でここへ来た?」

当然の質問である。

満身創痍で世界の反対側までやってきたのだ。

ただの旅行というわけではないだろう。

二人は顔を見合わせて、頷きあうとグレンが口を開いた。

「実は…」

あのギルド立てこもり事件の後、事件に使われた銃と銃の持ち主である貴族を二人は調べていた。

しかし、逆に証拠がないと貴族に訴えられてしまった。

証拠となる銃だが、立てこもり犯達は、グリップの貴族の紋章のところは潰れていたと証言しており、シュンが魔法で直してしまった為別の物だと、二人がその貴族を陥れようとしているのだとされたのだ。

二人は仲間であるはずの同じ騎士達から捕まりそうになり命からがら逃げた。

その際、一緒に捜査をしていた城の魔法使いが、移動魔法で適当な場所に飛ばし助けてくれたのだが、それがたまたま廃城のある森のすぐそばだったのだ。

「私が紋章を魔法で直したって言わなかったの?」

「言ったが…その…信じてもらえなかった」

「え?何で?」

普通に色々な魔道書に載っている魔法だ。

珍しくもない筈だ、とシュンは首をかしげるが、呆れたため息はシュンの目の前の背中から聞こえてきた。

「シュン、お前が使ったのは物の時を巻き戻す魔法だ。壊れた物を壊れていない状態まで巻き戻す魔法」

「?だから?」

そんなことは知っていると言いたげに眉間に皺を寄せる。

それにはマールとエクシャも苦笑いだ。

唯一、シンだけはシュンと同じ表情であった。

「これだから規格外共は…」

再びため息を吐くといいか?と言葉を続けた。

「つまりは少なからず時間を操る魔法だ。そんな魔法、本来ならお前くらいの年齢で使えるわけがないんだよ」

「えー?でも本に普通に載ってるよ?」

ねぇ?とシンを見ればシンも一つ頷いた。

「珍しくもないだろ?」

使えて当たり前の発言に、ニノとグレンは表情を引き攣らせる。

「城の魔法使いで使える者は一握りだと聞いた。時間を操る魔法は魔力の消耗が激しい上に魔法陣も複雑だと。魔法陣なしで使うのは不可能だと言われた」

確かにあの時のシュンは魔法陣を使ってはいなかった。

しかしだ、シュンの答えは

「本に載ってるんだから意味を理解すれば誰でも使えるのに?」

であった。

「シュン、前から言ってるがお前とシンは普通じゃないんだ。そろそろ自覚しろ。それからお前達が読んでる魔道書は超上級魔法使いが使う魔法だ。普通じゃない」

「え?そうなの?どうりで今日本屋さんで、お店の人が、本当にこの本で間違いないか、って何度も聞くわけだよ」

こんな子供が読むと言うのだ。本屋の店員もさぞかし戸惑った事だろう。

「まぁ、そういうわけで信じてもらえなかったんだ」

子供が使えるわけないだろと、一蹴されたのだ。

「理由は分かった。が、もう一つ聞く」

今度はギロリとレイルの視線が強くなった。

事と次第では、と言った風だ。

「?…なんでしょう?」

射抜かんばかりの眼光にグレンとニノはゴクリと唾を飲む。

「なぜここに人が居ると分かった?」

「え?」

「気配を追っていたが迷いなくこの城へ来たな?まるで誰か居るのが分かっているかのように。そうでなければ、少し先の町の方へ行く筈だ。町ならこの時間でも明かりが灯っているしな」

「それは…」

言い淀むグレンはニノを見る。

その理由をグレンとニノ、シュンだけは知っていた。

(アレか…ニノのストーカー魔法…じゃなかった…索敵魔法…。いつの間にかけられ…)

魔法をかけられた覚えのないシュンはハッとして、レイルを見た。

そして、解除魔法を試してみると、それはレイルの手から光を放って消えた。

「!?なんだ?シュン何をしたんだ?」

真面目な話をしていたのに、と突如魔法をかけられたレイルは勿論、全員がシュンの突然の行動に驚いた。

「…レイル…二人はレイルを追ってきたんだよ…」

「は?」

「索敵魔法がかかってた」

「!!?」

それはきっとあの時だ。

ギルド立てこもり事件の直後、ニノがレイルと握手をした時に掛けられたのだろう。

全く気づかなかったのか、レイルは自身の手を表裏と何度も見返していた。

「はは、凄いねシュンちゃん…正解」

「…まさか…レイルの事を狙っていたなんて…」

意外であったと、シュンが息を吐くとレイルは顔面蒼白になりサッとシュンを盾にするように前に押し出しす。

「俺はそんな趣味はない」

「誤解だからね!?シュンちゃんにかけられなさそうだったから代わりにかけただけだからね!?」

「ヒエッ」

再びシュンはレイルの背に隠れた。

「ロリコンがっ」

「シュンに近づいたら首と胴体切り離すぞ」

黙って様子を窺っていたマールとエクシャも我慢ならなかったのだろう。

レイルの後ろに隠れたシュンをさらに自分達の背後へと隠し、普段なら決して聞くことのないドスの利いた声で威嚇した。

「ニノ、頼む。もう喋るな」

頭痛がするのかグレンは頭を押さえ俯いた。

この事でグレンは相当な苦労をしてきたことが窺える。

「それで、これからどうするんだ?」

目的が自分ではないと分かったシンはシュンに代わり前へと出て、当然の質問をする。

二人はどうしたものかと顔を見合わせるが、明日の朝には出て行くとだけ伝えた。

勿論手を貸してもらいたい気持ちはあるが、他国の人間である上に民間人だ。

巻き込むわけにはいかないのだ。

「ねぇ」

マールとエクシャと腕を組み二人の間から顔だけ出したシュンは、小首を傾げた。

最も早い解決策があるにも拘わらずなぜそれを言い出さないのか、と。

「私が二人の国に行って、私が魔法でグリップ直しましたって実演すれば二人の疑いは晴れるんでしょ?何でそれを言わないの?」

「それは…」

言い淀むグレンとニノにシンとレイルだけは何となく察した。

それはシュンもよく分かっていることであるにも拘わらず、なぜその質問をするのか、シンとレイルにとってはシュンの考えていることの方が分からなかった。

「フレイザー・アーリッシュの二の舞いになるぞ」

欲のある者の前で魔法を使えば自国に引き入れようとするか、脅威とみなし追っ手がかかるか。

フレイザーの場合、前者であったが、今回もそうとは限らない。

その上、ニノとグレンが国に戻れば自分達の居場所はバレている為、すぐに攻めてくるだろう。

それがシュンに分からないとは、シンとレイルには到底思えなかったのだ。

「その時はその時だよ。私がやったことのせいで二人に良くないことが起きてるわけでしょ?なら、私はその責任を取る義務があると思うんだー。でしょ?」

責任を取るのは当たり前だと、そう言い切るシュンにニノとグレンは目を見開いた。

年端もいかない少女の言葉ではない。

自分の行く末より他人の為に動くというのだ。

しかし、有難いと思うのもまた事実。

シュンが証明してくれれば、仲間に追われる事もなく国に帰れるのだ。

グレンは内心ではホッとしていた。

「じゃぁ、明日の朝一でチャチャッと行ってきますかー」

話は終わりと告げる直前、エクシャの表情が強張った。

「!!…シュン、どうやら明日の朝では間に合わなかったようです」

「どうしたの?」

「森の中に武装した集団が入り込みました」

「!!?」

また魔物からの連絡だと言う。

ニノやグレンと同じ恰好をした集団が真っ直ぐ城へと向かってきていた。

レイルにかけられていた索敵魔法は既に解除した、ならばなぜ何の戸惑いもなく、と疑問に思っていたらニノとグレンの顔色が徐々に青ざめていった。

「くそっ!ルークだ!」

「ルーク?」

「一緒に貴族の捜査をしていた城の魔法使い。俺たちをここに飛ばした奴だ」

つまり、そのルークが捕まり、今は敵対している騎士団をここに案内してしまったという事だった。

「困ったなぁー。お城を荒らされるわけには行かないから、一応丁重にお迎えして話を…」

「手を出してはダメ!!」

「!?エクシャ?」

話し合いで解決をと言い出す前にエクシャが声を荒らげ、視線が集まる。

エクシャは咄嗟にシュンを見た。

「…殺気だった騎士達を見て、魔物たちが敵だと判断したようで…」

「…攻撃しちゃった?」

エクシャはフルフルと緩く首を振り、寸前で魔物たちは逃げたと言う。

手を出すなと言うエクシャの命令を守ったのだ。

「そっか。いい子たちだね」

「はい…」

魔物を“いい子たち”と言われることはまずない。

使役していて、心が繋がっているからこそ言われて嬉しい言葉であった。

が、その直後、エクシャの動きが止まった。

「何でっ!?」

「エクシャ!?」

逃げた魔物を騎士たちが追ってきたのだ。

更にはただ逃げるだけの魔物を一方的に殺した。

数体の魔物が殺され、抵抗した魔物により騎士にも数名負傷者が出たという。

手を出してはいないのに何故、とエクシャの瞳には怒りのあまり涙が溜まっている。

これは穏便に行かないな、と思っても口にはしない。

「エクシャ、」

「…え?」

シュンは右手でそっとエクシャの手を握り、左手の袖でホロリと落ちそうな涙を拭った。

「さて、話し合いは無しだ。力尽くで押さえつける。文句のある人は留守番ね」

反論が無いことを確認し、出口に向かいながらパチンと指を鳴らせば、全員の服装が寝間着から黒のコートとブーツへと変わった。

コートの中はシュン作の動きやすい服装だ。

シュンやエクシャは普段着ているハルスカートではなく、パンツスタイルへとなっている。

「さぁ、お客様をお出迎えだ」


シュン達が部屋を後にしたのち、ニノとグレンも慌てて脱いだ甲冑に腕を通した。

後を追ったが既に姿は無い。

「いくら魔法が使えても団長相手じゃ分が悪い!」

「だからって止められるか!?」

「俺たちが出れば戦闘は避けられるだろ!」

夜の廃城とは思えない煌びやかな、長い廊下を甲冑をかちゃかちゃ鳴らしながら走る二人。

漸く外へと出るとそこは一面の畑。

更にその向こう、結界の外でシュン達と騎士団が対峙していた。

まだ戦闘は始まっていない。

「間に合ったか!?」

と、次の瞬間、シュンが騎士団に向けて炎の球を発射した。

それは騎士達をすり抜け、最後尾の騎士を狙って放たれたものだった。

「え?まさか」

「見抜いた…のか?」

漸く追い付き、二人は足を止めた。

そして、シュンが攻撃を仕掛けた者の正体をニノとグレンは知っていた。

それを初見で見破った者は、初めてであった。












ブクマ、誤字報告ありがとうございます(*´・∀・)*´-∀-)


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