しがらみと国益と愛情と…?
当たり前と言えば当たり前だが、王太后の隠居、宰相の引退のすぐ後に、大きな理由もなく国王が退位することはできないらしい。
国王が女神様に退位の決意を伝えてから1ヶ月、大々的な退位宣言もされていない。
国王は最近頻繁に女神様のもとに通って来ていた。
実を言うと、女神様の通訳は疲れる。女神様によると神官長は通訳をする場合には意識しなくても言葉に力を込めるらしい。単なる伝言ゲームじゃないのよと。
『私の結界と神官長の言霊のおかげで、少々破天荒なことをやっても外部には漏れないの』
はぁ?
『神殿を出ると理想の女神像から外れたことは意識から消えるの。ぐうたらし放題♪』
………ぐうたら?
今、気づいてはいたけど聞いちゃいけない言葉を耳にした気が……………じゃねぇよ!
マジだ!女神様わかっててぐうたらしてたんだ!
『伴侶と神官長しか真実はわからないのよ♪』
明るく笑う女神様に体力がガッツリと持って行かれる気がした。
『ああ、それでここでの女神様と城に戻ってから思い返す女神様のイメージにズレを感じるんですね』
国王がしきりに感心した。
『普通はその差を感じないの』
『そうなんですか』
『神官長の候補ぐらいの素質はあるわね』
なら、俺引退して行商人になっていいっすか?
喉まで出掛かったその言葉を空気を読んで飲み込んだ。
『国王が代わっても国内外が納得するような理由付けが必要ですよね』
出生の問題だけで本人が別に不祥事を起こしたわけでもない国王の退位を納得させる理由?
思いつかねー。
出生を明らかにするのはヤバい。国民の不信を招くだろっ!
対外的には女神様に守られた状態になれば、どこの国も手を出せなくなるんだから問題ない。むしろ今の状態を放っておく方がヤバい。加護が無いまま女神様が眠ってしまったら、周辺国から蹂躙されること間違いない。
そうだ!
女神様と国王が結婚したらいいんじゃん!
今後の加護も得られるしさ。
って、提案したら
『あり得んわ!』
『あり得ません!………………そんな………恐れ多い』
怖っ!
女神様が怒鳴ったの初めてみた。室内なのに風が吹いた。
で、国王。
その間はなんだよ。
何となく気持ちわかるけどさ。
神殿の人間にとっては女神様第一。ぶっちゃけ国王なんて加護で国を守って色々働いてくれたらオッケー。むしろ、国王は国のために働け!
って、教育された。前神官長に。
国王の働き方としては間違ってないと思うんだけどな。
『まあでも、アイデアとしては悪くないんじゃないですか?女神様との婚姻で王が決まると言うのは』
『ふむ。一理あるな』
『初代王以来の慶事ならば、急な代替わりも不思議がないですし。通常一年の準備期間も1ヶ月にしてみせます』
また、二人だけで話が進んでるんだけど………いや、通訳はしてる。女神様が誰かと会話すると無意識に通訳しちゃうんだ。
『よし。それで』
『手配の方は私の方でキッチリさせて頂きます』
国王が女神様に深々と頭を下げた。
で、何がどうなった?
『1ヶ月後に婚姻が決まった』
誰と誰の?
『お前と私だ』
はあっ?
何だって?
俺と女神様………?
マジでぇ?
急に視界が暗転した…




