領主の息子
堅苦しいのは面倒だからと女神様の要望で朝食の席での顔合わせになった。
国王の顔色が悪く、ほとんどしゃべらなかったため、重苦しい食事になった。
ってか、長旅で疲れてんなら寝てればいいのにな。
領主の方が年配だから、立てなきゃいけないんだろうか?何だか、国王の方がへりくだっている気がする。
神殿にいるばっかだったから、国王の王族に対する振る舞いなんて知らない。女神様も領主も驚かないんだから、王族の中では年配者を敬うのが普通なのかもしれない。
食事が済むと国王は部屋に戻って行った。疲れを取るために今日は外出は一切せず、部屋に籠もるらしい。
領主が女神様ともう少し話がしたいとのことで、部屋を移動した。
『女神様はわかっていらっしゃいますよね』
領主の唐突な発言にも関わらず、女神様は黙って頷いた。
『この国が苦境に立たされたのは私たちの罪のせいですか?』
『愛し子よ、それは違う。それにお前には何の罪もない』
『でも、私のせいであの人は亡くなりましたわ』
『お前のせいではない。あれは最愛の者を守り通しただけだ』
内容が全くわからない会話を通訳していく。
もちろん、俺が居なくても会話は成り立つ。成り立つがそれが決まりだ。
『これからは王族に自由意志以外の婚姻は認めぬ。それが私に出来る最大のことだ。過去は変えられない。すまぬ』
『ありがとうございます』
通訳が終わるのを待って、領主が深く頭を下げる。
『望まぬ結婚で不幸になるのは私が最後になれば、それだけでも、あの人は喜ぶでしょう』
何だか、かなりやべえ話っぽいんだけど。
『次の領主は甥か』
『息子に継がせるわけにはいきませんから』
ええっ!
息子居たの?やべっ王籍簿に載ってないっ!
『確かに』
女神様が笑った。
『こんなに遠くに住み着かれては私も困るわ』
『息子の元気な顔が見られたから、いつでもあの人の元に逝けます』
『まだ早い。待たせておけ』
『あの人の居ない20年は長すぎました』
寂しそうな笑いを浮かべた。
『ずっと息子に恨まれてると思ってました。でも、そうじゃなかった。………女神様連れて来てくださってありがとうございます』
へっ?
もしかして、一行の中に居たの?誰?誰?
『息子の方は全然気づいてないようだが、名乗らなくていいのか?』
『手放した身ですから』
『仕方なかったのであろう?』
『親らしいことをしたこともありません』
『愛し子よ。頑なだな。お前たちはみんな頑固だ』
『それが女神様の守護するこの国の王族ですわ』
『違いない』
女神様と領主は笑い声をあげて、会見は終了となった。
なんかヤバそうな話がいっぱいあった気がする。
まずは、領主の息子を探し出して王籍簿に載せないとな。面倒だけど仕事が進むのは悪いことじゃない。




