ナイショの昼下がり
ある夏の昼下がり、気怠げな街の空気を他所に寿安と福はクーラーの効いた涼しい部屋のソファーでコロコロと転がってテレビを観ている。
今日も歩が仕事で家を空けたので2匹はお留守番。
午前中に警備隊でいろんな箇所を点検し、お昼は歩の作ってくれた昆布とおかかのおにぎり、ねぎとチーズの玉子焼き、しば漬け、麦茶を美味しく頂いた。
テレビではご当地グルメや楽しげな催し、健康関連の情報を特集している。
メタボリックシンドローム、血糖値の乱高下や運動不足、生活習慣病から引き起こされる怖い病気など、寝転がって観ていた2匹は恐怖のあまり気付いたら正座をして神妙な面持ちで画面を見つめていた。
思い当たる怠惰な行動の数々。。
2匹はお互いを見つめ合い美味しいごはんのお陰で以前よりふっくらしたお腹を無言で撫でた。
「このままでは我らしなやかな誇り高いおきつねが、たぬきの太鼓腹になってしまう。狐なのに狸、このままでは大変に不味いのぅ。」
「だめ、たぬちゃぽんぽん、ぽっこりお腹。」
我々は健康でいて歩を見守るという使命があるのだ。
そのためには出来ることは何でもしようではないか。
しかし、これはどうしたものかと思案する2匹。
随分の間うんうんと知恵を絞っていた所、福が急に閃いたようで頭上に見えるはずの無い光り輝く電球すら見えてくるような気持ちになる。
「ぼくね〜、いいの知ってるよ〜。夏休みにみんながやってるの見たことある〜。」
「なんじゃそれは、気になるではないか。早く申してみよ!」
誰も居ないのに福は寿安にコソコソ内緒話をするように耳打ちをした。
「成程、それは名案じゃ!さっそくやってみようではないか!」
「ぼくえらい〜、グッドアイデア〜。」
福がいそいそと準備し少し後、部屋の中にはタブレットから元気の良いハキハキキビキビとした声と音楽が流れてきた。
〜〜〜♪〜〜♪
それは昔ながらの夏の風物詩、ラジオ体操の音楽だった。
「本当にこれがそんなに効くかのぅ。じゃが転がっているよりは、何かした方が良いのは明確じゃ!」
「ほんきでやると、良い運動になるんだって〜。継続はちからなり〜。」
キビキビ、ピシッ、パッと流れる声の通りに体を動かすと、曲が終わる頃には日頃の運動不足がたたってか寿安も福もゼーゼーと息切れをしていた。
これから歩のお仕事の日にはこれをルーティンにしようと、2匹はお互いに励まし合い讃え合い健康的な生活を誓ったのであった。
後日、同僚におすすめの見守りカメラを教えてもらって休憩中の歩が見たのは、減量や健康と書かれたハチマキを頭に巻き大変凛々しく使命感に燃える姿でキビキビとラジオ体操をする2匹の姿。
自分が居ない時にこんな風に過ごしていたのかと大変驚き、予想外の2匹の可愛い姿に思わず職場で盛大に吹き出してしまう歩であった。




