土用の丑の日、元気の日
ガチャリとドアを開けると玄関に入ってすぐに寿安と福がお出迎えをしてくれていた。
「ただいま〜」
「お〜、お帰りさん。無事に帰ってきたようで安心したわい。」
「おかえり〜、お留守番がんばったよ〜。」
床の上から私を見上げ、労りの眼差しを向ける寿安。
福はぴょんぴょんと喜び飛び跳ねて喜びを体現しているようだ。
今日はいつもの味気ない帰宅ではなく、おかえりと迎えてくれる存在が居るどこか温かいものになった。
きっとそれは人によっては家族だったりペットだったり、ぬいぐるみや観葉植物だったりするのだろう。
疲れていたので靴を揃えずに上がろうとすると、
「こりゃ、行儀が悪いぞ!きちんと履き物を揃えんか!」
「こりゃりゃ、いけないんだ〜。」
しっかりと叱られしおしおと脱いだ靴を揃え直す。
大人になったのに靴の一つも揃えられずに怒られてしまい情けないやら恥ずかしいやら。。
「ごめんね。次から気を付けるね。」
と伝えると、分かったならよろしいと2匹はうんうん頷くと私が通りやすいように左右に避けてくれた。
2匹を踏んづけてしまわないように注意しながらキッチンへと向かう。
「なにやら良い香りがするの〜。」
「おいしいの匂いがする〜。」
鼻をクンクンと動かし後ろからついてくる毛玉たちが愛おしい。
キッチンにスーパーの袋を置くと洗面台へ行き手洗いうがいを済ませる。
良い子で待っていた2匹にスーパーの袋から出した戦利品の国産鰻パックをジャーン!と見せつけた。
「あっ!それは。。。うなぎじゃ〜!」
「うなにょろ〜、うまうま〜!」
想像したよりも更にわ〜!っと沢山驚いてくれていて、閉店間際のスーパーに駆け込んだ甲斐がありましたよ。
半身だしそんなに大きい鰻じゃないから、鰻丼なんかには量が足りないな。
よしよし、では簡単ちらし寿司にしよう。
その方がきつねたちも食べやすそうだしね。
鰻をキッチンバサミで細く切りフライパンで温める。酢飯に塩揉みきゅうりとミョウガと炒り卵、温めた鰻と白胡麻を入れてざっくりと混ぜる。
お皿に盛り刻んだ大葉をふわっとのせれば簡単ちらし寿司の完成だ。
あとはフリーズドライの茄子と油揚げのお味噌汁とお漬物を用意する。
疲れているから少し簡単なごはんだけど、そこはまぁ良しとしようではないか。
きつねたちの分も盛り付けると、ピカピカに拭いてくれたテーブルに運びきつね専用のクッキー缶テーブルに置いてやる。
皆で準備を済ませ席に着くと、私も2匹も待ちきれないといった様子でいただきますと手を合わせた。
「ありがたいの〜、今年初物の鰻じゃ。これを食べたらお主の寿命も伸びるじゃろうて。嬉しいのぅ。ワシらはいいから、お主がしっかりたんとお食べ。」
「あゆちゃ長生き元気うれしいね〜。あゆちゃがいっぱいうなにょろたべて〜。」
とフォークで自分達のお皿から私のお皿に鰻を入れてくれ、嬉しそうにニコニコしている2匹の言葉を聞いて初めて気付いた。
昨日2匹がテレビで鰻をじっと見ていたのはおきつね達が食べたかったからだと思っていたけれど、実は私に食べさせたいと思ってくれていたんだね。
私も2匹も同じ事を考えていたと知って思わずじわりと涙が出てしまう。
「寿安と福に食べさせたいから買ってきたんだよ。だから一緒に食べようね。」
とお箸で自分のお皿から2匹のお皿に沢山鰻を入れてやった。
「そうか、それならば有難く頂くとしよう。」
「あゆちゃやさしい〜。」
いやいや、優しいのは君たちの方だよ。
心の中でそう呟きながらこっそりと涙を拭った。
みんなで分けて鰻を食べて暑い夏を乗り切ろうね。
口々に美味しい美味しいと言い合いながら、みんな笑顔で一緒にごはんを食べた。
君たち2匹がいつまでも元気で幸せに過ごせますように。。




