ただ、喜ぶ顔が見たいから
ある日の夜、夕食を食べ一緒に洗濯を畳みながらテレビを観ていると、
「土用の丑の日、美味しい鰻でスタミナ回復!暑い夏を乗り切ろう!」
チェーンのどんぶり屋さんのCMが元気よく流れていると、それに釘付けになり尻尾を振りながら観ている寿安と福。
もしかして鰻が食べたいのだろうか?
もしそうなら少し奮発して食べさせてあげたいな。
近頃2匹は警備隊で我が家の防犯にしっかりと貢献してくれていて何気に助かる場面が多いから、その頑張りに少しでも報いてやりたいのだ。
そんな私の思いはつゆ知らず洗濯畳みを再開する2匹。
最初よりも随分畳む手際が良くなり、寿安は角までピシッと綺麗に丁寧に、福は畳む動作が素早すぎて残像しか見えずどんどんと畳んでいく。
対照的な2匹を見ながら自然と頬が緩んでしまう。
何気ない事が楽しい毎日になってきて、それは2匹のお陰だなとそっと感謝した。
次の日、
定時で帰りたくて仕事を急ぎで終わらせたのに、想定外にどどっと流れ込んでくる仕事の山。
部署の皆で協力をしてなんとかこなし帰る支度をして時計を見やる。
!!?
やばい!
行きつけのスーパーが閉まってしまう!
とダッシュで帰ろうとすると、
「先輩、今日皆で鰻食べに行きませんか?疲労回復に効きますよ〜」
と後輩ちゃんが誘ってくれた。
「ごめん!今日は急ぎの用事があって!」
すかさず断りの文句をいうと、ぴゅん!という効果音と共に走り去る。
あまりの素早さに後輩ちゃんは目を丸くして呆気に取られていたようだ。
ごめんよ!
寿安と福にどうしても鰻を食べさせてやりたいんだ。
大急ぎで閉店間際のスーパーに駆け込むと、鮮魚コーナー目掛けて突っ込んだ。
きょろきょろと辺りを見回すと、
あっった!!!
国産鰻の半身、しかも半額シールまで貼ってある涙
神々しくて光り輝いて見えるよ。
嬉しすぎて思わず頭上に鰻パックを掲げてしまう所だった。
お会計を済ませると、早足で家路を急ぐ。
心の中はスキップである。
あぁ、早く寿安と福の驚き喜ぶ顔が見たいなぁ。
最近の私はどうも、あの2匹にとっても甘いらしい。。




