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22/31

夏の始まり、カンナの花と蝉の声

憂鬱な月曜日がやって来た。

何度迎えても好きになれない社会人の週明け。


比較的涼しく過ごせていた梅雨も明け、ジリジリと身を焦がす強い日差しに気が削がれる。

心象世界も雨の烟るペールカラーの世界から鮮やかな原色の夏へと様変わりしていく。


クーラーもしっかり付けたし飲み物もお昼ごはんも準備して家を出たから、少し心配だけどきっと寿安と福は大丈夫だろう。

ここで初めて、ペットカメラから家の猫ちゃん達の様子をこまめに確認していた同僚の気持ちが少し分かった気がする。

外は暑いけど涼しい部屋でのんびりと過ごしていたら嬉しいな。


寿安も福も会社に付いて行くとせがんでいたけど、2匹が動いたり喋ったりするのがいつか会社の人にバレたらと想像するだけで心臓に悪いのでお留守番してもらう事にした。


大層不服そうな2匹だったけど、一人暮らしで自分が居ない間にお家の防犯が心配だから寿安と福に任せたいと伝えたら使命感に燃えたのか俄然やる気を出していた。


警備隊長  寿安

警備副隊長 

(伝達係) 福


として2匹を恭しく任命し家を後にした。


寿安はしっかりしているしとても感が鋭いからきっと危険な事は起こらないだろう。

それに昨日の晩、福にタブレット端末の操作方法を教えたから何か困った事があればスマホに連絡をくれるはずだ。

あの子はボーっとしているようで、意外と器用で色々な事が出来るみたいで感心だな。


役職があると嬉しいようなので、今度テレビを見て美味しいレシピやお店のリサーチをする係もお願いしておこう。


強い日差しを避けるように日傘をぎゅっと握り駅までの道を行く。

ウンザリするような暑さのせいで早くクーラーの効いた涼しい部屋に入りたい。


街路樹の脇に植えられたカンナの花が太陽のようで眩しく、鳴き始めたセミの声で夏の暑さが更にいや増し会社への道を急ぐ。


すぐにやって来た電車に滑るように乗り込むと、ピロンピロンとスマホに通知の音が鳴る。

取り出してメッセージアプリを開くと、


戸締りして良い子にしてるよ。

また何かあったらメールするね。 福


というメッセージと頑張れ!のスタンプ。

ちゃんと覚えて使いこなせているようで安心した。

すぐさま、了解!のスタンプを返信した。


流れる景色や青い空をぼんやりと眺めているといつの間にか降りる駅に着いていた。


改札を抜けたところでまたピロンと通知が鳴った。

メッセージを確認してみると、


あついからおちやみずをしつかりのむように

じゆあん


と届いていていた。


昨日メールの送り方を教えた時に寿安はちんぷんかんぷんだったのに、おそらく福に教えてもらいながら頑張って送信してくれたようだ。


その光景を思い浮かべると、微笑ましくて思わず笑みが溢れてしまう。


ありがとうのスタンプを返信するとそっと鞄にスマホを仕舞った。


月曜日で憂鬱だったけど、なんだかこれだけで今日の仕事は頑張れそうな気がする。


寿安はまだ文字を打つ時に小文字に変換するのが難しいようです。。

後日、2匹はそれぞれの好きなスタンプを購入してもらいました。

寿安は鳥獣戯画スタンプ。

福は動くゆるふわキャラのスタンプです。

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