思い出すのは、胸が詰まるほどの美しい景色たち
料理が出来上がり順々にテーブルに並べていく。
きつねたちのお手伝いもなかなか手馴れたものだ。
ピカピカに磨いてくれたテーブルの上に丸いクッキー缶を置き、きつね達の簡易ちゃぶ台にする。
テーブルの上に直置きしたお皿からだと食べにくいと思うから。
炊飯器の蓋を開けると、ふっくらとした炊き込みごはんが大変良い具合に炊けている。
お揚げたっぷりの美味しそうなごはんの匂いに、寿安も福も待ちきれないといった様子である。
お猪口にごはんをよそい、豆皿におかずを少しずつ取り分けてやるとお行儀良くクッキーちゃぶ台の前に座って私からのどうぞ召し上がれの声を待っているようだ。
ササっとキッチンの調理台の上を付近で拭くと麦茶の入ったポットを手に席に着いた。
「すまんの。毎回ご相伴にあずかって。ワシらは何かお返し出来るかのぅ。」
「おいしいは正義だ〜。ありがと〜。」
しおらしく話す2匹。
「こんなごはんで良ければいつでも作りますよ〜。君たちが食べる量はちょっぴりだし、私も1人で食べるより美味しいねって言い合いながら一緒に食べる方が嬉しいし美味しいよ。」
そう伝えるとありがとう、という感謝の眼差しで見つめ返す寿安と福。
私の方こそありがとうだよ、本当だよ。
1人は気楽で良いけれど2匹と過ごして分かったのは、私はずっと寂しかったんだという事。
就職して親元を離れ、季節の食べ物を食べて美味しいねっと言い合う事のなんと久しぶりだった事か。。
疲れを理由になかなか帰省もしていないし、今度土産片手に父さんと母さんに会いに帰ろうか。
きっと食卓には食べきれない程の私の好物が並ぶ事だろうな。
今の時期は目の覚めるような青空が田んぼに映って、一面の緑の山々が綺麗だろうな。
そこに居た頃は気付かなかったけど、離れてみて初めて故郷の美しさを想う。
はっと我に返り2匹の方を見ると、お腹が空いているだろうに寿安も福もにこにこと私の方を見ていた。
待たせてごめんね、と早口でいただきますを言うと2匹もそれに倣う。
一口食べてぱぁっと喜ぶ顔を見ると、こんな私でも誰かを喜ばせる事が出来るんだなと心が温かくなる。
「この旨い飯には何か報いなければのぅ。そうじゃ!お主にすぺしゃるまっさーじをしてやろう。」
「きのうよりモミモミ〜。」
「えっ!良いの?昨日すごい気持ち良くてすぐ寝落ちしちゃったよ〜。」
そう伝えると2匹はどこか誇らしげな顔で頷いた。
晩御飯の後片付けを終えお風呂に入り身支度を済ませてベッドに行くと、やる気に漲る2匹が出迎えてくれた。
ひーりんぐみゅーじっくなる物を流すためにスマホを触っていると、その隣で福が興味深そうに眺めていた。
それから少ししてふと見ると、福が一丁前にスマホを操作して新たなるひーりんぐみゅーじっくを再生してくれた。
波の音が心地良いナイスチョイスの素敵な音楽だった。
それを見つめる寿安はチンプンカンプンな顔だったので、もしかして機械音痴なのだろうか?
まぁきつねが機械を触れる方が稀か。。
しかし冷静に考えてみると?が浮かんだ。
えっ?スマホ触れたの?
ふわふわのおててなのに?
そう話すと福は得意げに両手をこちらに向ける。
見せて来たのはふわふわの毛の下にささやかにあるちんまりした肉球。
「触って良い?」
と聞いてみると良いよと返事が貰えたので小さな手を指でつまむ。
ぷにぷに。。
ぬいぐるみじゃないって本当だったんだと、なぜだかジーンと感動してしまった。
ごろんと横になると昨夜の肩背中腰ぴょんぴょんが終わり仰向けになれと言われた通りにする。
すると、頭にぷにぷにの肉球が触れこめかみや地肌辺りを優しくモミモミされる。
「はぁ〜、極楽極楽〜。」
と声に出せば、いつの間にか段々と眠気に誘われていく。
瞼が閉じて夢うつつの中でぼんやりと聞こえたのは、
「こやつの寝顔は昔っからほんに変わらんの〜。こっちまで気が抜けてくるわい。」
「まめちゃぐっすりすやすやね〜。」
優しく響く2匹の笑い声。
ぷにぷにとした肉球で撫でられれば、それが仕上げとばかりに夢の世界へ落ちていく。
すぺしゃるまっさーじ、恐るべし。。
夏の景色は美しいですね。
鮮やかな景色に、麦わら帽子にアロハシャツのおきつね2匹を連れ出したい気持ちです。




